牛乳は体に悪い? 脂肪分が脳卒中リスクと関係も……牛乳の種類による違い・選び方
【医師が解説】牛乳は栄養豊富な飲み物ですが、脂肪分には少し注意が必要そうです。普通の牛乳(全脂牛乳)は、心疾患リスクを下げる一方、脳卒中リスクを高める可能性があります。健康にいい牛乳の選び方を考えてみましょう。(※画像:amanaimages)
牛乳は、タンパク質、脂肪、カルシウムなどのミネラル、ビタミンといったさまざまな栄養素を豊富に含みます。健康にいい飲み物として、日常的に飲んでいる方も多いでしょう。
一方で、牛乳には脂肪分が多く含まれていることから、「心臓や血管に悪影響を与えるのではないか」という指摘もあります。
今回は、牛乳に含まれる脂肪の量が心血管疾患にどのような影響を与えているのかを研究した論文から、「牛乳の種類と選び方」を考えてみたいと思います。
牛乳の体への影響……「心疾患リスクは低下、脳卒中リスクは上昇」の可能性
本研究は、中国・重慶医科大学附属第一医院心臓病学のJiacan Wu氏らによるもので、栄養学・食品科学分野の専門誌『Nutricin Hospitalaria』に2025年9月に報告されました。なお、研究デザインは「観察研究」であり、まだ因果関係を直接示すものではない点には、留意が必要です。
この最新論文では、牛乳の脂肪含有率が、心血管疾患リスクを大きく左右する可能性が示唆されました。「脂肪が多い牛乳は体に悪い」「脂肪が少ない牛乳は体によい」といった単純な話ではありません。一般的に飲まれる牛乳(乳脂肪分3.0%以上)は、心疾患(冠動脈疾患)のリスクを42%下げる一方で、脳卒中のリスクを58%上げる可能性があることが明らかになりました。
この結果から、乳製品の摂取においては、食事全体における脂肪の質や量、個人の代謝特性、生活習慣、既往歴など、複数の要因を考慮する必要があると分かります。
アメリカ国民健康栄養調査(NHANES)による解析:牛乳と心血管疾患の関係は?
1. 研究の背景と目的
牛乳の摂取が心血管疾患の予防につながるのか、それともリスクを高めるのかについては、これまでにも複数の研究が行われてきました。しかし、結果は必ずしも一致せず、明確な結論は出ていません。
その理由の1つとして、牛乳の脂肪含有量の違いが挙げられます。牛乳には、牛乳(乳脂肪分3.0%以上)、低脂肪牛乳(乳脂肪分0.5%以上1.5%未満)、無脂肪牛乳(乳脂肪分0.5%未満)など、さまざまなタイプがあります。しかし研究ごとに対象者の生活習慣や食事内容、牛乳の種類が統一されていないため、結果にばらつきが生じていると考えられているのです。
この研究の目的は、牛乳の脂肪含有量に注目し、それぞれのタイプの牛乳の摂取が心血管疾患とどのように関連しているのかを明らかにすることでした。
2. 研究の方法
研究チームは、アメリカ国民健康栄養調査(NHANES)という大規模な公的データベースを用い、2003年から2018年までの調査に参加した18歳以上の成人1万8282人(男性9017人、女性9265人)を対象に解析を行いました。
対象者は、日常的に飲んでいる牛乳の種類を自己申告し、その内容に基づいて以下の4群に分類されました。
・全脂肪(脂肪含有量 約3.5%)
・減脂肪(約2.5%)
・低脂肪(約1%)
・無脂肪(0.5%未満)
さらに、質問票を用いて心疾患(心筋梗塞、狭心症など)や脳卒中の既往歴を確認しました。年齢、性別、喫煙、飲酒、運動習慣、食事内容など、心血管疾患に影響を与える可能性のある因子について統計的に調整したうえで解析が行われています。
3. 研究の結果
解析の結果、全脂肪牛乳を飲んでいた人は、無脂肪牛乳を飲んでいた人と比較して、心疾患(冠動脈疾患)の既往が少ないことが示されました。全脂肪牛乳を飲む人では、心疾患を持つ確率が42%低く(OR=0.582、95%CI:0.4180.810)、一方で脳卒中については、全脂肪牛乳の摂取と正の関連が認められ、脳卒中を経験した割合が58%高い(OR=1.586、95%CI:1.0232.457)という結果でした。
これらの傾向は、サブグループ解析や感度解析を行っても大きく変わらず、全脂肪牛乳は心疾患リスク低下と、脳卒中リスク上昇の両面と関連していることが研究を通して観察されました。
栄養豊富な牛乳、どう飲むかを考えることも大切
牛乳には、タンパク質、脂肪、カルシウムなどのミネラル、ビタミンが豊富に含まれています。また、成長期の子どもはカルシウムが不足しがちなことが知られています。サプリメントもありますが、あくまで食事で不足しがちな栄養を補うものです。基本は、バランスのとれた食事を大切にするようにしましょう。
牛乳は、子どもだけでなく大人にとっても身近で重要な栄養源となります。ただし、摂取量や牛乳の種類については、自身の体質や病歴に応じて見直すことが求められます。どれほど健康によいとされる食品でも、過剰摂取は問題です。
今回の研究は、日常的に飲まれている牛乳が健康に与える影響を、改めて考えるきっかけを与えてくれるものと言えるでしょう。
■参考文献
Jiacan Wu, Yuan Yang,Xuanrui Lin ,et al.Fat content determines the association between milk consumption and cardiovascular disease: Analysis of the NHANES from 2003-2018.Nutr Hosp.2025 Sep 25.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41021354/
小児神経学・児童精神科を専門とする小児科医・救急救命士。プライベートでは4児の父。子どもの心と脳に寄り添う豊富な臨床経験を活かし、幅広い医療情報を発信中。
執筆者:秋谷 進(医師)
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