寅子(伊藤沙莉)は果たして少数派なのか?『虎に翼』で気付く“多角的視点”の重要さ
現在放送中の連続テレビ小説『虎に翼』。今作には主人公・寅子(伊藤沙莉)をはじめ様々なマイノリティ=少数派に属する人々が登場し、それぞれの苦悩や心情が丁寧に描かれている。
主人公の寅子は優三(仲野太賀)が法律を学んでいたことがきっかけで、明律大学女子部に進学し法律を学んだ。寅子たち女子部の生徒は、男子生徒から「魔女部」「貰い手がなくなる」といつも馬鹿にされ、肩身の狭い思いを強いられていた。
それもそのはず、当時の多数派は「結婚して家庭に入ること」。寅子はこの後、弁護士、裁判官とキャリアを積み重ねるが、どの職場でも少数派であることは変わらず、後輩のために道を開拓・舗装し続けていた。
寅子以外にも“少数派”として描かれている登場人物は多くいる。例えば、寅子の同窓生である轟(戸塚純貴)は第101回で同性のパートナーがいることを告白。今でこそ「セクシュアルマイノリティ」「性的少数者」という言葉が身近になりつつあるが、当時はもっと冷酷な言葉で揶揄されていたに違いない。
だが、視点を変えて見てみるとどうだろう。寅子は女性弁護士・女性裁判官という部分では少数派だったが、結婚し子どもを産んだという点に関しては多数派に入るはずだ。また轟も法曹界という視点でみれば男性弁護士という圧倒的多数派に入っている。
多数派か少数派かはどの視点で見るか、どの規模で見るかでガラリと変わる。また時代と共に変化する場合も多い。寅子のように働く女性は今ではすっかり多数派になっているし、今後は結婚という選択をする人の方が少数派になるかもしれない。
人はつい自分と他人を比べて「自分は人とは違う」と悩んだり、反対に「個性がない」と落ち込んだりしてしまう。自分とは違う要素を持つ人のことを「理解できない」と拒絶したり、簡単に羨んでしまったりする。
だが寅子たちの生活を半年に渡って見守っているうちに、人は状況や場所・時代によって色々な面を使い分けていること、自分や他人を多数派か少数派かという枠に押し込む必要はないのだと気づくことができた。
その気づきをふと現実に置きかえて、誰もが「貴方も私も色んな面を併せ持って生きているのだ」と認め合える、そんな世界になればいいのにと願う朝なのである。
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