後藤真希“自分で自分を作る”アーティストになった25周年「比べる癖から解放された今は自分らしくやりたいことを」
1999年1月にモーニング娘。3期メンバーとして「LOVEマシーン」でデビューし、2024年に25周年を迎える後藤真希が、7月31日に13年ぶりとなるオリジナルシングル「CLAP CLAP」をリリース。さらに、9月4日(水)には新曲6曲を含むミニアルバム『prAyer』をリリースする。13歳で世間を驚かす国民的グループのエースとなり、現在も圧倒的な存在感を放つ38歳の後藤に、新曲が示す25周年の行方と現在の心境の変化などを聞いた。
モー娘。時代は「すごい体験をしたと思う」
――デビュー25周年。ここまで来たことにどんなお気持ちでいますか?
びっくりですね。デビューしたのが13歳で、そのときに25年後のことなんて考えたこともありませんでした。25年間ここ(芸能界)にいて、今もこうして新曲を出して、ライブをやって、音楽を続けられているのはすごいことだなと思います。
もともとはアイドルではなく、歌って踊れる歌手になりたくてモーニング娘。のオーディションを受けたんですが、「LOVEマシーン」でグループのカラーがガラッと変わったんですよね。それまでの大人っぽくてセクシーだったボーカルグループから、アイドル枠っぽいコンセプトに変わっていって。「私が見ていたモーニング娘。はどこに行ったの?」というぐらいの変化でした(笑)。
――センターになった後藤さんの年齢感もあったと思いますが、「LOVEマシーン」からかわいくてファンキーな路線になっていきましたね。
そうなんですよ。「LOVEマシーン」の後、すぐにプッチモニで「ちょこっとLOVE」をやって、アルバムが出たら今度は「恋のダンスサイト」で“ウハウハ”して(笑)。つんく♂さんの世界というか、アイドルってこういうものなんだっていう、すごい体験をしたと思います。
移籍で“自分で自分を作るスタイル”に変化
――そうした中、2002年のモーニング娘。卒業を経て、2007年にハロー!プロジェクトを卒業。2008年にエイベックスに移籍しました。環境はどう変わりましたか?
ハロー!プロジェクト時代はつんく♂さんに書いていただく曲を私が昇華させるというスタイルでしたが、エイベックスでは自分がどういう曲でいきたいのか、どう見せていきたいのかなど、今まで聞かれなかったことを当たり前のように聞かれるようになりました。アーティストとして、自分で自分を作るスタイルですね。
今はもうそのやり方が染み付いていますけど、最初はすごく戸惑いました。「私、できるかな?」って。その当時を思い返すと、ここまでやれてきたのは自分でも本当にすごいことだと思います。なかなか音楽に向き合う時間が取れない時期もありましたけど、ここ数年はライブができていて、ファンの皆さんからもずっと「新曲を出してほしい」という声が届いていたので、25周年という節目に送り出せることがうれしいですね。
ファンの人たちと遊べるような曲
――25周年のオリジナルシングル「CLAP CLAP」はクールなダンスポップスです。先ほど「自分で自分を作る」という話がありましたが、今回の楽曲制作はどう進められたのでしょうか?
まずデモからですが、いろいろなパターンのデモを作っていただいて、その中から選んだ曲です。歌詞は私が表現したい世界をお伝えして、それに近づけて書いていただいたものに、また私がワードの要望を出したりして固めていった感じです。アレンジ(編曲)にもコーラスを入れて、人数感のような厚みを出したいとか、かなり話し合いを重ねて作っています。
――選んだデモや歌詞で、どんなところが後藤さんの琴線に触れたのか教えてください。
曲中に「Ya ya ya ya」「No no no no」といったフレーズがあるんですが、今までの自分の曲を振り返っても、こういうテイストの曲ってなかったんですよね。ステージに立っているところでも考えて、私がここをこう歌ったらファンの方はこう動いてくれそうだな、とか。私とファンの関係性みたいなことを取り入れられたら楽しいだろうと考えて、そうした総合的なイメージからこの曲と歌詞がいいなと思いました。
私、ライブ中にファンの1人1人の顔を結構よく見ているんですよ。なので、一つ一つのフレーズでファンの顔を見ながら、パフォーマンスでファンの人たちと遊べるような曲を作ってみたかったんですよね。ライブでは、ファンの皆さんは私を見てくれているわけで、例えばAメロの歌詞ですが、その人たちを「私に夢中ね?」とちょっと意地悪な視線で煽りながら、でも次には「あの子のがいいの?」という態度を見せる。そういうツンデレ感のある歌詞も面白いと思ったポイントです。
「25周年の始まり」も込めたMV
――妖しい雰囲気なミュージックビデオ(MV)も印象的です。水槽や病院のオペ室があるあのシチュエーションは、曲とどういうリンクがあるのか、少し不思議です。
MVにはこの曲だけではなくて、25周年の始まりとしての意味も込めています。これからいろいろな企画を発表していきますが、まずはこの「CLAP CLAP」が始まりの曲。これがアルバムリード曲「prayer」のMV、そのあとにもつながっていく音楽とビジュアルのストーリー仕立てになっています。
「prayer」は“祈り”という意味ですが、25周年分の走馬灯のようでいて、またここから新しく始まるという気持ちで作っています。一つ一つのシーンに意味があるので、考察して楽しんでみてもほしいです。
――9月16日(月)からは25周年ツアー「後藤真希 25th anniversary live tour 2024 ~pr∀yer~」が始まります。こちらはどのようなことを考えていますか?
「CLAP CLAP」とアルバムの新曲は全て入れつつ、ここ最近のライブでは歌っていなかった曲を組み込んでいくつもりです。なので、頻繁に足を運んでくれている方にとってもガラッと違うライブを楽しんでいただけると思います。ライブのビジュアルも「愛のバカやろう」を思い出すような雰囲気にしていて、そういうところもひっくるめてつながっている25周年です。
ファンの声に「案外みんな控えめだなぁ(笑)」
――「ゴマキのギルド」(後藤真希公式YouTubeチャンネル)では“25周年25の記念企画”を予告しています。シングル、アルバム、ツアーと来て、あと22個残っていますが、内容は固まっているのでしょうか?
大きいものはある程度決まっていて、それは後日の発表をお楽しみに、ですね。他にちょこちょこ動いているものがあって、いろいろやりたいことがありすぎて困っています(笑)。
――ファンの方にもやってほしいことを募集していましたが、興味を引かれるアイデアはありましたか?
多かったのはやっぱり新曲や他の歌手とのコラボ、YouTubeでのコラボですが、そういうのは私も考えているので、「すぐかなっちゃうね」みたいな感じなんですよ。もっとありえないことをするような、とんでもないお願いが来ると思っていたから、「案外みんな控えめだなぁ」って(笑)。「もっとない!?」って、私が皆さんにインタビューして聞き出したいくらいです(笑)。
モー娘。現役メンバーは「こっちが緊張(笑)」
――やはりファンが求めているものとして、アーティスト活動の活発化が大きいのだと思います。一ファンの目線で言うと、原点であるモーニング娘。とのコラボ。当時のメンバーとは2014年の「テレ東音楽祭」で歌っているので、今度は現役メンバーとのコラボが見てみたいです。
そういうのも面白いですね。同じテレビ局で仕事があると、新しいメンバーの子と会うことがあるんですよ。例えば「ラヴィット」(TBS系)に出ている牧野真莉愛ちゃんとか。みんな元気にあいさつに来てくれるんですけど、もうこっちが緊張しちゃって。私の曲を歌ってくれている後輩もいるし、なんか恥ずかしくなっちゃって(笑)。
――後輩でいうと6期メンバーの田中れいなさんは、自分のライブで後藤さんの曲をよく歌っています。
れいなはそうですね。歌ってくれていてうれしいです。今のハロー!プロジェクトにはたくさんのグループがあるし、現役、OG、モーニング娘。だけでなく集まれたらすごく楽しそうですね。
後藤真希の原動力とは
――ここまで音楽関係の話題でしたが、25の記念企画はそれに限ったことではないんですよね?
もちろんです。モデルやファッション関係にも広げていくつもりですし、SNSでも何か企画があるかもしれませんね。あとはファンの方たちと直接何かをできる企画を作りたくて、これも喜んでいただけるものを考えているところです。
――25周年のこれからの活動に期待がかかりますが、今の後藤さんの原動力になっているものとは何でしょうか?
この楽曲たちをどう広めていくか。それを考えることが今一番楽しくて、実際にやれたこともそうですし、やるべきことが決まって準備に向かっている期間もすごく充実した時間になっています。そうしたことで言えば、この楽曲たちが今の私の原動力ですね。
――刺激を受ける相手ではどうでしょうか?
私の場合、特定の相手はいないんですよね。物事を見るような感覚で頑張っている人を見ると「自分も頑張ろう」という気持ちになります。例えばライブ映像を見ていたり、テレビを見ていたりしたとき、誰かの頑張りが見えた瞬間に刺激を受ける感じです。
デビューから25年「今の自分は心の余裕が大きい」
――13歳でデビューして、年齢を重ねたことでの変化は何が挙げられますか?
人見知りだったのは年々なくなって、人と積極的に交流できるようになったと思います。ハロー!プロジェクトの頃や20歳ぐらいのときって、他のアイドルや歌手と比べて自分はどうなんだろうって、そういうのがすごくあったんですよね。でも、年齢が増すごとに“自分は自分”という気持ちになってきて、今は自分の好きなことができていればいいっていう、心の余裕がすごく大きいです。
――モーニング娘。のときは張り詰めていた感じでしょうか?
どうしてもそうなりますよね。モーニング娘。は「ASAYAN」(テレ東系)のオーディションから生き残りを懸けて生まれたグループで、外に対してだけでなく、グループのメンバーもライバルという雰囲気でした。人数も増えていって、ハロー!プロジェクト全体で見たらグループも増えて、それがライバルという感覚だから結構きつかったですよ。そうした中にいたから比べる癖がついてしまっていたんですけど、それがほどけた今は気持ち的に余裕ができて、自分らしくやりたいことをやるという意欲が湧いています。
――2025年9月の誕生日には40歳を迎えます。どんな40代を思い描いていますか?
見た目についてはうれしいことを言っていただける機会が多いので、できるだけキープしたいと思っています。中身の方はもっと成長して、頑張れることがたくさんあると思っています。鈴木亜美ちゃんが私の年上で、すごくすてきな40代になっているんですよね。私も負けないように頑張りたいです。
◆取材・文=鈴木康道
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