【必ず流行る店】繊細な火入れの「牛の藁焼き」は必食!自由が丘の隠れ家イタリアン『スピリト リベロ』
2019.10.21 18:00
「おいしいのは当たり前、“楽しい食事の時間”を一緒につくりたい」
「おいしい店」は世の中にごまんとある一方で、「記憶に残る店」はそう多くない。東京・自由が丘に2019年6月にオープンしたイタリアン『SPIRITO LIBERO(スピリト リベロ)』のオーナーシェフ・佐藤敬さんも、「“おいしい”は食事の要素のひとつ。自分は、食事の楽しさまで提供したい」というが、なによりそう話す本人自身が、お客を笑顔にすることを存分に楽しんでいるのが印象的。
地元・岩手に暮らす母親からピーマンが届けば、親子のストーリーとともに前菜として供し、スマホ片手に注文品を待つ一人客がいれば自ら話しかけ、お客が帰るころには「また来るね」と仲良くなってしまう。オープンハートを地で行く漢なのだ。
▲店名の『SPIRITO LIBERO』は、イタリア語で“自由な精神”という意味。自由気ままな野良猫からインスピレーションを受けたことから、店先にも猫の足跡が。
口いっぱいに広がる香味! ニラの花に彩られた旬の本鰆(ホンサワラ)
ではさっそく、おすすめメニューを紹介していこう。一品目は、肌寒くなるこれからの時季に脂がのる鰆(サワラ)が主役の「藁焼き鰆の炙りカルパッチョとゆり根」(写真上・こちらはハーフサイズ)。藁焼きして燻(いぶ)し、香りをつけた本鰆とともに和えているのは、アンディーブ(チコリ)の新芽と春菊、ゆりの根。鮮度が高いゆりの根は生のまま盛りつけられているので、シャキシャキとした食感が楽しく、噛むたびにユリ科特有の香りが鼻を抜ける。フレッシュなアンディーブ、香り高い春菊、しっとり食感の本鰆といった個性豊かな食材が見事にまとまり、うまみ、風味、酸味ともにベストなバランスを保った一皿であるが、そこに独特のアクセントを加えてくれているのが、トップに散らされたニラの花だ。
「ニラの花は、飾り要素3割、味8割ですね」と佐藤さんが表現する通り、見た目の美しさ以上に、口いっぱいに広がる香味が衝撃を与えてくれる。この花が添えられたことで、全体の味わいがきゅっと引き締まって感じられるのだ。
料理に使う野菜の大半は、「ベジター(野菜人)」として知られる畝田(うねた)謙太郎氏が代表を務める卸会社「ルコラステーション」から取り寄せている。畝田氏が全国から仕入れている有機栽培野菜はどれも滋味豊富で、旬の食材が蓄えたパワーがじんわりと身体に染みていく。鮮度や調理法にこだわった魚や肉との相性もバッチリだ。
コロコロかわいいコロッケの中身は大ぶりのオリーブ、肉、チーズ
続いて紹介するのは、コロンとした形がかわいい「アスコリ風 肉詰めオリーブのコロッケ」(写真上)。「アスコリ」とはイタリア中部の都市名で、大ぶりのグリーンオリーブを使ったこちらのフライは、現地でもよく食されているメニューだそう。
佐藤さんのこだわりは、種を取り除いたオリーブに、合いびき肉と「モルタデラハム」(イタリア・ボローニャの伝統的なソーセージ)をぎっしりと詰めること。さらに、牛乳を原料とする超硬質チーズ「グラナ・パダーノ」もたっぷりと使い、味に深みを出しているのが特徴だ。
2度揚げしてサックリ軽快な衣とは裏腹に、ぎっしりと中身が詰まったコロッケは、はじけんばかりにぷっくりした形状。噛むたびにジューシーなオリーブと肉のうまみがにじみ出てくる。
ソースまで野菜! “野菜を野菜で食べる”バーニャカウダは、野菜の個性に合わせて火入れも調整
続いて紹介するのは、前述したベジター選りすぐりの野菜を種類豊富に楽しめる「ベジター厳選野菜のSpeciale!バーニャカウダとお芋のソース」(写真上)。野菜の種類は時季によって異なるが、この日のプレートには、コリンキー(生食できるカボチャ)、リーキ(ポロネギ)、アンディーブ、赤カラシナ、紫式部(大根)、インゲン、インカのめざめ、バナナピーマン(赤・黄)、アロマニンジン、サラダ白蕪、赤蕪、レンコンの新芽、紫ニンジン、岩手の特大ズッキーニ、ロケットピーマン…と、ざっと数えて16種類もの野菜が鎮座。
それぞれの野菜は、持ち味に合わせて生のままのものもあれば火を通したものもあり、食感も味わいもバラエティ豊かなため、一皿でたっぷりと楽しめる。
野菜の下に敷かれているのは、じゃがいものピューレにほんの少しの生クリームとアンチョビを加えたソース。トッピングされているのは、コロッケにも使われている硬質チーズ「グラナ・パダーノ」だ。野菜×野菜ソースというヘルシーな組み合わせでありながら、野菜本来の濃厚なうまみを実感することができる。
一つひとつの野菜を順番に口に運ぶと、「この野菜ってこんなに甘いんだ」「苦みまで心地いい」と、今まで気づかなかった野菜の魅力に驚かされるはず。
麺の“ブリブリ”食感はインパクト大! 自家製手打ち麺のおいしさをダイレクトに味わえる逸品
さて、お次はパスタメニュー。自家製手打ち麺のおいしさを存分に味わえる「ローマ風 カチョエ・ペペ ―トンナレッリ―」(写真上)は、“麺そのものを堪能するためのメニュー”と言えそうな一品。使用されている「トンナレッリ」はローマでよく食されているパスタ。ギターと同じ弦が張られた「キターラ」という名の道具を使って裁断しており、断面が角張っているのが特徴だ。
麺には、鶏のだしと少量のバターが練り込まれているため、茹でただけでちょうどよい塩加減。固めに茹でたら、茹で汁とともにお皿に盛り、羊乳でつくったハードタイプのチーズ「ペコリーノ・ロマーノ」をかけてさっと混ぜ合わせたら完成だ。
「お客さんから“ローマの大勝軒”と言われます」という佐藤さんの言葉に、「なるほど」と頷けるのは、しっかりとした噛みごたえが楽しめるブリブリとした麺だから。讃岐うどんのように歯ごたえある麺が好きな人には、ぜひとも試してほしい。
繊細な火入れに思わず唸る! 肉のうまみと薫香を逃さず閉じ込めた「熊本あか牛の藁焼き」
最後に紹介するのは、質のいい赤身肉を丁寧に焼き上げた「熊本赤牛ランプ藁焼き」(写真上)。肉にストレスをかけないよう、遠火でじっくりと時間をかけて火入れすることで、ほとんどドリップ(赤く透明な液体)をしたたらせることなく鮮やかなロゼ色に焼きあがるという。また、仕上げに炎をまとわせて焼き色をつけることで、より香ばしく仕上げている。
藁焼きの薫香をまとったあか牛。噛みしめるほどにうまみを含んだエキスが口いっぱいに広がる様も圧巻だ。
肉自体のうまみが強い分、味付けは極々シンプル。オリーブオイルとイギリスの海塩、インドの黒胡椒のみ。添えてあるのは、赤身肉と相性がいいタスマニア産マスタード。大粒のプチプチとした食感と酸味が、凝縮された肉のうまみをぐっと引き出してくれる。
もちろん、料理のおいしさを引き立ててくれるワインも豊富にそろう。イタリア産中心のワインは、いずれも「料理に寄り添う」ことを重視して選んだものだという。
「自分自身食べることが大好きで、飲食業界には人より多くお金を落としてきているほう(笑)。だからこそ、おいしいだけでは記憶に残らないことも実感しています」と佐藤さん。食材や調理法にこだわることは大前提で、きめ細かなサービスや料理説明にいたるまで、「楽しい食事の時間」の要素となる一つひとつのことをとても大事にしている。
とりわけおすすめのメニューの注文が入れば、配膳も担当する佐藤さん。お客さんには、メニューの背景にあるストーリーを伝えながら供するというが、その精神は、自由が丘『Trattoria Cibo(トラットリア チーボ)』で3年にわたって接客に専念した時代に培われたもの。その前後で修業した店では料理人として腕を振るっていただけに、「なぜサービスを?」と疑問が沸くが、その答えは明快。
「やっぱり、現場でお客様の反応を確かめながら経験を積みたかったんです。実際、その経験を通して“料理が持つストーリーをしっかり伝えること”でお客様の感動が増し、より楽しんでいただけることを学べました」(佐藤さん)。
楽しい食事の時間を最大限満喫してほしい。その想いを胸に、そして“自由”に。今日も佐藤さんは、多くのお客を笑顔にし続けている。
撮影:岡崎慶嗣
【メニュー】
・藁焼き鰆の炙りカルパッチョとゆり根 1,400円
※上記メニューのみ、写真はハーフサイズ(700円)です
・アスコリ風 肉詰めオリーブのコロッケ 900円
・ベジター厳選野菜のSpeciale! バーニャカウダとお芋のソース 1,600円
・ローマ風 カチョエ・ペペ ―トンナレッリ― 1,600円
・熊本赤牛ランプ藁焼き 3,600円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
スピリト リベロ
東京都世田谷区奥沢6-31-18 ロカーサ自由が丘1F050-5488-3023(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
ランチ 12:00~15:00
(L.O.13:30)
※ランチ営業がお休みの場合もございますので店舗にご確認ください。
ディナー 18:00~23:00
(L.O.21:30)
木曜日
https://www.instagram.com/takashi_sato1981/
https://r.gnavi.co.jp/116tf7c10000/
この記事の筆者:松本玲子(ライター/音楽家/ナレーター)
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