

<生きづらさを抱える女性たち>コロナ禍で悩みは深刻化。10代、20代の若い人たちが抱える社会課題
2025.03.12 10:25
提供:ママスタ☆セレクト

DVや虐待、貧困といった家庭の悩みから、居場所がない、寂しい、辛いなど原因が何なのかもよく分からない悩みまで、若い女性のなかには、心にSOSや生きづらさを抱えている人たちがいます。彼女たちは自ら悩みを抱え込んでしまうため、支援も受けられないまま、ときには犯罪に巻き込まれたり希死念慮に至ったりする恐れさえあります。
こういった課題に対して、2024年(令和6年)4月に「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(女性支援新法)」が施行されました。この法律により日本全国で、生活の困窮など過酷な状況に陥っている女性へ総合的な支援が行われるようになっています。「女性の居場所づくり」をはじめ、女性が自立するための国内支援事業を行っている、公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンの福田愛(ふくだめぐみ)さんに、若年層の女の子が抱える社会課題について詳しく聞きました。
コロナ禍で孤独を深める女子。ホストに依存する子も
――日本では若い女の子たちに、どのような問題が関係してくるでしょうか。
福田愛さん(以下、福田さん):ヤングケアラー、いじめや対人関係、ジェンダー不平等、暴力、性被害、SNSトラブル、依存症、若年妊娠、精神疾患などが挙げられます。また家族関係の不和やパートナーからの暴力、性被害の経験、学校や職場での人間関係が困難になり、収入はもちろん自分の心の拠りどころさえないことも。不安や無力感、鬱、自己肯定感の低さ、適応障害、発達障害、自殺未遂なども挙げられます。家庭の経済状況悪化や学費の上昇、奨学金返納、就職困難、障害、望まない妊娠などで生活が困窮してしまう女性は少なくありません。
こうした状況はコロナ禍を経てさらに深刻化しました。DVを例を挙げると、コロナ禍にあった2020年度のDV相談件数は、2019年度から約1.5倍になったことがわかっています。また10代から20代の女性の自殺数も2019年度から2020年度にかけて増加に転じました。在宅時間の増加でDVが増え、サービス業従事者や非正規雇用で働く若い女性が経済的にも大きな害を被り、急増した自殺率に繋がったと推測されます。
参考:内閣府|男女共同参画白書 令和4年版 5-6図 DV相談件数の推移
参考:厚生労働省|令和3年中における自殺の状況
――最近ではパパ活や風俗で生計を立てたり、ホストに依存したりする女の子もいます。
福田さん:自分に注目してもらえる快感や人から求められる喜び、寂しさを埋めるためにやっている子は多いと思います。彼女たちが求めているのはお金や性行為ではなく、「誰かに構ってもらえる」という愛情なのでしょう。子ども時代に愛情を親から受けていないと、大人になってから愛情を埋めようとしてしまいます。また人に愛されている絶対的な安心がないから、自分のことも愛せなくて生きづらくなるのだと思います。だからそういう女の子は、自分が愛情を求めていることに気付いたら、誰かに相談して気持ちを整理する必要があります。
若い女性に必要な居場所を作る
――誰かに相談といっても、特に行政の相談先は若い女性に知られていないのではないでしょうか。
福田さん:私は更生保護施設で指導員兼保護司として、少年院や刑務所を仮退所・仮出所した女性の自立支援にも携わってきました。本当に困難な状況の女の子たちは自分にどんな課題があるのか気付かず、相談機関の存在もわかっていません。元気もないし、考えることもできず、なんとなく犯罪に巻き込まれた、ある意味で被害者のような女の子もたくさんいました。家庭にも学校にも居場所がなくて少年院や刑務所に辿り着いてしまったケースもあります。したがって、もっと早い段階からの支援や居場所が本当に大切だと思っています。
――改めて「自分の居場所」をつくることには、どのような意義があるのでしょう。
福田さん:自分の居場所は心の安全のためには必須で、居場所や相談できる人が多いほど自己肯定感やチャレンジ精神、将来への希望などの自己認識が高まることもわかっています。しかし学校や会社など所属先がない女性は相談先や受け皿が少なく、孤独や生きづらさを抱えがちになります。若年女性にとっての居場所作りが急務だということでコロナ禍の2020年8月、15歳から24歳の女の子に寄り添う相談事業「わたカフェ」を東京の池袋にオープンしました。私は社会福祉士と精神保健福祉士、ソーシャルワーカーを兼任し、「わたカフェ」職員としても働いています。
――「わたカフェ」は、どのようなことができる場所ですか?
福田さん:Wi-Fiや食事、飲み物、本を自由に利用できてカフェのように安心して過ごせます。またソーシャルワーカーや心理士、助産師などの専門職が常駐して、食事や日用品の提供や、行政や民間の支援サービスの情報提供を行っています。医療機関ではカウンセリングを受けると医療費が自己負担となってしまいますが、「わたカフェ」で受けるカウンセリングはすべて無料。匿名で有資格者とチャット相談をすることもできます。一方「わたカフェ」にはシェルター機能はないので、住む場所にも困る子は他の団体を紹介しています。
「大人と話したい」家庭内不和で生きづらさを感じる女の子たち
――これまで受け入れた若年女性は延べ6,121人、相談件数は延べ2,572件、チャット相談利用数は延べ7246人にのぼったそうですね(2025年1月末時点)。実際にどのような女の子が相談に来ているのでしょうか。
福田さん:「大人と話したい」という子がすごく多く、利用者数の約半数が専門職との相談を希望して来ています。「帰る家はあるけど家に居場所がない」という女の子は少なくありません。過去のトラウマや虐待が大人になって呼び覚まされて苦しくなったという子、自分が悪い子だったから親に怒られたと思っていたけれどそうではなかったと気付いた子もいました。大学や職場で人間関係に悩んだり、家族との関係でも苦しんだりして漠然とした生きづらさを抱えるに至っているようです。
中には裕福な家庭で育ち、国内最高峰の学歴を持ちながらも親からのプレッシャーに苦しみ、自己肯定感の低さから相談に来る女子大学生もいます。親から一人娘として期待や重圧を受けずっと苦しかった、周囲からは「幸せそう」「もっと辛い人もいる」と言われるなどギャップにも悩んでいました。衣食住は満たされても心が満たされてこなかった女の子たちは、高校生や大学生になって生きづらさが顕在化することもあります。
相談をうけるたび、さまざまな問題をもつ女性たちが気軽に相談できる居場所作りが必要だと痛感しています。
第2回へ続く。
参考:プラン・インターナショナル・ジャパン
わたカフェ
取材、文・AKI 編集・編集部 イラスト・森乃クコ
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