「借りたお金、もう時効だよね」と冗談で言った夜、友人がそっと差し出したスマホに自分の文字が並んでいた
気軽に口にした、あの一言
先日、大学時代の同窓会がありました。久しぶりに集まったみんなで二次会の居酒屋に流れて、お酒も入って盛り上がっていたとき、私はふと隣に座っていた彼女に向かってこう言いました。「借りたお金、もう時効だよね」。冗談のつもりでした。周りも一緒に笑っていました。でも一人だけ、彼女の表情が変わったのを覚えています。それでも酔いに紛れて、深く考えずに帰ってしまいました。家に着いて布団に入ったとき、ようやく「言わなければよかったかも」と思いました。けれど「冗談だったし」と自分に言い聞かせて、そのまま眠りについたのです。
呼び出されたカフェ
数日後、彼女から「今度2人で会えないかな」とメッセージが届きました。普段はグループのチャットでしかやりとりしないのに、わざわざ個別にとなると少し身構えました。心のどこかでは「あの夜の話には触れないだろう」と思っていました。彼女はそういう人ではないと、勝手に決めつけていたのです。
土曜の午後、駅前のカフェで向かい合いました。注文したコーヒーが運ばれてきて、軽い世間話をしばらく交わしました。仕事の話、共通の友人の近況。そして、彼女がふっと一拍置いてから、テーブルの上にスマホを取り出したのです。
自分の指で打った言葉
彼女がスマホの画面を私の方に向けました。「3年前、こんなメッセージくれたよね」。画面に表示されていたのは、3年前に私が彼女へ送った「来年こそ返すから、もう少しだけ待って」というメッセージでした。覚えはありました。あの頃は確かに返すつもりで、仕事で大きな案件が決まりかけていたのです。それが入ったらまとめて返そうと思っていました。けれど結局その案件は流れ、私はまた彼女に「待って」と書いた事実すら、いつの間にか忘れていました。「これ、債務の承認っていうらしいよ。時効はリセットされるんだって」。彼女の声は穏やかでしたが、責められているのとは違う重みがありました。私は「……ごめん」と短く口にして、視線をテーブルに落としました。
そして...
結局その日、私は「毎月少しずつ返したい」と自分から申し出ました。彼女は淡々と返済方法を確認し、二人で文面にして残しました。帰りの電車の中、流れていく景色を眺めながら、3年前の自分が書いた「来年こそ返すから」を何度も思い返しました。あの頃の私は、確かに返すつもりだった。それなのに、いつから私は「時効」という言葉に逃げ道を見出すようになっていたのか、自分でもうまく説明できません。お金を借りる重さを、私は時間とともに軽くしていったのだと思います。彼女が3年前のメッセージを残してくれていたのは、責めるためではなく、あの頃の私を覚えていてくれたからかもしれません。分割でも、私は最後まで返します。それが、貸してくれた人への、せめてもの誠意だと思っています。
(30代女性・フリーランス)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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