自分自身に向き合う苦しみ…震災から9年、結と歩の心の雪解けが描かれた『おむすび』第6週
現在放送中の連続テレビ小説『おむすび』(総合・月曜~土曜8時ほか)。11月4日(月)~8日(金)放送の第6週「うち、ギャル、やめるけん」では、結(橋本環奈)と姉の歩(仲里依紗)が自分自身に向き合っていく姿が丁寧に描かれた。「結はなぜやりたいことを見つけられないのか」「歩はどんな気持ちでギャルをしていたのか」…明確化されていなかった結と歩の本心に、胸を打たれた視聴者も多かっただろう。
第29回で歩は、震災後はずっと「真紀ちゃんだったらどうするか」を軸に生きてきたと告白した。真紀(大島美優)が憧れていたギャルになり、心の中の真紀に突き動かされるようにハギャレンの総代になり、流れるままにカリスマへの道を駆け上っていったのだ。「自分はニセモノ」「元々ギャルじゃない」そう言いながらもギャル時代の歩の笑顔は晴れやかで、生き生きと自分の人生を楽しんでいるようにも見える。
そこに切り込んだのは、第30回の結の言葉だった。「お姉ちゃん、ギャルやっとって楽しかったんやろ」…歩は目を潤ませ視線を惑わせながら、自分の気持ちを確かめるように「楽しかった。めちゃくちゃ楽しかったよ」と本音をこぼす。歩はギャルが楽しいと思いつつも「自分だけが楽しんではいけない」「あくまでも真紀ちゃんの人生だ」と、自分の気持ちに蓋をしていたのだろう。心の奥にしまっていた「楽しい」を言葉にするのにどれだけ勇気が必要だったのか、歩の涙が抱えていた苦しみの重さを物語っていた。
そして今度は歩が、「結ってさ、可愛い服着たり髪の毛結んだり、そういうことが大好きだったんだよ」と語りかける。もしも震災が起こっていなかったら、幼い結はギャルになった歩と真紀を見て「結もギャルやりたい!」とはしゃいでいただろう。3人で一緒にメイクをして髪を巻いて…鏡の前で楽しそうに笑う姿が想像できる。
「やりたいことなんて何にもない」と口にしながらも、本音では「お姉ちゃんみたいに変身したい」「可愛く着飾りたい」と思っていたことに気づいた結。ずっと嫌っていたギャルに本当は憧れていたこと、書道という新しい「楽しい」を手放したくなかったこと、ハギャレンの皆が好きなこと。誰にも何にもとらわれない自分だけの「好き」「楽しい」の気持ちを引き出してくれたのは、「こんな風になりたくない」と遠ざけていたはずの歩の存在だった。
自分に向き合うというのはそう簡単なことではない。思い出したくない過去を振り返ったり、自分の卑しい一面、奥底に秘めた欲望に気づいてしまう可能性もある。できればそういったものからは目を背けたいと思うのが本音だろう。それでも一歩踏み出した先には、必ず新しい選択肢が広がっているのだ。
震災から9年。結と歩が自分の本心に気づき、心に降り積もっていた雪をゆっくり解かしていく姿は、画面越しの私たちにも「自分が本当に求めているものは何だろう」と考えるきっかけを与えてくれた。『おむすび』放送終了後、我々視聴者は何か変われているだろうか。大きな一歩を踏み出し新たな景色を見つけた彼女たちが、これからどんな縁を結び、どんな道を歩んでいくのか楽しみだ。
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