「あと5分」を10回送った私に、彼が言った言葉と、私の返し
「あと5分」を送り続けた夕方
その日は仕事終わりに一度家に寄って、夜のデート用に着替えるつもりでした。けれど着替えを選ぶのに迷い、化粧を直し、寄り道で目に入ったお店をのぞいているうちに、気づけば待ち合わせの時刻まで残り15分しかありませんでした。
慌てて駅に向かいながら、彼にメッセージを送りました。
「あと5分で着く!」
本当にそのつもりだったのです。けれど信号に引っかかり、電車が遅れ、改札を出てからも人混みで思うように進めません。
そのたびに私は「あと5分で着く」と送りました。気づけばその短いメッセージを、10回近く送っていたのです。
駅前で彼が放ったひとこと
ようやく待ち合わせ場所のオブジェ前に着いたとき、時計は約束の時刻から38分を回っていました。彼は腕を組んで立っていて、私を見ても表情は変わりません。
「ごめんね、本当に」と頭を下げる私に、彼は穏やかな声でこう言いました。「お前の5分は信用できない」
責めるような口調ではなく、どこか諦めたようなトーンでした。けれど「信用できない」という言葉だけが妙に重く、私の心に引っかかります。私のせいで彼の機嫌を損ねてしまったと、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
思わず口から出た返し
何かフォローを言わなければ、と思った瞬間、口から自然に言葉が出ていました。「じゃあ次から、30分前に着く予定で言うね」
言ってから、自分でもびっくりしました。場面に合わない軽い返しだったかもしれません。けれど彼は数秒間私を見つめたあと、こらえきれずに吹き出して笑いました。
「……それ、根本的な解決になってないだろ」そう言って肩を揺らす彼を見て、私もようやく笑うことができました。冷たく感じた「信用できない」のひとことが、ふいに角の取れた言葉に変わった瞬間でした。
そして...
その後、私たちは予約していた居酒屋に向かいました。歩きながら彼は「実は今日、ちょっと話したいことがあって早めに着いてたんだ」と打ち明けてくれました。1時間以上待っていたと知って、私は思わず立ち止まりそうになりました。
それでも彼が、私の何気ない返しに笑ってくれたから、その夜の話は穏やかな空気の中で進みました。約束の時間を守れない私は、これからも直さなければなりません。けれど、信用というものは時刻だけで決まるわけではないのかもしれない。そう思える夜になりました。
(20代女性・デザイナー)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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