15年待ち続けた椅子に座ったのは年下の彼女だった。俺が提案前夜に隠していたこと
奪われた席
「あんたが部長?冗談でしょ」。そう言ったとき、俺は笑っていなかったと思います。15年この部署で結果を出し続けて、前の部長にも「次はお前だ」と言われていました。それなのに異動の内示で名前が呼ばれたのは、入社8年目の、他部署の彼女でした。
理由の説明はありませんでした。着任の挨拶をする彼女の横顔を見ながら、拳をきつく握っていたことだけ覚えています。
俺が渡さなかった情報
彼女が「過去の提案資料、共有してもらえますか」と聞いてきたとき、「自分で探してください」と返しました。意地悪をしている自覚はありました。
それだけではありません。俺は、先方の担当者が来月異動するという情報を掴んでいたのです。長年の付き合いで、先方の内部事情は耳に入ります。けれど、それを彼女には伝えませんでした。担当者が変われば提案の方向性が狂う。そうなれば彼女は対応しきれないだろう。そこまで考えた自分の薄暗さに、胃の奥がぎゅっと重くなりました。
黙っていられなかった理由
実際に先方の担当者が変わり、チームに動揺が広がったとき、彼女の顔を見てしまいました。焦りながらも誰も責めず、ひとりで打開策を探している横顔です。かつての俺に、あの冷静さがあっただろうか。そう思った瞬間、口が勝手に動いていました。
「先方の担当者が変わってます。前任の方とは好みが違うので、構成を変えたほうがいいです」
彼女は顔を上げて「ありがとうございます」と頭を下げました。その素直さが、胸に刺さりました。
そして...
提案が通ったあの日から、俺は彼女と目を合わせられなくなりました。態度を改めたのは、彼女を認めたからではありません。あの情報を最初から共有していれば、担当者変更の混乱そのものが起きなかった。俺が黙って引き起こした危機を、俺が助けたふりをしただけなのです。
彼女は俺が変わったと思っているかもしれません。でも、変わったんじゃない。ごまかしているだけです。あの椅子に座れなかった悔しさを年下の彼女にぶつけ、足まで引っ張ろうとした自分の醜さから、今も目をそらし続けています。
(30代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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