「外食ばかりして料理してあげなよ」と言う義母に、私が返せなかった一言
がらんとした冷蔵庫
日曜の午前、チャイムが鳴りました。月に一度の義母の訪問です。「元気にしてた?」と手土産のみかんを差し出す義母を迎え入れると、リビングに荷物を置いてまっすぐ台所へ向かっていきました。
冷蔵庫を開けた義母の手が一瞬止まるのが見えました。中にはペットボトルのお茶と調味料、卵がひとつ。振り返った義母がこう言いました。「外食ばかりして料理してあげなよ」。穏やかな口調でしたが、胸にずしりと響きました。
あの日の食卓
「すみません」。頭を下げるのはもう何度目かわかりません。
結婚して最初の3ヶ月間、私は毎日台所に立っていました。レシピを見ながら煮物を作り、味噌汁の出汁を丁寧に取り、一番力を入れたのは義母に教わった肉じゃがです。
夫はひと口食べて箸を置きました。「うちの母さんの味とは違うな」。悪気はなかったのだと思います。翌日も作りました。翌週も味を変えて挑戦しました。でも返ってくる言葉はいつも同じで、気づけば私は台所に立つことをやめていました。
飲み込んだ言葉
帰り際、義母は玄関で振り返り「ちゃんと食べさせてあげなさいね」と念を押しました。「はい」と笑顔で頷きましたが、胸の奥がきゅっと詰まる感覚がありました。
料理をやめたのは怠けているからじゃありません。あなたの息子に何度作っても「母さんの味と違う」と言われ続けて、台所に立つ気力がなくなったのです。でもそれを伝えたら、家族の間にひびが入る。だから私はこれからも「すみません」と返し続けるのだと思います。
そして...
義母を見送った後、ひとりで台所に立ちました。何かを作ろうとしたわけではありません。シンクの前に立って、使われなくなったまな板を眺めて、それだけ。
返せなかった一言は、きっとこれからも返せないまま、月に一度の日曜を迎え続けるのでしょう。ため息をひとつついて、夫に「今日の夜、何食べに行く?」とメッセージを送りました。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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