山田裕貴「僕はゆとってない」“世代”の偏見打破へ 走り続ける信念<「SEDAI WARS」インタビュー>
2020.01.03 16:00
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2020年1月スタートのドラマ『SEDAI WARS』(MBSは5日より毎週日曜24:50~、TBSは7日より毎週火曜25:28~)で連続ドラマ初主演を務める俳優の山田裕貴が、インタビューに応じた。
今期は同作だけでなく、MBSドラマ特区『ホームルーム』(2020年1月23日より毎週木曜24:59~など)でも主演を務め、異例の同時期2作品の主演に挑む山田。
『SEDAI WARS』の舞台は近未来の日本。世代間の軋轢によって様々な問題が深刻化し、社会は崩壊の一途を辿る。そんな中、内閣総理大臣に代わって日本を治める大統領を決めるという『SEDAI WARS』の開催が決定。それは“SEDAI(セダイ)”と呼ばれる各世代の代表者が、VR空間内でバトルロイヤルを行うというトンデモない内容で「団塊」「バブル」「ロスジェネ」「ゆとり」「ミレニアル」という各世代の代表がランダムに集められる。果たして、勝つのはどの世代なのか…。監督は、アメリカで『パワーレンジャー』シリーズ監督・総合プロデューサーを歴任し、日本国内でも様々なアクション作品を手掛ける坂本浩一氏が務める。
山田が演じるのは、ゆとり世代の男子・柏木悟。山田が「これまでで一番さえなくてかっこ悪い男」と言うほどの役柄だが、そこに込められた熱い思いとは。
アクションもそうですが、主演ということもあって、この作品で一番大事だと思ったことはストーリーから何を受け取ってもらえるかです。たくさんかっこいい役や悪い役をやってきた中で、今回の役柄はこれまでで一番さえなくてかっこ悪い男なんですよ。そういう男が何をできるのか、何を持っているのか。それは、誰とも平等に接し、人を悪いと思わず、その心が世界を変えていけるということだと思うんです。最終回に向けてだんだんと、悟の心の根が世界を変えていくんですよ。日頃から思っているのですが、お仕事だったり、友人関係だったり、恋人だったりという人とのつながりで大切なのは、外見じゃなくて人の心。だから、大事なのは見栄えじゃないんだということを受け取ってもらえるように、わざとかっこ悪く演じています。「その役そんなに髪キメてなくていいのに」「なんでこんな主人公をこんなかっこいい人がやっているんだろう?」みたいなのってあるじゃないですか。でもこの作品はそうならないように、そぎ落として、ちゃんとかっこ悪くやることにチャンレンジしているという感覚です。
― このドラマの「ここが面白い」というポイントは?
やっぱり総理大臣が「総理大臣やりたくないな~」と思っているのがまず面白くて(笑)。そして急に総理大臣から選ばれて、「SEDAI WARS!」なんて言われて急に戦いに行く人々(笑)。リアルだったらあり得ないと思いますが、ドラマなので、急に「この人!」みたいに指名されて戦いに行くんですよ。そのぶっ飛び感みたいなのは面白いなと思います。あとはカメラから電流が走ったり(笑)。政府の偉い人が総理大臣のカメラを止めようとすると、いきなり電流が走って倒れるんですけど、そもそもそのカメラで撮影してる人はいるんですよ。その人は大丈夫なのか?とか、そういう細かなところもすごく笑えるので、ぜひライトに見てもらえたらと思います(笑)。1話を見ていなくても、2、3話から見ても面白いと思いますし、途中からでも全然楽しめると思います。
― ツッコミどころがたくさんあるんですね(笑)。
そうですね。あとは無理やり、僕が大好きな某海賊マンガっぽい必殺技も出てくるので、それがどうなっているかも楽しみです。そしてラストには、この世で僕が“一番なりたいもの”になれているので、そこも注目してほしいです。見たら必ず分かります。
― 山田さんといえば「HiGH&LOW」でも激しいアクションをされていますが、今回はアクションという面ではいかがでしたか?
アクションに関しては、今回僕はとにかく逃げているので、あまり戦っていないんです(笑)。僕はデビュー作(「海賊戦隊ゴーカイジャー」)でもよく必殺技を受けて倒れていましたから、一度経験させてもらっているので想像もつきやすかったし、困ったとかはなかったです。むしろ普通の男の子は、蹴られたら本当に痛いと思うし、その時の顔とか声とかってなんなんだろう、ということを考えながらやっていたかもしれないですね。アクションってすごく綺麗に戦いますけど、パンチを受けてキックを出して…というのは普通はあり得ないと思うので、「普通だったらこう」というものを追い求めました。
ただ、今作はVR空間で戦うので、そこは普通じゃなくて面白いと思います。必殺技が出たり、単純に身体能力が上がっていたり。あとはみんな、それぞれのSEDAIが変身していくんです。まあ、“ジェダイ”のようなものですね(笑)。台本をもらった時も、一瞬スター・ウォーズの台本かと思ったくらいですよ(笑)。
出合正幸さん演じる「ロスジェネ世代」の黒田哲也が、あることを抱えていて、悟が哲也に「そのままでもかっこいいですよ」と言うシーンがあるんです。そのときに、出合さんが「やーーーぃ!!」って聞いたことないような声を上げたんですよ。みんな大爆笑でした。もう現場で笑い転げて、そこから出合さんと真飛聖さんと僕のグループラインの名前が「やーい」になりました。
― そんなに愉快な現場なんですね。
こんなに遊びみたいな感覚で撮影現場に行ったことはなかったですね。それまでシリアスな役が多かったから。『なつぞら』が終わって次の日くらいにクランクインだったし、それまで刑事モノやったり、徳川慶喜役をやったり、『HiGH&LOW』の撮影も入っていたり、『なつぞら』の雪次郎も悩んでいたし、自分の中でいろいろぐちゃぐちゃだったんです。
なので今作ほど、リラックスして撮影した作品はなかったです(笑)。考え込んで無いので、逆にすごくいいんだと思います。独創性というのが一番芸術を生むと思うし、「やーーーぃ!!」も一番笑いましたしね。僕の中では年間の流行語ですよ(笑)。2話で出てくるのでぜひ見ていただきたいです。
― 世代ごとの描写も面白そうですね。
本当に面白いです。団塊世代の西岡德馬さんとか、本当に世代だなと思ったのが、「撮影早く終わってゴルフ行きたいんだよな」とか言われてて、その感じがたまらなくて(笑)。あとロスジェネ世代の方々が「氷河期の時代だから何も無いよ。苦しい時代だよ」とかお話していましたね。そんなに噛み締めて時代生きてきましたか?っていう(笑)。バブル世代の2人も本当にすごいですね。横山めぐみさんも岡田浩暉さんも、こう言ったら失礼かもしれませんが、時代の匂いがするというか。やっぱり親の世代だからか、印象が強いような気がします。
これはずっと言ってきたのですが、僕は全然ゆとっていないので!自分でやると決めたことは最後までやるという家庭で、何かをやらないという選択肢はなかったです。「興味ないな、別にこのまま流れで生きていけばいいじゃん」とか「人に任せればいいじゃん」なんて思ったこと無いですし、僕はゆとっていないです。
― でも、周りから「ゆとり世代」という目を向けられることは多かったのではないですか?
実際「ゆとり」とか言われることはすごく嫌でしたけど、「言わせておけばいい」くらいの心意気でいました。僕は世代とか関係ないと思っているんですよ。人は男も女も関係なくて、地球に住んでいる動物の一種で、みんな仲良くすればいいのにと思っているタイプの人間なので、年なんてあんまり関係無いんです。人を世代でしか考えられないような人は見ている範囲が狭いし、一番もったいないと思っていました。
もちろん先輩後輩とか、社会のルールというものがあって世界が成り立っているので、そういうものはきっちり守りますけど、そういうシステムが出来上がっちゃってることで、苦しめている部分もたくさんあると思うんです。たとえば上司に意見が言えないとか、せっかく面白いアイディアなのに、部下の意見だから面白くないと決めつけるとか、そういう世の中じゃないですか。アンフェアなんですよね、かなり。
だから、「そういうことじゃないんだよ」ということが伝えられるドラマになればいいなと思います。悟はそういう男だし、そこは僕の考えとマッチしたんです。
― 世代に対する偏見がなくなるようなドラマになればという思いもあるのですね。
そうですね。身分の差とかも嫌いで、上に立っている人が偉いという世の中が違うと思っているので。本物はどんな人とでも仲良くできるし、どんな人とも会話できるし、どんな人も愛せる人だと思うので、僕はそういう男になりたいと思って生きています。僕は、仏に、神様になりたいんです。って、ちょっとおかしいと思い始めてます?(笑)。それくらいの心の根でいたいということです。脚本も実際にそうなっているので、先ほども言いましたが、悟が最後何になるのかに期待してください。
舞台もそうですが、やっていけばやっていくほど芝居って変わっていくんです。苦しかった部分もありますが、だからこそすごく研ぎ澄まされているし、集中力が半端ではないと思うんですよ。
だから今『ホームルーム』を撮影していて、すごくいい状態なんです(笑)。幸子という女の子に対してガーっとなれているし、神様が味方してくれている感覚ですね (現在撮影は終了) 。次から次へと作品ができるなんてめちゃくちゃありがたいことじゃないですか。かといって、絶対にパフォーマンスを落としたくないし、役を生きる上でつまらないものを作りたくないから。
― 本当にストイックですね。
ストイックと言うか、俳優って絶対にそうだと思います。「いいよいいよ」と言われる感じが、気持ち悪くなってくるんです。「本当に大丈夫なんだろうか、面白いだけでいいのか、もっと突き詰めたらいろんな感情を見せられるんじゃないか」とか、そういうことを緻密に考えようとすればするほど、考えてしまうんだと思います。「70点取っちゃうんじゃないか」じゃなくて、「100点いってるんだったら、105点、110点取ろうよ」みたいな。
― 忙しいけれど質を落としたくないという中で、量を減らそうとか、1つずつやっていこうと思うことは無いのですか?
僕は量を減らせるくらい、余裕のある俳優では無いと思います。減らしてほしいなんて全く思わないし、なんなら「全部やる」と自分で言っているんです。それで自分で辛くなってるだけだから、誰のせいでもないです。それを乗り越えられなかったら、僕の負け。全部自分のせいです。
でもその分、すごく周りの人たちに助けられてるなと思います。スタッフもそうだし、キャストの皆さんも素敵な人たちばかりだし、チームの中に入ってもすごくいい意味で甘えられる瞬間が多い。それは今年、運がよかったし、これがずっと続けばいいなと思うし、このまま走り続けていたら、経験値としてもしっかり積み重なると思うんです。もっとできる、もっと伝えられる俳優になっていけるんじゃないかと思います。
『ホームルーム』の小林監督もなんでも受け止めてくれる方で、先日もTwitterで「思いついたことを百億倍でやってくれる」と書いてくれていて。その日は何故かジョーカーの踊りを踊ったんです。台本には全く書いてなかったですけど、そこに階段があったから。
もっと話題の男にならないといけない、というのはあります。周りから「すごいね」と言われるポイントと、僕の気持ちの満足度って全然違うんです。今でも「すごい出てるじゃん」と言われることもありますけど、僕は俳優なので、やっぱり作品で評価されないと意味がないと思います。18歳のときにノートに「28歳でアカデミー賞新人賞取る」と書いたけど、もうそれは超えちゃってるな、とか、もう29歳だけど新人賞っていつまで取れるんだろうとか、僕はまだ新人なのかとか。
まだまだなんですよ。確かなものにできたらいいなと思っていますし、そんなに甘くないと思っています。でも「できる」と思ってやれてきたから、ここまで来たと思うので、これをどうこのあと広げられるか。
今年やってきたお仕事は、全てに置いて、すごくいろいろ変われたし、進化できたと思っているんです。特に舞台の『終わりのない』は、お芝居だけじゃなく、人との関わり方とか、僕には人を変える力があるのかもしれないということを、信じさせてもらえた。そういう現場が多かったので、「愛される力があるのかもしれない」と思ったんです。
それをもっとたくさん、演技だったり、人物として、広く頭に心に残せる人にならないと、30代以降は本当にキツイのではないかなと思っています。焦っているわけじゃなくて、今乗りに乗っちゃいけないな、と。そういう時だから、今までで一番、油断しないようにしています。だから、来年もそんな感じでいくんだと思います。
― 山田さんが満足できるポイントってあるんですか?「ここまできたらOK」みたいに。
無いんじゃないですかね。逆に、みんなは何を幸せだと思っているんだろう。例えば、「お仕事じゃないよ」と言う人もいるし、結婚している俳優さんだったら家族のことがあって、それももちろん幸せだとは思います。でも僕には無いわけで、だとすればもう本当に、評価されるとか、受け入れてもらうということが1番の幸せなんです。旅行に行けて幸せということもまずないし、何かの賞に引っかかったとか、そっちのほうが幸せです。
― 「確かなものにできたら」とおっしゃっていましたもんね。
世の中が「山田裕貴っていう俳優、すごいよな」となればいいんですけどね。あるいは、世に知られて無くても、この業界の中で、絶対に名前が上がるようになりたいです。誰もが欲しがるくらいの俳優に。
まあだから来年30歳になっても、おんなじようなことを言ってるんだと思います(笑)。40代とかになってそのがむしゃらな日々は落ち着くんじゃないですか。結婚したりして家庭を持ったりしたら。キラキラネームとかつけたいですけどね(笑)。
― そんな山田さんも楽しみです(笑)。ありがとうございました。
普通の人だって、心の根で世界を変えられるということ、人を年齢や世代で判断するなんてアンフェアだということ。「ライトに見ていただけたら」と笑うこの『SEDAI WARS』にも、熱い男・山田裕貴の信念、今の時代だからこそ伝えたいことが込められている。
昨年末発表された「第74回文化庁芸術祭賞」にて演劇部門新人賞を受賞した山田。走り続ける中で手ごたえをつかんでも、決して満足せず、質を落とさず上を上を目指していく。そんな意気盛んな姿勢からは、必ず大きな存在になるだろうという凄みを感じる。2019年、「今年は本当に愛されたな、現場を愛せたな」と感じたという山田。熱い男の周りには、常に素晴らしい仲間が集まる。そんな仲間たちと共に、山田はこれからも走り続けていくのだろう。
監督は、アメリカの『パワーレンジャー』シリーズ監督・総合プロデューサーを歴任し、日本国内でも様々なアクション作品を手掛ける坂本浩一氏が務める。
自身が担任するクラスでイジメられる幸子に、優しく手を差し伸べるが、実はいじめていた犯人は愛田先生本人だった。幸子が好きすぎるあまり自作自演の救出劇を繰り返し、幸子のヒーローを装っていたという衝撃の学園サイコ・ラブストーリー。(modelpress編集部)
『SEDAI WARS』の舞台は近未来の日本。世代間の軋轢によって様々な問題が深刻化し、社会は崩壊の一途を辿る。そんな中、内閣総理大臣に代わって日本を治める大統領を決めるという『SEDAI WARS』の開催が決定。それは“SEDAI(セダイ)”と呼ばれる各世代の代表者が、VR空間内でバトルロイヤルを行うというトンデモない内容で「団塊」「バブル」「ロスジェネ」「ゆとり」「ミレニアル」という各世代の代表がランダムに集められる。果たして、勝つのはどの世代なのか…。監督は、アメリカで『パワーレンジャー』シリーズ監督・総合プロデューサーを歴任し、日本国内でも様々なアクション作品を手掛ける坂本浩一氏が務める。
山田が演じるのは、ゆとり世代の男子・柏木悟。山田が「これまでで一番さえなくてかっこ悪い男」と言うほどの役柄だが、そこに込められた熱い思いとは。
山田裕貴初主演ドラマ『SEDAI WARS』の魅力とは
― ヒーローアクションの第一人者・坂本浩一監督とタッグですが、まずはこの作品についての思いを教えてください。アクションもそうですが、主演ということもあって、この作品で一番大事だと思ったことはストーリーから何を受け取ってもらえるかです。たくさんかっこいい役や悪い役をやってきた中で、今回の役柄はこれまでで一番さえなくてかっこ悪い男なんですよ。そういう男が何をできるのか、何を持っているのか。それは、誰とも平等に接し、人を悪いと思わず、その心が世界を変えていけるということだと思うんです。最終回に向けてだんだんと、悟の心の根が世界を変えていくんですよ。日頃から思っているのですが、お仕事だったり、友人関係だったり、恋人だったりという人とのつながりで大切なのは、外見じゃなくて人の心。だから、大事なのは見栄えじゃないんだということを受け取ってもらえるように、わざとかっこ悪く演じています。「その役そんなに髪キメてなくていいのに」「なんでこんな主人公をこんなかっこいい人がやっているんだろう?」みたいなのってあるじゃないですか。でもこの作品はそうならないように、そぎ落として、ちゃんとかっこ悪くやることにチャンレンジしているという感覚です。
― このドラマの「ここが面白い」というポイントは?
やっぱり総理大臣が「総理大臣やりたくないな~」と思っているのがまず面白くて(笑)。そして急に総理大臣から選ばれて、「SEDAI WARS!」なんて言われて急に戦いに行く人々(笑)。リアルだったらあり得ないと思いますが、ドラマなので、急に「この人!」みたいに指名されて戦いに行くんですよ。そのぶっ飛び感みたいなのは面白いなと思います。あとはカメラから電流が走ったり(笑)。政府の偉い人が総理大臣のカメラを止めようとすると、いきなり電流が走って倒れるんですけど、そもそもそのカメラで撮影してる人はいるんですよ。その人は大丈夫なのか?とか、そういう細かなところもすごく笑えるので、ぜひライトに見てもらえたらと思います(笑)。1話を見ていなくても、2、3話から見ても面白いと思いますし、途中からでも全然楽しめると思います。
― ツッコミどころがたくさんあるんですね(笑)。
そうですね。あとは無理やり、僕が大好きな某海賊マンガっぽい必殺技も出てくるので、それがどうなっているかも楽しみです。そしてラストには、この世で僕が“一番なりたいもの”になれているので、そこも注目してほしいです。見たら必ず分かります。
― 山田さんといえば「HiGH&LOW」でも激しいアクションをされていますが、今回はアクションという面ではいかがでしたか?
アクションに関しては、今回僕はとにかく逃げているので、あまり戦っていないんです(笑)。僕はデビュー作(「海賊戦隊ゴーカイジャー」)でもよく必殺技を受けて倒れていましたから、一度経験させてもらっているので想像もつきやすかったし、困ったとかはなかったです。むしろ普通の男の子は、蹴られたら本当に痛いと思うし、その時の顔とか声とかってなんなんだろう、ということを考えながらやっていたかもしれないですね。アクションってすごく綺麗に戦いますけど、パンチを受けてキックを出して…というのは普通はあり得ないと思うので、「普通だったらこう」というものを追い求めました。
ただ、今作はVR空間で戦うので、そこは普通じゃなくて面白いと思います。必殺技が出たり、単純に身体能力が上がっていたり。あとはみんな、それぞれのSEDAIが変身していくんです。まあ、“ジェダイ”のようなものですね(笑)。台本をもらった時も、一瞬スター・ウォーズの台本かと思ったくらいですよ(笑)。
撮影現場で流行語生まれる?
― 現場でのエピソードで印象に残っていることは?出合正幸さん演じる「ロスジェネ世代」の黒田哲也が、あることを抱えていて、悟が哲也に「そのままでもかっこいいですよ」と言うシーンがあるんです。そのときに、出合さんが「やーーーぃ!!」って聞いたことないような声を上げたんですよ。みんな大爆笑でした。もう現場で笑い転げて、そこから出合さんと真飛聖さんと僕のグループラインの名前が「やーい」になりました。
― そんなに愉快な現場なんですね。
こんなに遊びみたいな感覚で撮影現場に行ったことはなかったですね。それまでシリアスな役が多かったから。『なつぞら』が終わって次の日くらいにクランクインだったし、それまで刑事モノやったり、徳川慶喜役をやったり、『HiGH&LOW』の撮影も入っていたり、『なつぞら』の雪次郎も悩んでいたし、自分の中でいろいろぐちゃぐちゃだったんです。
なので今作ほど、リラックスして撮影した作品はなかったです(笑)。考え込んで無いので、逆にすごくいいんだと思います。独創性というのが一番芸術を生むと思うし、「やーーーぃ!!」も一番笑いましたしね。僕の中では年間の流行語ですよ(笑)。2話で出てくるのでぜひ見ていただきたいです。
― 世代ごとの描写も面白そうですね。
本当に面白いです。団塊世代の西岡德馬さんとか、本当に世代だなと思ったのが、「撮影早く終わってゴルフ行きたいんだよな」とか言われてて、その感じがたまらなくて(笑)。あとロスジェネ世代の方々が「氷河期の時代だから何も無いよ。苦しい時代だよ」とかお話していましたね。そんなに噛み締めて時代生きてきましたか?っていう(笑)。バブル世代の2人も本当にすごいですね。横山めぐみさんも岡田浩暉さんも、こう言ったら失礼かもしれませんが、時代の匂いがするというか。やっぱり親の世代だからか、印象が強いような気がします。
山田裕貴、世代へのステレオタイプ打破へ「年なんて関係無い」
― 悟もそうですが、山田さん自身も「ゆとり世代」と言われる世代ですよね。これはずっと言ってきたのですが、僕は全然ゆとっていないので!自分でやると決めたことは最後までやるという家庭で、何かをやらないという選択肢はなかったです。「興味ないな、別にこのまま流れで生きていけばいいじゃん」とか「人に任せればいいじゃん」なんて思ったこと無いですし、僕はゆとっていないです。
― でも、周りから「ゆとり世代」という目を向けられることは多かったのではないですか?
実際「ゆとり」とか言われることはすごく嫌でしたけど、「言わせておけばいい」くらいの心意気でいました。僕は世代とか関係ないと思っているんですよ。人は男も女も関係なくて、地球に住んでいる動物の一種で、みんな仲良くすればいいのにと思っているタイプの人間なので、年なんてあんまり関係無いんです。人を世代でしか考えられないような人は見ている範囲が狭いし、一番もったいないと思っていました。
もちろん先輩後輩とか、社会のルールというものがあって世界が成り立っているので、そういうものはきっちり守りますけど、そういうシステムが出来上がっちゃってることで、苦しめている部分もたくさんあると思うんです。たとえば上司に意見が言えないとか、せっかく面白いアイディアなのに、部下の意見だから面白くないと決めつけるとか、そういう世の中じゃないですか。アンフェアなんですよね、かなり。
だから、「そういうことじゃないんだよ」ということが伝えられるドラマになればいいなと思います。悟はそういう男だし、そこは僕の考えとマッチしたんです。
― 世代に対する偏見がなくなるようなドラマになればという思いもあるのですね。
そうですね。身分の差とかも嫌いで、上に立っている人が偉いという世の中が違うと思っているので。本物はどんな人とでも仲良くできるし、どんな人とも会話できるし、どんな人も愛せる人だと思うので、僕はそういう男になりたいと思って生きています。僕は、仏に、神様になりたいんです。って、ちょっとおかしいと思い始めてます?(笑)。それくらいの心の根でいたいということです。脚本も実際にそうなっているので、先ほども言いましたが、悟が最後何になるのかに期待してください。
作品立て続く山田裕貴が走り続ける理由
― 今期は2作品同時の主演も務められます。2019年は本当に色々な役を演じられていたと思いますが、演じ分けなどは大変ではなかったですか?舞台もそうですが、やっていけばやっていくほど芝居って変わっていくんです。苦しかった部分もありますが、だからこそすごく研ぎ澄まされているし、集中力が半端ではないと思うんですよ。
だから今『ホームルーム』を撮影していて、すごくいい状態なんです(笑)。幸子という女の子に対してガーっとなれているし、神様が味方してくれている感覚ですね (現在撮影は終了) 。次から次へと作品ができるなんてめちゃくちゃありがたいことじゃないですか。かといって、絶対にパフォーマンスを落としたくないし、役を生きる上でつまらないものを作りたくないから。
― 本当にストイックですね。
ストイックと言うか、俳優って絶対にそうだと思います。「いいよいいよ」と言われる感じが、気持ち悪くなってくるんです。「本当に大丈夫なんだろうか、面白いだけでいいのか、もっと突き詰めたらいろんな感情を見せられるんじゃないか」とか、そういうことを緻密に考えようとすればするほど、考えてしまうんだと思います。「70点取っちゃうんじゃないか」じゃなくて、「100点いってるんだったら、105点、110点取ろうよ」みたいな。
― 忙しいけれど質を落としたくないという中で、量を減らそうとか、1つずつやっていこうと思うことは無いのですか?
僕は量を減らせるくらい、余裕のある俳優では無いと思います。減らしてほしいなんて全く思わないし、なんなら「全部やる」と自分で言っているんです。それで自分で辛くなってるだけだから、誰のせいでもないです。それを乗り越えられなかったら、僕の負け。全部自分のせいです。
でもその分、すごく周りの人たちに助けられてるなと思います。スタッフもそうだし、キャストの皆さんも素敵な人たちばかりだし、チームの中に入ってもすごくいい意味で甘えられる瞬間が多い。それは今年、運がよかったし、これがずっと続けばいいなと思うし、このまま走り続けていたら、経験値としてもしっかり積み重なると思うんです。もっとできる、もっと伝えられる俳優になっていけるんじゃないかと思います。
『ホームルーム』の小林監督もなんでも受け止めてくれる方で、先日もTwitterで「思いついたことを百億倍でやってくれる」と書いてくれていて。その日は何故かジョーカーの踊りを踊ったんです。台本には全く書いてなかったですけど、そこに階段があったから。
山田裕貴「もっと話題の男にならないと」2020年には30歳を迎えるが…
― 2020年は俳優としてどうなりたいですか?もっと話題の男にならないといけない、というのはあります。周りから「すごいね」と言われるポイントと、僕の気持ちの満足度って全然違うんです。今でも「すごい出てるじゃん」と言われることもありますけど、僕は俳優なので、やっぱり作品で評価されないと意味がないと思います。18歳のときにノートに「28歳でアカデミー賞新人賞取る」と書いたけど、もうそれは超えちゃってるな、とか、もう29歳だけど新人賞っていつまで取れるんだろうとか、僕はまだ新人なのかとか。
まだまだなんですよ。確かなものにできたらいいなと思っていますし、そんなに甘くないと思っています。でも「できる」と思ってやれてきたから、ここまで来たと思うので、これをどうこのあと広げられるか。
今年やってきたお仕事は、全てに置いて、すごくいろいろ変われたし、進化できたと思っているんです。特に舞台の『終わりのない』は、お芝居だけじゃなく、人との関わり方とか、僕には人を変える力があるのかもしれないということを、信じさせてもらえた。そういう現場が多かったので、「愛される力があるのかもしれない」と思ったんです。
それをもっとたくさん、演技だったり、人物として、広く頭に心に残せる人にならないと、30代以降は本当にキツイのではないかなと思っています。焦っているわけじゃなくて、今乗りに乗っちゃいけないな、と。そういう時だから、今までで一番、油断しないようにしています。だから、来年もそんな感じでいくんだと思います。
― 山田さんが満足できるポイントってあるんですか?「ここまできたらOK」みたいに。
無いんじゃないですかね。逆に、みんなは何を幸せだと思っているんだろう。例えば、「お仕事じゃないよ」と言う人もいるし、結婚している俳優さんだったら家族のことがあって、それももちろん幸せだとは思います。でも僕には無いわけで、だとすればもう本当に、評価されるとか、受け入れてもらうということが1番の幸せなんです。旅行に行けて幸せということもまずないし、何かの賞に引っかかったとか、そっちのほうが幸せです。
― 「確かなものにできたら」とおっしゃっていましたもんね。
世の中が「山田裕貴っていう俳優、すごいよな」となればいいんですけどね。あるいは、世に知られて無くても、この業界の中で、絶対に名前が上がるようになりたいです。誰もが欲しがるくらいの俳優に。
まあだから来年30歳になっても、おんなじようなことを言ってるんだと思います(笑)。40代とかになってそのがむしゃらな日々は落ち着くんじゃないですか。結婚したりして家庭を持ったりしたら。キラキラネームとかつけたいですけどね(笑)。
― そんな山田さんも楽しみです(笑)。ありがとうございました。
普通の人だって、心の根で世界を変えられるということ、人を年齢や世代で判断するなんてアンフェアだということ。「ライトに見ていただけたら」と笑うこの『SEDAI WARS』にも、熱い男・山田裕貴の信念、今の時代だからこそ伝えたいことが込められている。
昨年末発表された「第74回文化庁芸術祭賞」にて演劇部門新人賞を受賞した山田。走り続ける中で手ごたえをつかんでも、決して満足せず、質を落とさず上を上を目指していく。そんな意気盛んな姿勢からは、必ず大きな存在になるだろうという凄みを感じる。2019年、「今年は本当に愛されたな、現場を愛せたな」と感じたという山田。熱い男の周りには、常に素晴らしい仲間が集まる。そんな仲間たちと共に、山田はこれからも走り続けていくのだろう。
『SEDAI WARS』
舞台は近未来の日本。世代間の軋轢によって様々な問題が深刻化し、社会は崩壊の一途を辿っていた。そんな中、時の内閣総理大臣に代わって日本を治める大統領を決めるという『SEDAI WARS』の開催が発表された。それは“SEDAI(セダイ)”と呼ばれる各世代の代表者がVR空間内でバトルロイヤルを行うというトンデモない内容だった。団塊、バブル、ロスジェネ、ゆとり、そしてミレニアル。果たして、勝つのはどの世代なのか。監督は、アメリカの『パワーレンジャー』シリーズ監督・総合プロデューサーを歴任し、日本国内でも様々なアクション作品を手掛ける坂本浩一氏が務める。
『ホームルーム』
『ホームルーム』の主人公・爽やかイケメン教師の愛田凛太郎は、学園でも女子生徒からダントツの人気で、「ラブリン」の愛称で親しまれている。自身が担任するクラスでイジメられる幸子に、優しく手を差し伸べるが、実はいじめていた犯人は愛田先生本人だった。幸子が好きすぎるあまり自作自演の救出劇を繰り返し、幸子のヒーローを装っていたという衝撃の学園サイコ・ラブストーリー。(modelpress編集部)
山田裕貴 プロフィール
1990年9月18日生まれ。愛知県出身。2011年ドラマ「海賊戦隊ゴーカイジャー」で俳優デビュー。近年の主な出演作には映画『あゝ、荒野』『万引き家族』、『あの頃、君を追いかけた』(主演)、ドラマでは『健康で文化的な最低限度の生活』、『ホリデイラブ』、『HiGH&LOW』シリーズ、『特捜9』シリーズ、連続テレビ小説『なつぞら』など。舞台『終わりのない』では主演を務めた。今後の待機作に映画「嘘八百 京町ロワイヤル」(2020年1月31日公開)、映画『燃えよ剣』(2020年5月22日公開)など。「第74回文化庁芸術祭賞」演劇部門新人賞を受賞。
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