プロ級インドカリーが作れる!新宿中村屋に聞いたレシピと誕生秘話|愛されグルメのふるさと #8

2021.07.21 12:00

身近な定番料理の発祥店を訪れて、誕生秘話やおいしさの秘密を探る本連載。第8弾はインドカレー。本場インドのカレーを日本で初めて提供した「新宿中村屋」に、インドカリーが誕生した歴史と、家庭でおいしく作るコツを教えてもらいました。

日本のインドカレーのルーツ「新宿中村屋」に聞いた、おいしく作るコツと誕生秘話

日本人に親しみのあるカレーは、カレー粉と小麦粉を使った、とろみの強いタイプですよね。一方、本場インドではさまざまなスパイスを使い、さらりとした口当たりのカレーが一般的。

そんなインドカレーを日本ではじめて提供したのが、「新宿中村屋」なのです。前回の記事はこちら▼

これがメイドインジャパンの元祖インドカリー!

明治時代にパン屋として創業した中村屋。時代とともに、洋菓子、中華まんじゅうなど、さまざまなメニューを提供してきました。

中村屋では創業時から、カレーではなく「カリー」と呼んでいる(本記事でも、以降「カリー」と表記)

そんな中村屋を代表するメニューといえば、「中村屋純印度式カリー」(税込1,760円)。

テーブルに運ばれてくると、あたりがカリーのいい香りに包まれます。まるで食欲を刺激してくれるアロマのよう。銀のグレイビーボートに入っているカリーが、高級感を漂わせます。 中にはゴロっと大きな骨付き肉とジャガイモがたっぷり。お肉はすべての部位を煮込んでいるので、どこの部位が入っているかはお楽しみです。

ご飯にソースをたっぷりのせて、アグレッツィ(きゅうりのロシア漬け)、らっきょう、マンゴーチャツネ、粉チーズなど6種類の薬味をお好みでかけていただきます。 タマネギの濃厚な甘み、バターのコク、香り高いスパイスで、どこまでも奥深い味わい。一般的なインドカリーよりとろみがあるのはタマネギのおかげで、なめらかなルーのなかにほどよい粒感があります。

スパイスカリーでありながら、日本人も食べやすいおいしさです。

料理長直伝!「純印度式インドカリー」の作り方とおいしく作るコツ

そんな中村屋のインドカリー、家庭で再現できたら嬉しいですよね。この門外不出ともいえる材料とレシピ、なんと中村屋のウェブサイトで丁寧な動画とあわせて公開されています。なんて太っ腹!

このレシピを元に、よりおいしく作るためのコツを、料理長の石崎さんに聞きました。

新宿中村屋 料理長 石崎さん

「カリーはスパイス料理なので、スパイスが活かされる作り方が大切。基本の作り方は以下の通りです。

油、バターにスパイスを入れて香りを付けてから、タマネギをあめ色になるまで炒めます。鶏肉や野菜などの食材を入れて、さらに中間のスパイスを加え、素材にスパイスの香りや辛味付けをします。

煮込んだあと、最後にまたスパイスを入れて香り付けをして仕上げます」

ここがポイント!インドカリーをおいしく作るコツ

1. 材料は、あらかじめ分量を計って準備しておく

「当たり前のことですが、使う材料の分量を計って、すぐに使えるようにしておくこと。途中で分量を計ったり、切ったりしていると、手際が悪くなります。おいしいカリーを作るためには欠かせないポイントです」

2. 粗めに切ったタマネギをじっくり炒める

「味の決め手の半分以上を占めるのが、タマネギ。粗めにカットして、中火くらいでじっくり炒めるのが甘みを出すコツです。

早く火を通そうと細かいみじん切りにしたり、逆に焦がしたくないからと弱火で炒めたりしがちなのですが、細かすぎると甘みがうまく出ず、火加減が弱すぎるとタマネギの水分が飛ばずに水っぽくなってしまうんです」

3. 骨付きの鶏肉を使う

「ご家庭であまり骨付き肉は使わないかもしれませんが、このカリーではぜひ使ってください。骨からダシがしっかり出て、本格的な味になります。タマネギの甘みと骨付き肉の旨味が、中村屋のカリーらしさのポイントなんです」

4. スパイスは、バランスよく配合されたものを使う

「カリーの肝となるのはスパイス。ひとつずつ組み合わせても良いですが、バランスよく調合されたものを用意するとラクです。

カリー粉に関しては、ご家庭で『中村屋純印度式カリー』を再現できるように特別に調合したものを販売しています。細部までこだわってブレンドした商品なので、ご家庭で再現される際には、ぜひ使ってみてください」

新宿中村屋から発売されているオリジナルスパイス「純カリー粉」(465円)

本場のインドカリーが、日本の中村屋で提供されたワケ

こだわりが詰まった「中村屋純印度式カリー」。そもそも、なぜ提供されることになったのか、歴史を覗いてみましょう。 ――なぜ、中村屋でインドカリーが誕生したのでしょうか?

石崎さん(以下、石崎) 中村屋の創業者である相馬夫妻と、インド独立運動で活躍した革命家 ラス・ビハリ・ボースとの出会いが始まりでした。インドから来日していたボースは、日本から国外退去を命じられていたのですが、気の毒に思った相馬夫妻などが、中村屋のアトリエでかくまうようになったのです。

それがきっかけで、ボースは相馬夫妻の娘・俊子と結婚。俊子は早くに亡くなってしまったのですが、その後もボースは中村屋と交流を深めていました。

店内に飾られたラス・ビハリ・ボース氏と妻・俊子氏の写真

当時の日本では、イギリスから伝わった欧風カレーが一般的でした。

ボースはこのカリーがおいしくないと感じていて、「インドの本場の味を広めたい!」と喫茶部(レストラン)の開設とともにインドカリーをメニューに入れよう提案したのです。そうして「中村屋純印度式カリー」が誕生しました。 ――それまで日本でなじみのなかったインドカリーを、どう広めたのですか?

石崎 やはり、はじめはなかなか受け入れられなかったそうです。そのため、「日本人の口に合う本場のインドカリー」を作るため、材料に徹底的にこだわりました。

当時は養鶏場や牧場を保有して、カリーに合う素材を追求していました。お米もそれまでのインディカ米をやめ、米穀研究家に相談してカリーに合う日本米を調査。「白目(しろめ)米」という、将軍に献上されていた高品質な品種を使うようにしたのです。

そうした試行錯誤を経て日本人の好きな味を作り出し、おいしいインドカリーとして受け入れられていきました。 ーー純印度式カリーで、特にこだわっているのはどんなところですか?

石崎 作り方は、誕生当時から変わっていません。こだわっているのは素材ですね。これはインドカリーに限らず、すべてのメニューや商品に言えます。理想を形にするために、こだわって調達や開発、調理などをしています。

また、いつ食べても同じ味であることもモットーのひとつです。当店は常連のお客様も多いので、どんな状況、どんな時間帯であっても、一定の味やサービス、クオリティを保つことを意識しています。ですから、入店状況によって、作るタイミングや炊くお米の量も変えているんです。

良い素材を使って作り、いかにおいしい状態でお客様にお出しするか、それを一番に考えていますね。

「中村屋純印度式カリー」のおいしさを家庭でも!

「カリーは当社の代表商品。長い歴史のなかで、いろいろな試行錯誤があったからこそ、今まで残すことができています。これからも、多くのお客様からの期待を裏切らないよう、新宿中村屋の柱のひとつとして守らねばという使命感がありますね」と石崎さん。

「中村屋純印度式カリー」のおいしさは、素材同士の相性、スパイスの配合など、徹底して考え抜かれたバランスにありました。本場の味を日本人の口に合うようにと研究した、まさに先人たちの努力の賜物。

今日は、いつものカレーをちょっとこだわりのインドカリーに。スパイスと歴史の深みを、じっくり味わってみてください。

撮影・文/島田みゆ今までの連載はこちら▼ 店舗情報

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