小室哲哉、globe20周年の“真実” 過去の葛藤と「FACES PLACES」の意味を初告白 モデルプレスインタビュー
2015.08.05 11:30
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小室哲哉がプロデュースし、KEIKOがボーカル、マーク・パンサーがラップを担当する3人組ユニットglobeが今年8月9日にデビュー20周年を迎える。1995年のデビュー後、ダブルミリオンを記録した「DEPARTURES」など多数のメガヒットシングルを世に送り出す。特に1996年にリリースした1stアルバム「globe」は出荷枚数455万枚を記録し、当時の日本記録を樹立した。20年間でまだ語られていなかった“globeの真実”。今回、モデルプレスではglobeのプロデューサーで、自身もメンバーとしてキーボード・ギター・コーラスを担当する小室哲哉にインタビューを行い、この20年を振り返ってもらった。
デビュー秘話とglobeの立ち位置
― globeのデビュー曲は、謎のアーティストとして先行してドラマの主題歌になり、ジャケット写真も顔が出ていなかったので、誰が歌っているのかもわからず話題になりましたね。その後開催されたライブ「avex dance Matrix '95 TK DANCE CAMP」にてパブリックでの初お披露目となりましたが、当時の秘話をお聞かせください。小室:KEIKOとマークの歌唱力はすごくプロフェッショナルだったので、2人がこの世界に慣れるまでという理由で、誰が歌っているのか公表しませんでした。マークは子供の頃から(モデルとして)この世界に入っていたけど、KEIKOは全く知らない世界だったので、ボーカルで主役を張ってもらわなくてはいけないということで正式なお披露目のタイミングを見計らっていました。初ライブですらテスト段階という感覚だったと思います。本当の意味でのお披露目は、デビューした年の年末に出演した音楽番組「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)で「DEPARTURES」(4thシングル)を歌った時ですね。
― 1995年は、globeとして活動しながらも、trfや安室奈美恵さん、華原朋美さんらをプロデュースするなど、様々なプロジェクトを同時進行されていたと思います。その中で、ご自身がglobeに加入しようと思った理由などをお聞かせください。
小室:今でいう拡散をしたかったんです。自分でなんとかしたくて。trfから始まり、安室さんや華原さん、hitomiさんがいたり。globeで1人拡散というより、いろんな方法で埋めていかないとと思っていました。
カルチャーやブームのようにみんなが盛り上がっていくものを作るとき、僕が最初の案内人になろうと思っていたので、globeは2人が慣れてきたら、メンバーを抜けようと考えていました。trfも最初は僕も入っていましたが、大丈夫だなと思ったら引いたり、篠原(涼子)さんや華原さんたちの後ろで楽器を弾いたり、そういうサポートをしていて、独り立ちしていってもらっていました。
― 最初はglobeも自分がメンバーから抜けるという想定をしていたんですね。
小室:最初はありましたけど、マークの影響でKEIKOもロックが大好きになっていて、そこに新たなメンバーを入れるのは難しいなと感じ、僕がいることにしました。2人と違い、ピチピチしていないというか落ち着いたメンバーがいた方が重みがあるグループになるなと思いました。
― TM NETWORKで”3人組ユニット”を世の中に確立されたと思います。globeというグループを自身もメンバーとして、また3人組でやるというのは小室さんにとってもすごい決断をしたんだなと当時思いました。
小室:どこかで使命感がありましたね。勢いがあって止まらなかった。そこで新人ということでコケるわけにはいかないと思って、自分のTMの経験と、立ち位置などを含めて、やらざるを得ないという決意。あとは付随してくるライブ。2人で1~2時間できるのかあやしくて、音楽的なところはまだまだだなと思っていたので自分もメンバーに入るということになりましたね。
― 1997年には、前代未聞の大阪、福岡、名古屋、東京4大ドームツアー「globe@4_domes」を行っていましたね。B'zやMr.Childrenも同時期にドームツアーをしていましたが、意識していたところはありましたか?
小室:B'zはTM時代に(松本孝弘がサポートメンバーとして)一緒にやっていたので、ライバルという感覚はあまりないんですよね。その時、いい意味でミスチルがいてくれましたね。お互いが「こんなセットを使っていたよ」「こんな演出をしていたよ」などと水面下で情報合戦していたと思いますね。
― 小室さんと言えば、TM時代から最新機材で観客の度肝を抜くようなライブ演出をされることで有名でしたが、globeのライブ演出のプレッシャーなどはありましたか?
小室:ロックがずっと好きで、ピンク・フロイドやU2など、自分たちはダンスはしませんが、すごいセットを見てきたので、プレッシャーとかそういうのはあんまりなかったですね。
最初のドームツアーはZOO TVやU2などを参考にしましたし、そのあとの「リレーション」もピンク・フロイドなどを参考にしていました。これまで、いろいろなライブを見てきたので、アイデアが枯渇することはなかったです。ただ、trfは僕が演出していましたが、とにかくメンバーをいかに魅力的に見せれるか、特に女性ですよね。彼女たちを世の女性が憧れる存在となっているのか、ファッションを含め、安室ちゃん(安室奈美恵)や朋ちゃん(華原朋美)もそうですが、それぞれのブランドカラーを考えました。
― 当時のKEIKOさんはどのような立ち位置でしたか?
小室:KEIKOは最初はグウェン(ステファニー)を意識しました。ロサンゼルスで言ったらメルローズやサンセットのような匂いがするところを求めていましたね。
行ったり来たりの感情の揺れを詞に書いてきた
― 多くの女性はglobeの歌詞や世界観に憧れていたと思います。小室:僕は1人の女性の全く見えない孤独を歌詞にしてきたつもりです。胸を撫で下ろしたとき、ふと1人になったとき、そういう部分はみんな持っていると思います。すべての女性が男性を頼りにしていないとか、そういうのではなく、なるべく自覚して自立しているんだけど、けっこうキツイなというギリギリの女性像をどこかで書きたかったんです。それが、すべての楽曲に当てはまるわけじゃないのですが、ほんの1行2行の歌詞に“貫きたいけど揺らぐ”“揺らいでいるけど貫く”みたいな、行ったり来たりの感情の揺れを書いてきました。みんなそこの葛藤と共に生きている。そういう生活をしていることを伝えたかったんです。
― 具体的な楽曲を挙げるとしたら?
小室:安室さんの「SWEET 19 BLUES」。少し若い方向けかもしれませんが、いろんな意味で17歳か18歳くらいで大人の感覚を持ち始めて、でも、成人式はまだなわけで。冒頭から最後まで全部通して、その世代のいろんな女の子の気持ちを書いたつもりです。
globeで挙げるとしたら、どこかでKEIKOとも被っているところもあります。1人の芯の強い女性という意味で。「DEPARTURES」と思いきやそうでもなく、初期だとやっぱり「FACE」「FACES PLACES」とかになってくると思います。後期だと「Many Classic Moments」「Judgement」。その辺の歌詞は、今の若い方たちでも共感できるところはあると思います。
小室哲哉の人生を歌った名曲「FACES PLACES」の年号の意味を初告白
― ファンの間では「FACES PLACES」の歌詞の年号は、小室さんの人生を歌っていると話題になっていますが、本当の意味を教えていただけませんか?小室:そうですね。僕の代わりにKEIKOが歌ってくれた曲です。年号は自分の人生にとって大事な年ですね。
・1970年:大阪万博
・1981年:SPEEDWAYに加入し、僕のプロが始まったとき
・1984年:TM NETWORKデビュー
・1994年:TMN(TM NETWORK)終了。自分のプロデュースワークの始まり
・1997年:精神的なスイッチングの年
1997年は、なんとなくですけど、自分のブームやエネルギーがそろそろなくなっていく焦燥感があったときです。自分がちょっと疲れちゃったな、次の人が出てくるな、そろそろ出てきてくれるんじゃないかなというスイッチングの年でもありました。結果、その年の後もずっとヒットを続けさせてもらえたのですが、その時はそういう気持ちでした。2005年に、「In 2005」と歌い替えたのは、iTunesの配信が始まり、次のソーシャルの時代が確実に来ると感じたからです。大阪万博が来たときと似ていると思いました。もしKEIKOが歌えていたら、2015年を入れていたかもしれませんね。
「僕が頑張らなくちゃいけない」
― globe15周年だった2010年から20周年を迎える今年までの期間、TM NETWORK30周年として制作やライブなどの精力的な活動がありましたね。ただ、2011年にKEIKOさんが闘病生活を送ることになってしまったり、2013年にはTMのボーカル宇都宮隆さんが入院、小室さん自身も“C型肝炎”との闘病もありました。小室さんの音楽人生にとっても最も大切な人達がそういう事態になって、昔は当たり前に活動できたていたことができなくなる、楽曲制作ができなくなるという葛藤、苦労もあったのではないかと思いました。それでも意欲的な作品発表やライブ活動をする小室さんを見ていて、今回のアルバム「Remode 1」というタイトルを一番最初に聞いた時に”シフトチェンジ”というコンセプトを勝手にイメージしてしまいました(本当は”着せ替える”というコンセプト)。小室さん自身、この5年間で人生観が変化したというような想いはありましたか?
小室:僕が頑張らなくちゃいけないことがたくさんあるなと思いました。自分の甘さとかも含めて、いろんなことが折り重なってしまって。TMのウツ(宇都宮隆)の場合は、本当にもうライブは難しいかと思ったんですけど、奇跡的に回復してくれてホッとして、なんとかこの3年間活動してきました。KEIKOも、くも膜下出血を発症してから3年になるんですけど、定期的に医療的なリハビリをやってきていて、確実に良くなっています。
あらためて、自分が作った楽曲が残っていなかったら、今こうやってやらせていただくこともなかったと思います。こんなにもたくさんの方に影響を与えていたんだなと、改めてみなさんから教えていただいています。先日も、名古屋のフェスにDJとして出演したのですが、ファンの方から「写真いいですか?」と言われ、「僕でよければいくらでも一緒に撮ろうよ」と思いました。握手とかもそうですし、時間があれば、話も聞きたいと思っています。そういうことって全部楽曲がなければ、あり得ないコミュニケーションだなと思うようになりましたね。
小室哲哉にとって“ロンドン”とは?
globeとして、8月5日には20周年を記念して2枚組アルバム「Remode 1」をリリース。同アルバムは、東京からロンドンに拠点を移し制作されたという。ロンドンのスタジオは、これまでTHE ROLLING STONES、QUEEN、LED ZEPPELINなど、数々の偉大なアーティストの作品がレコーディングされた、歴史のある場所。メンバーのマークも渡英、新たにラップパートをレコーディングするなど、久しぶりに小室・マーク揃ってスタジオワークを行っていた。
― 小室さんにとってロンドンはどのような場所ですか?
小室:ロサンゼルスやニューヨークも長い期間滞在して見てきたのですが、はしゃぎ具合がハリウッドやロスだと元気過ぎるんですよね(笑)。もちろん、静かなときもありますが、ちょっとフリーキーなところがあったり。あとは、東側になると、ハイソなイメージがあって、そういうところに全てをかけているような。
今年に入ってから3回ほど行っているのですが、王室があってどこかで抑えているようなロンドンの感覚が日本人に合っているような気がします。ロンドンの1番ショップが多い場所が東京やアメ村に似ているなと。イコール楽なんですよね。そんなに馴染もうとしなくても大丈夫ですし、ヨーロッパで珍しく英語しか話せないところもいいですよね。音楽の発信力やイノベーションは未だにはるかに日本との差がありますが。
それに、王室があるからなんでしょうけど、ジェントルです。レディファーストという言葉はここから生まれたんじゃないかというくらい紳士的。日本の女性が行ったら、イギリスの男性はめちゃくちゃモテると思います。その分、女性が怖いかな(笑)。ちょっと付いていけないくらい、すごく元気なんですよね。
― 「Remode 1」のロンドン制作はいかがでしたか?
小室:昨年の秋に、「ULTRA JAPAN」に出演していたDJの方たちと翌日スタジオで一緒になったんですよ。そのとき彼らの意見を聞いて、TMをやりながらですけど、globeを始めたらヨーロッパにしよう、特にロンドンにしようと思っていました。
多くの方たちに聞いてもらえるという意味では良いチャンスだと思うので、ロンドンのEDMとまではいきませんが、リアレンジしました。でもやっぱり、KEIKOとマークのボーカルの力は改めてすごいなと感じることができました。
― 20曲セレクションするのは大変だったんじゃないですか?
小室:20周年なので、20曲にしようと思ったのですが、結構大変でした。その曲を聞いて当時の良いことや、辛いことを思い出す人もいると思うのですが、その思いを崩してはいけないけど、新しい音もほしくて。今まで1番、クリエイターという意味では苦労しました。
― 小室さんの人生を歌っている「FACES PLACES」についてはいかがですか?
小室:今のモードに着せ替えなくてはいけませんが、あのエネルギーを壊すのもいけない。結果、ジョン・レノンの「イマジン」を連想して、「FACES PLACES」の基本理念みたいな“ラブ&ピース”を大切にしたダンスミュージックになれたんじゃないかなと思います。
小室哲哉が考える“夢を叶える秘訣”とは
― この20年で私たちの想像のつかないほど、数多くの経験をしてきた小室さんですが、いま夢を追いかけているモデルプレス読者に向けて夢を叶える秘訣を教えてください。
小室:やり方は一つではないと思います。僕の場合はすごくしたいことも嬉しいことも、自分の中で秘めています。性格もありますけど、怖がりなところもあって、辛いことも秘めています。もしかしたら先ほど話した歌詞の女性像とかぶってくるのかもしれません。
自分の中で秘めて、自分と戦う。夢を持って、自分に勝たなくちゃいけない。
言って広げてしまっても、自分でどうにかしなくてはいけないので、秘めておくことが大事な気がします。仕方なく見える人に見えてしまってもいいし、絶対に隠さなくてはいけないわけではないのですが、基本的には自分の中での戦い。それが葛藤という言葉でもいいのですが、そういうことをしながら戦っていくのが、目標に辿り着ける道なんじゃないかなと思い、僕自身はやってきました。
これまで活動してきて、誰かにポジションを提供するのも自分の中で見つけてきました。自分の中で鏡を見て、自分を投影して、あー違うかな、自分に負けているな、などと感じながら。鏡って本当に大事だと思います。鏡って好きなワードなんですけど、なるべく見た方がいい。ナルシストとかそういうわけではなく、女性は1日に何百回も見て自分と向き合った方がいいと思います。
― 貴重なお言葉、ありがとうございます。
日本の音楽シーンを牽引し、日本音楽の歴史を刻んできた小室哲哉。今もなお、色褪せることなく、私たちの胸に刺さる音楽を発信しながら「音楽はすごい力を持っているんだと思いました」とこの20周年を振り返り、実感として言葉にしていた。
ついに20周年のスタートを切るglobe。この1年どのようなパフォーマンスを見せてくれるのか。モデルプレスでは、この後も“globe20周年”に密着していく。(modelpress編集部)
2枚組アルバム「Remode 1」
発売日:2015年8月5日<Disc1>
1.Many Classic Moments
2.FACE
3.You are the one
4.Love again
5.Judgement
6.UNDER Your Sky
7.Shine on you
8.Wanderin’ Destiny
9.SWEET PAIN
10.FACES PLACES
<Disc2>
11.wanna Be A Dreammaker
12.SHIFT
13.garden
14.OVER THE RAINBOW
15.on the way to YOU
16.楽園の嘘
17.FREEDOM
18.Anytime smokin’ cigarette
19.still growin’ up
20.Is this love
小室哲哉(こむろてつや)プロフィール
生年月日:1958年11月27日出身地:東京都
音楽家、音楽プロデューサー、作詞家、作曲家、編曲家、キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、ミキシングエンジニア、DJなど幅広く活躍。83年、宇都宮隆、木根尚登とTM NETWORK(のちのTMN)を結成、84年「金曜日のライオン」でデビュー。同ユニットのリーダーとして、その音楽的才能を開花させる。86年、渡辺美里への提供曲「My Revolution」がヒットし作曲家として注目を浴びる。87年、TM NETWORK「GET WILD」が大ヒットし一躍人気ユニットに。93年にtrfを手がけたことがきっかけで、一気にプロデューサーとしてブレイク。以後、篠原涼子、安室奈美恵、華原朋美、H Jungle With t、今年デビュー20周年を迎えるglobeなど、自身が手がけたアーティストが次々にミリオンヒット。2010年からは作曲家としての活動を再開。AAA、森進一、北乃きい、超新星、SMAP、浜崎あゆみなど幅広いアーティストに楽曲を提供している。
globe(グローブ)プロフィール
新人女性オーディションで選ばれたボーカル・KEIKO、フランス人の父親と日本人の母親を持つ日仏ハーフのラッパー・MARC PANTHER、TMNプロジェクト終了後、数々のプロデュースワークを手掛けてきた音楽プロデューサー・小室哲哉が自らメンバーとして参加するユニット。1995年8月9日、シングル「Feel Like dance」でデビュー。1997年3月、日本初の4大ドームでのコンサートツアーを成功させる。1998年3月31日に3rdアルバム「Love again」をリリース、アルバム3タイトルでの売上が1,000万枚を突破、デビューから史上最短記録を作る。年末には「wanna Be A Dreammaker」が日本レコード大賞を受賞する。
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