【渡邊渚インタビュー】精神疾患で突きつけられた偏見、トラウマと向き合う治療の辛さ「1番嫌なところを永遠に何度も何度も」<Vol.1>
2025.02.06 06:00
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元フジテレビアナウンサーで現在フリーになって活動する渡邊渚(わたなべ・なぎさ/27)が、1月29日に初のフォトエッセイ「透明を満たす」(講談社)を発売した。モデルプレスではインタビューを実施し、彼女がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を患ってから周りに決めつけられてしまった苦しみや、トラウマと正面から向き合わなければいけなかった治療について聞いた。【インタビューVol.1】
渡邊渚フォトエッセイ「透明を満たす」
本作はフリーランスとして新たなスタートを切ったばかりの渡邊による、50,000字を超える書き下ろしの長編エッセイに加え、新境地を感じさせる充実のフォトパートで構成される。エッセイでは、アナウンサー時代の苦悩からPTSDを患った後の壮絶な入院生活、治療を経て前向きに歩めるようになるまでが詳細につづられている。渡邊渚「PTSDだから〇〇できない」という押しつけ
― エッセイを拝見して「アナウンサーは常に完璧でなければいけない」という意識が渡邊さんを苦しめていたのだと知りました。他にもPTSDを患ってから「こんな言葉を投げかけられて辛かった」「こうでなければという意識に苦しめられた」といったことはございましたか?渡邊:いっぱいありますね。自分自身も当初は世間体を気にすることがありましたし、休職している時間が長くなればなるにつれて、自分が社会とどんどん距離を置いていかれているような気がして、自分がない存在みたいになってしまう苦しさもありました。それもやっと越えたかなと思っても引き戻される。PTSDは結構アップダウンの波があって、今でも完治したとは言えないと思っているんです。今はなんとなくそのアップダウンをコントロールできるようになってきて状態がいいというだけで、人間には100パーセントはなくて、またちょっとしたきっかけでマイナスの方に行ってしまうこともあると思いますし、振り回されてしまう自分がいなくはないので、そういう苦しさもあります。
自分がPTSDになってみると、世間からそういった精神疾患に対するイメージについて、偏見を持たれていることが結構あるのだと気づきました。それこそ「PTSDだからグラビアできないだろう」「普通だったら露出することなんてできないだろう」と言われますが、もう1年半も治療をしてきましたし、元々グラビア撮影の経験もあるということもあって、できないということはないというか。こういった「PTSDだから〇〇できない」「精神疾患だから〇〇できない」といった間違ったレッテルをすごく感じたので、それは私がこれから働いていく中で、世間に訴えていく中で変えていきたい認識だと思います。
― 精神疾患への理解が足りていないと気づかれたんですね。
渡邊:精神科という科目に対しても、世間一般の方たちは距離を置きたがりますよね。本来であれば、少し体調が悪いとなったら病院に行くのは当たり前なのに、なぜか精神的な問題で心療内科や精神科、メンタルクリニックだけは皆さん行きたがらない。「そこに行ったら終わり」と思っている方、「精神疾患になったらおしまいだ」と言ってくる方もいました。でも決しておしまいじゃない。そこで人生が止まってしまうわけではないと思っています。受診する時も、最初は精神科を選べばいいのか、それとも心療内科に行けばいいのか、メンタルクリニックに行けばいいのか。この3つの名前で「自分はどこに行けばいいんだろう」「この違いってなんだろう」とまず迷うところから皆さんも始まると思うんです。なかなか予約が取れないという現状もあるし、私が受けた「持続エクスポージャー療法(PE)」というのは保険の範囲が少し狭くて結構高額だったので、踏み入れるのに少しハードルが高く見えてしまう診療科目なのかなとは思います。
渡邊渚「1番嫌なところを永遠に何度も何度も話す」PTSD治療の苦しみ
― トラウマをどのように克服していったか、10数回のカウンセリングについてかなり詳細な手順も書かれていました。1番辛かった課題は何でしょうか?渡邊:持続エクスポージャー療法の中に、現実エクスポージャー(回避している状況や対象に向き合うもの)と想像エクスポージャー(トラウマ記憶について当時の感情を思い出しながら話すもの)というのがあって、想像エクスポージャーの方が大変でした。トラウマになった出来事が起こった時に立ち返って、カウンセラーさんに引き出してもらいながら、目をつぶって話すんです。「どういう順序で何が起こって、その時自分がどう思って」という感情への理解を深めていくのですが、自分の中では、貼り付けていたかさぶたを1回剥がして消毒し直すみたいな感覚ですごく痛いし、自分からしたら口にも出したくないトラウマのことを、わざわざ人に自分の口で音にして発しなければいけないのが最初は辛かったです。また、その治療がどんどん進んでいくと「ホットスポット」と呼ばれるトラウマの中でも1番嫌なところを永遠に何度も何度も話す治療があって、それが1番しんどかったです。
― 治療が進んでいくにつれ、辛さも増していくのでしょうか。
渡邊:辛いですが、だんだん慣れて順化するというか、話すことに対しても嫌なものではなくなってくるし、話していくことで、自分の中の記憶も整理されて、あの時どんな気持ちだったのか理解が深まることで、もちろんその経験は嫌なことではありますが、語ることを避けるようにはならなくなっていきました。
― 少しずつ話せるようになっていったのですね。そういったトラウマと向き合わなければいけない治療を始めるのは、かなり勇気がいることだったのではないかと思いました。
渡邊:最初は嫌でした。だってもう確実に辛いと分かっているんですもん。時々今でも、精神科の主治医の先生に「もう全部忘れられる薬はないですか?全部記憶をリセットする、何にも考えなくて済むような薬とかはないですか?」と聞いて「うん、ないです」と言われてしまうんですけど…(笑)。嫌な記憶を反芻しなければいけないのは目に見えて辛いですし、お金もかかりますし。
― 「高額な治療費を払うなら絶対に良くならないといけない」という気持ちで続けられたとも書かれていましたよね。
渡邊:高いですし、予約も取りづらくて。ただ高いと思っている値段は、きっとカウンセラーさんたちからしたら当然な値段だと思うんです。国家資格を持っている方たちがやっているものですから当然妥当な金額なんですが、保険が効く範囲が限られているので、受ける側も大変だし、治療する側も大変だと思います。
Vol.2では「確実に辛いと分かっている」というほど苦しい持続エクスポージャー治療をなぜ始めることができたのか、入院中から更新しているSNSに寄せられる声とも向き合う彼女の強さの理由が見えてきた。(modelpress編集部)
渡邊渚(わたなべ・なぎさ)プロフィール
渡邊は1997年4月13日生まれ、慶應義塾大学を卒業後、2020年にフジテレビ入社。2023年7月より体調不良で入院するため休養することを発表、2024年8月31日に同局を退社した。同年10月1日にPTSDを患っていたことを公表している。現在、Webサイトでのエッセイ執筆やモデル業、これまでの経験や知識を生かしたバレーボール関連のMC業など、アナウンサーという肩書きを離れて多様な働き方を実践している。
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