自分のやり方が正しいと信じていた私が、嫁の前で口にしてしまったひとこと
「任せる」と言ったけれど
結婚して5年。働きながら家事もしている真面目な人で、私は嫁を信頼しているつもりでした。今年のお盆の集まりは、そろそろ任せてみてもいい頃かと、自分から言い出したことです。
ところが、嫁が持ってきた段取り表を見ると、料理の品数も、招く時間も、私が長年してきたものとは少し違っていました。間違っているわけではありません。ただ、私のやり方ではない、というだけのこと。それでも私は表に赤ペンを入れながら「やっぱりこうしましょう」と口にしていたのです。
「私のほうが、ね?」
それから10日のうちに、私は3度、段取りを書き直させました。仕事帰りの嫁が、夜、義実家にやってくる。私が変更点を伝える。嫁が黙ってメモを取る。その繰り返しです。
「嫁が仕切るな、なんて言いたいわけじゃないのよ。でも、こういうのは長年やってきた私のほうが、ね?」そう何度も口にしました。嫁の段取りを、私は信頼していなかったわけではありません。ただ、自分のやってきたものを変えるのが、どこか怖かっただけ。今思えば、それを認めたくなかったのです。
油がはねた瞬間
当日、午前11時。親戚が予定より早く到着しました。私が伝えた時間と嫁が確認した時間にずれがあったようでした。料理は間に合っていません。気持ちが焦り、揚げ物の油が手にはねたとき、私は軽い火傷をしてしまいました。
それより、自分が次に何をすべきかわからなくなったことのほうが堪えました。30年仕切ってきた台所で、判断ができなくなったのです。気がつくと、嫁に向かって声をかけていました。
「どうしたらいいの」
そして...
嫁は引き出しから自分の段取り表を取り出し、てきぱきと動き出しました。料亭への連絡、追加の買い出し、座る順序の変更。私が却下し続けたあの表を、嫁はずっと手元に残してくれていたのです。
親戚たちが帰った後、片付けながら私は言いました。「ありがとう。助かったわ」。それしか言えませんでした。長年のやり方が悪かったのではありません。長年のやり方しか信じてこなかった、自分の頑なさが、嫁を遠回りさせていたのだと思います。
来年はちゃんと、嫁の段取りで進めてみたい。いえ、二人で一緒に表を作ることから始めたい。そう思いながら、私はようやく自分のエプロンを外しました。
(60代女性・専業主婦)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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