今こそ観返したい『古畑任三郎』の傑作回といえば? 大物ゲストが登場した3つの傑作エピソード
フジテレビの傑作ドラマ『古畑任三郎』が放送30周年を迎えた。同作は田村正和演じる刑事・古畑任三郎が、完全犯罪を目論む犯人たちのトリックを解き明かしていくミステリードラマで、毎度豪華なゲスト著名人が犯人役を務めることでもお馴染みだった。
アニバーサリーイヤーということでフジテレビの「ハッピーアワー」枠で一挙再放送が行われた一方、TVerでは見逃し配信も実施されている。そこで今回は、この機会にぜひとも観ておきたい珠玉のエピソードを3つご紹介していこう。
■シーズン1エピソード1「死者からの伝言」まず観てほしいのはやはり、記念すべき第1シリーズの第1話「死者からの伝言」だ。この回の衝撃といえば、1980年代に一世を風靡した伝説的女性アイドル・中森明菜が犯人役を演じていることだろう。
あらすじとしては、中森演じる世間知らずの少女コミック作家・小石川ちなみが、イケメン編集者との恋に落ちるも、自分が遊ばれていることに気づき、凶行に及んでしまう……というもの。大雨に振り込められた上に車が故障し、立ち往生していた古畑が、偶然ちなみの別荘を訪れたことから、完璧だったはずの犯罪計画が少しずつ崩れていく。
ご存じの通り、『古畑任三郎』はいわゆる倒叙形式のミステリーで、冒頭で犯人による犯行が描かれた上で、探偵役が謎を解いていく流れとなっている。第1話目からそのスタイルは確立されており、古畑がちなみとの会話の中でアリバイトリックの穴を突いていくのが大きな見どころだ。
さらに同エピソードが斬新だったのは、作中に登場するのが古畑とちなみの2人にほぼ限定されていたこと。数多くの登場人物が出てきて最後に“犯人当て”が行われる……そんな従来のミステリードラマとは一線を画したスタイルであることを、この上なくハッキリと示している。
なお記念すべき1話目の犯人ということもあり、ちなみの存在は後のエピソードでも度々言及され、“その後の人生”が明かされている。古畑ファンなら一度は観ておきたい原点にして頂点のエピソードだ。
■シーズン2エピソード1「しゃべりすぎた男」半世紀近くの間、お茶の間を笑顔にし続けている明石家さんま。シーズン2の第1話「しゃべりすぎた男」では、そんなお笑い界の大物が犯人役を演じている。役柄としては「マシンガントークの敏腕弁護士」というもので、お馴染みのおしゃべりによって法廷で無双するシーンは一見の価値ありだ。
同エピソードでは、さんま演じる弁護士・小清水潔の策略により、古畑の相棒である今泉慎太郎巡査(西村雅彦)が殺人事件の犯人として逮捕されてしまう。さらに真犯人である小清水が今泉の弁護人となり、表向きは弁護するフリをしながら、彼が犯人であるというイメージを周囲に刷り込んでいく。そして古畑は今泉側の証人として法廷に立ち、小清水の激しい口撃をいなしながら、真相を暴いてみせるのだった。
“役者としての明石家さんま”を存分に活かした見事な脚本と言えるが、終盤の展開もなかなかユニークだ。同作では古畑がひょうひょうとした態度で犯人を追い詰めていく真相解明パートが見どころとなっているが、この回は犯人がそれに負けないほどの反論を見せるレアな展開が描かれている。
■シーズン2エピソード2「笑わない女」最後に紹介したいのが、シーズン2の第2話「笑わない女」。熱心なファンのあいだでも、とくに人気が高いエピソードだ。『科捜研の女』シリーズでもお馴染みの名優・沢口靖子が、全寮制女子校の女教師を演じている。
同エピソードの魅力はなんといっても、『古畑任三郎』シリーズでも珍しいストーリー構成にあるだろう。いつもはアリバイ工作のためのトリックが事件のカギを握っているが、この回では“犯行動機”に焦点が当たっているからだ。ミステリー用語でいう「ホワイダニット」ということになる。
冒頭、沢口演じる女教師・宇佐美ヨリエが男性教師を殺すのだが、視聴者にはその動機がわからない状態で物語が始まる。古畑が事件を捜査しながらヨリエと話すうちに、「もしかして……?」とその犯行動機が浮かび上がってくるという仕掛けだ。
そして明らかになる動機はきわめて些細なもので、多くの視聴者は間違いなく「そんなことで!?」と言いたくなるだろう。しかしその動機で殺人を犯す宇佐美ヨリエという人物を、沢口が完璧に演じきっているため、不思議と納得させられてしまう。『古畑任三郎』シリーズに登場したゲストのなかでも屈指の怪演なので、ぜひその目で確かめてみてほしい。
多くの人に愛された平成の名作ドラマ『古畑任三郎』。放送開始から30年経った今でも、その魅力は決して色褪せてはいない。まだ見たことがない人も、いまだにファンだという人も、この機会に懐かしのエピソードを振り返ってみてはどうだろうか。
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