頑張る人ほど老化する? 「健康のために」が逆効果! アラフォーから避けるべき意外なコト【医師が解説】
【医師が解説】健康やダイエットのためにランニングを始めるのは逆効果? 健康維持や体力向上のメリットがある一方、急激にリスクが高まる落とし穴があると報告されました。分かりやすく解説します。(※画像:amanaimages)
逆効果になることも……健康のために急にランニングを始めるのは危険?
健康診断の結果を見て一念発起し、ランニングを始めようと思っている方はいませんか? もしあなたが40代以降なら、絶対にこの記事に目を通してから始めてください!
「今のだらしない体をなんとかしたい」「健康診断の数値をよくしたい」「将来の病気を未然に防ぎたい」
そのために走り始めるのは、まさに大正解です。ランニングには、心身の健康の向上や脳機能の活性化など、多岐にわたる恩恵があります。
しかし、やり方を間違えるとむしろ「最悪の結果」を招く可能性があることが、デンマーク・オーフス大学の2025年の研究で明らかになりました。最新の知見に基づく、ランニングの注意点と「最適解」をご紹介します。
頑張る気持ちがある人ほど高リスク? ケガを招く「たった1回」の油断
ランニングは手軽に始められる運動の1つですが、リスクも伴います。転倒などの事故がなくても、過度な負荷が原因で、足底腱膜炎やアキレス腱断裂、足の甲や脛の疲労骨折などを起こすことがあります。一時的な療養で回復するものばかりではありません。変形性膝関節症の早期進行が起きると、慢性的に「歩くだけで膝が痛む」状態になるリスクもあります。
また、後述しますが「オーバートレーニング症候群」によって慢性的な疲労感や不眠などのメンタル面の不調を抱えるケースや、酸化ストレスによって老化が加速してしまうことすらあります。
健康維持のためのランニングで最も大切なのは、「無理のない負荷でつづけること」です。ランニングの効果は1回きりでは薄く、継続してこそ恩恵が得られます。最優先事項として考えるべきことは、「いかにケガをせずつづけるか」です。
これまではランニングのケガを防ぐために大切なのは、「1週間の合計距離を急に増やさないこと」だといわれてきました。しかし、約5200人を対象とした最新調査(平均年齢約46歳)によって、その常識は覆されました。
結論として、ケガのリスクに最も直結していたのは「週単位の積み重ね」ではなく、「たった1回のランニングでどれだけ無理をしたか」だったのです。
科学が証明した「走ってはいけない距離」の境界線
研究では、過去30日間で最も長く走った距離を基準に分析がされました。すると、1回ごとの距離を増やすことで、以下のようにリスクが跳ね上がることが分かったのです。
・過去1カ月の最長距離より10~30%増やした場合:ケガの発生率が1.64倍に上昇
・過去1カ月の最長距離より30~100%増やした場合:ケガのリスクは1.52倍に上昇
・過去1カ月の最長距離より2倍(100%増)以上にした場合:ケガのリスクは2.28倍に上昇
たとえ1週間の合計距離がさほど増えていなくても、「今日は天気がいいからいつもの倍走ろう!」「調子がいいから、多めに頑張ろう!」と気合を入れるのは、リスクが高いということです。膝や足首の大きなケガを誘発してしまう恐れがあるため、おすすめできません。
「1回だけ長く走る」のは、なぜ危険なのか?
私たちの筋肉や腱、骨(筋骨格系)が衝撃に耐えられるようになるには、一定の時間が必要です。過去30日間の経験を超えた負荷が1回かかるだけで、組織の許容範囲をオーバーしてしまいます。
例えば筋トレであれば、重すぎるダンベルは持ち上がりません。通常、20kgのダンベルしか持てない人が筋肉をつけたい場合、最大限できるレベルを考えながら22kg、25kgと徐々に負荷をつけて鍛えていくと思います。20kgしか持てない状態で、突然40kgのダンベルを持ってトレーニングしようとは思わないでしょう。無理をしようとしても体が悲鳴を上げるため、持ち上げるのを諦めるはずです。
しかし、ランニングの場合は違います。ダンベルなどの負荷と異なり、一つひとつの衝撃は軽く見えるため、頑張れば走れてしまうのが怖い点なのです。多くのランナーは、実際にケガをするまで不調を自覚しにくいといわれています。脳が痛みを感じる前に、1回の過剰なランニングで、体の組織が限界を迎えてしまうのです。
単発の大きな負荷が、ランニング特有のケガを引き起こしやすいと指摘されているのは、そのためです。
調子がよくても切り上げて! ランニングを逆効果にしないための鉄則は?
特に40代以降でランニングをしてみたいと考えているなら、以下のポイントを必ず意識してください。
・1回の走行距離は、過去30日間の最長記録の10%増以内に抑える
・距離を伸ばす際は、1回ごとの上限を慎重に管理する
・調子がよい日でも、あえて「腹八分目」で切り上げる
具体的には、もし過去1カ月の最長が5kmなら、次は5.5kmまでにとどめることです。このわずかな自制心が、あなたの健康を「真の意味で」守るための最強の武器になります。もちろん、たとえ10%以内の増加であっても、十分な回復時間がなければケガのリスクはゼロではありません。
また、休養とのバランスが崩れると、慢性的な疲労や気分の落ち込みを招く「オーバートレーニング症候群」に陥るリスクもあります。
年齢は異なりますが、筆者の児童精神科外来には、オーバートレーニング症候群の子どもが受診します。オーバートレーニング症候群とは、トレーニング量と休養のバランスが崩れることで生じる慢性的な疲労状態です。
体のだるさ、倦怠感、睡眠の質の低下やパフォーマンスの低下といった身体的な症状のみならず、気分の落ち込み、不安、集中力の低下やトレーニング意欲の減退といった精神的な症状が見られ、回復に数日から数週間、重症の場合は数カ月かかることもあります。
健康維持や健康促進を目的としたランニングの場合、週に2~3回、1回30分程度が目安とされています。疲労回復のための休息も必要です。ぜひ、無理せず、自分の心身の小さな異変に耳を傾けること、忘れないでくださいね。
■参考文献
Jesper Schuster Brandt Frandsen,Adam Hulme,Erik Thorlund Parner,et al. How much running is too much? Identifying high-risk running sessions in a 5200-person cohort study.Br J Sports Med.2025 Aug 26;59(17):1203-1210.
小児神経学・児童精神科を専門とする小児科医・救急救命士。プライベートでは4児の父。子どもの心と脳に寄り添う豊富な臨床経験を活かし、幅広い医療情報を発信中。
執筆者:秋谷 進(医師)
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