三谷幸喜作品の“名バイプレーヤー”近藤芳正「ドス黒いものが自分の中にあった」複雑な過去を語る モデルプレスインタビュー
2015.10.01 09:00
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俳優の近藤芳正(54)が、劇作家の三谷幸喜との出会いや過去について語った。
三谷作品ではおなじみの名バイプレーヤーとして、テレビドラマや舞台劇で笑いを届けてきた近藤。そんな彼が、ハードボイルド映画『野良犬はダンスを踊る』(10月10日公開)で長編映画初主演を飾る。今回、近藤が演じるのは、冷血な殺し屋。数十年に渡って血染めの人生を歩んできた男・黒沢を、喜怒哀楽の感情を封印して体現している。コメディリリーフとしてのイメージのある近藤だが、黒沢という殺し屋になりきるのは「簡単だった」という。柔和な表情の後ろにあるダークサイドを覗いてみた。
複雑な青春時代から三谷幸喜との出会いまで
近藤が芝居に触れたのは、15歳の頃に出演したNHK名古屋放送局制作の「中学生日記」(1976)。大人に反抗する中学生を演じたが、偶然にも役柄との心境のリンクがあったという。「当時は両親が離婚した時期でもあって、“自分はここにいていいのだろうか?”という葛藤を抱えていました。世の中に対して理由もなく反抗していたし、罪を犯すのではないかと思うくらいのドス黒いものが自分の中にあった」と複雑な思いを抱えていた青春時代を振り返る。プライベートでは「人見知りで、人とコミュニケーションをとることに苦労していた」そうだが「役を通してコミュニケーションをとれることが楽しかったし、番組のディレクターや大人の俳優さんが僕と対等に接してくれた。上手くできれば褒めてくれたし、出来なければ叱咤激励してくれる。そんな中で“自分は必要とされているんだ”と思えるようになった。芝居に出会っていなかったら、とんでもない不良になっていたかもしれない」と演じることが彼に変化をもたらし、いつしか生き甲斐に変わっていった。
俳優を目指して上京後、劇団員として23歳で初舞台を踏む。「自分には個性がある。役者としてのキャラクター性を意図的に確立できればいけるはず」との思いで20代を走り抜けたが、30代を目前に、限界を感じることになる。しかし時を同じくして運命の人と出会う。劇団「東京サンシャインボーイズ」を率いていた、劇作家の三谷幸喜だ。その才能に触れて「俳優として食えなくても、バイトをしながら年に2、3回自分の好きな芝居をやれればそれでいい」と肩の力が抜けた途端、風向きが変わってきた。三谷がテレビドラマの脚本家として注目されると同時に、近藤にも俳優としての仕事が舞い込むようになってくる。
初主演映画で新境地へ
順調にキャリアを重ね、今では名バイプレーヤーとしてテレビドラマ、映画、舞台と活躍中。芸能生活40周年を目前に、『野良犬はダンスを踊る』で長編映画初主演を飾った。「おめでとうと言われたのは、『笑っていいとも!』のテレフォンショッキングに出たときと、大河ドラマと朝ドラに出たとき以来くらい」と笑い飛ばすが「50代になって、いい意味で緊張しなくなった。様々な経験を積んで、余裕が生まれた」と満を持しての大役に手応え十分。初の殺し屋役にも思いは深く「芝居という“ごっこ”の中で様々な役を演じ、暗い感情のようなものは消えていったけれど、基本的に自分は明るい人じゃないし、内面的にも大人しい人間。コメディ作も好きですが、普段は黙って人間観察をするようなタイプ。だからこそ黒沢という役には、何も作らずに入れた」と共感を寄せる。映画初主演、初のハードボイルド、初の濡れ場挑戦と、54歳にしての新境地開拓は、近藤に演じる原点を思い出させたのかもしれない。(modelpress編集部)
近藤芳正(こんどう・よしまさ)プロフィール
生年月日:1961年8月13日出身地:愛知県
身長:171cm
1976年から1978年まで『中学生日記』に出演。23歳の頃に初舞台を踏んで以来、舞台で活躍し、そうした縁から三谷幸喜氏の『12人の優しい日本人』『ラヂオの時間』『THE 有頂天ホテル』『みんなのいえ』などに出演。名バイプレーヤーとして存在感を発揮した。2015年10月公開の『野良犬はダンスを踊る』で長編映画初主演を飾る。
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