

オンラインゲームやスマホは本当に脳に悪いのか? 依存の誤解と脳科学的に見る本当のリスク
【脳科学者が解説】「ゲームやスマホは脳に悪い」といわれますが、実際の研究は因果関係を示していません。問題は脳の異常ではなく、生活リズムの乱れと心理的ストレスにあります。依存の本質を脳科学的視点から考え、誤解を正しく理解しましょう。(※画像:shutterstock.com)
近年、日本でも「ゲームをはじめとするデジタル環境が、子どもや若者に悪影響を与えるのではないか」という懸念が議論されています。
WHO(世界保健機関)も、ゲームに依存して日常生活に支障を来す状態を「インターネットゲーム障害」と定義し、「若年成人において、灰白質の体積異常や衝動性の増加が報告されている」と指摘しています。
こうした研究結果だけを見ると、「オンラインゲームをやり過ぎると脳に異常な変化が起こる」と思ってしまいがちです。しかし、私はこのような論調には違和感を覚えます。分かりやすく解説します。
ゲームは本当に脳に異常を起こすのか? 現在発表されている研究の問題点
本来、ゲームが脳にどのような影響を与えるかを検証したければ、ゲームを始める前の脳の状態を調べ、正常だった人を対象に、一定期間ゲームをしてもらった後に、脳がどう変化したかを比較する必要があります。
しかし、倫理面や実験条件の難しさから、そのような研究はほとんど行われていません。現実には「すでに依存状態にある人」と「そうでない人」の脳を比較しているにすぎないのです。
つまり、脳の異常がゲームによって起こったのか、もともと異常がある人が依存しやすいのかは区別できないということです。私はむしろ可能性が高いのは後者のほうで、脳に何らかの異常があることが依存につながりやすいのではないかと考えています。
「相関関係」と「因果関係」を混同してはいけない
つまり、このようなデータをいくらそろえても、見かけ上の相関があるに過ぎず、因果関係までは不明なのです。
データの見せ方によって、人は簡単に誤解してしまいます。
例えば、アメリカの統計で、「漁船から転落して溺死した人の数」と「ケンタッキー州の結婚率」を比較して関連性を調べたところ、「相関係数0.95」という非常に強い相関が得られたという報告があります。
しかし当然ながら、「溺死者の増加が原因で、ケンタッキー州の結婚率が上がった」わけではありませんし、「ケンタッキー州での結婚率の増加が原因で、溺死者が増えた」わけではありません。偶然による「見かけの相関」に過ぎないのです。
このように、「関連して見える」ことと「原因である」ことはまったく別問題です。
どのような調査でも、研究者が事前の予測に基づいてデータを解析すると、それらしいデータが得られたとき、思い込みによって結果を都合よく解釈してしまうリスクがあります。
科学的に見える議論ほど、客観的な視点で慎重に評価する姿勢が欠かせません。データの解釈の仕方でとんでもない話になってしまうこともあるため、より慎重な議論が必要と思います。
本当の問題は「脳」ではなく「生活と心のバランス」
私は、オンラインゲームを推奨したいわけではありません。むしろ、やり過ぎはよくないと確信しています。ただし、それは「脳が異常になるから」ではありません。
ゲームをやり過ぎることで、食事・睡眠・運動・人とのコミュニケーションなど、毎日の生活で大切なことを犠牲にしてしまうからです。
そのような当たり前のようなことを、わざわざ科学的なデータを提示して説明しなければならないというのも、情けない話です。脳科学者の一人として、こういった風潮はやめたほうがいいとも思っています。
最近では、ある自治体が「スマホ利用は1日2時間以内」という条例を作り、話題になりました。
しかし、スマホ依存になってしまう方は、いくら使用時間を制限しても、依存が治るわけではありません。現実に、飲酒運転に対する罰則を厳しくしても、飲酒運転の再犯がなくならないことと同じです。
「依存症」の本質は、「同じことをしても、依存症になる人とならない人がいる」という点にあります。問題なのはスマホやゲーム自体ではなく、どのような気持ちでしているのか、それぞれの人の「心の状態」なのです。
日常生活に何かしらの不満や閉塞感があり、他の「逃げ場」でそれらを解消しようとする人は、特定の何かに依存しやすく、やめられなくなってしまう傾向があります。
日々の暮らしが充実していて、やるべきことややりたいことが明確な方は、スマホやゲームを長時間やっても、依存症にはなりません。
依存症の問題は、その対象になっているモノや行為を禁止しても解決しません。問題の本質を考えて取り組む必要があることを、ぜひ理解いただければと思います。
薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
執筆者:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者)
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