「あの人、会議中にいつも居眠りしてるよね」と噂される同僚→本当の理由を知った日
3週続いた、先輩の居眠り
火曜の午前10時から始まる定例会議は、営業企画部の重要な情報共有の場でした。私はその会議のために前の晩まで資料を作り直すことが多く、寝不足のまま参加していたのです。それでも、最後まで集中して話を聞くようにしていました。
ところが、私の正面に座る先輩は、ここ3週間ほど、会議の中盤になると決まってうとうとし始めるようになっていました。最初は体調が悪いのかと心配していましたが、毎週続くと「やる気がないのでは」という思いが強くなっていきました。
資料をめくる手が止まり、ペンを持ったまま視線が下を向く。会議リーダーが咳払いをすると、はっと顔を上げてまた書き始める。その繰り返しを見ているうちに、私の中で苛立ちのようなものが少しずつ膨らんでいたのです。
給湯室で交わした、軽い噂
その日の会議が終わると、私は同期と一緒に給湯室へコーヒーを淹れに向かいました。「お疲れさま」と紙コップを手渡しながら、同期は声を落としてこう言ったのです。
「あの人、会議中にいつも居眠りしてるよね」
先輩のことを言っているのは、すぐにわかりました。私もつい、同じ口調で乗っかってしまったのです。「ねえ、ちょっとは緊張感持ってほしいよね」二人で笑いながらコーヒーを淹れ、給湯室を出ました。
先輩がそこにいないと、信じて疑わなかったのです。あとから知ったのですが、給湯室の奥にある自販機の前で、先輩はちょうど水を飲んでいたのでした。
翌週、届いた一通のメッセージ
翌週の水曜日、昼休みに先輩からメッセージが届きました。「少し話せませんか」心当たりがありすぎて、すぐには返信できませんでした。仕事のことで呼び出されるのかと思いながら、終業後にオフィス近くのカフェで会うことになったのです。
向かい合って座ると、先輩はコーヒーをひと口飲んで、ゆっくりと話し始めました。「実は娘が、夜中ずっと泣いていて」保育園に入園したばかりの3歳の娘が、慣れない環境で夜泣きを繰り返していること。夫は長期の出張中で、頼れる親もいないこと。ここ数週間、夜は3時間ほどしか眠れていないこと。
私は何も言えないまま、ただうなずいていました。先輩はゆっくりと続けたのです。「噂、聞いていました」あの給湯室の声が、先輩の耳に届いていたのだと、ようやくわかりました。私は紙ナプキンを握りしめ、頭を下げました。
「ごめんなさい。何も知らずに」頭を下げる私に、先輩は首を横に振りました。
「相談しなかった私も悪いんです」
そして...
それから先輩は、上司に事情を伝えて、しばらくの間は会議の出席を必要最小限に絞ってもらえることになりました。
私は会議で先輩の眠そうな顔を見るたび、噂で人を測っていた自分が情けなく感じます。人がうとうとしていることには、その人なりの夜があるのかもしれない。それが想像できなくなっていた自分の浅さを、私は何度も思い返しました。
それからは、廊下で先輩とすれ違うたびに、まず「お疲れさまです」と声をかけるようにしています。先輩は笑って、「ありがとう」と返してくれます。
(30代女性・営業企画職)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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