「うちとは住む世界が違うから」彼との交際を反対され続けた私が、父に返した最後の言葉
父の第一声
彼を実家に連れていったのは、秋の連休のことでした。彼は手土産に和菓子を持ち、玄関で深々と頭を下げました。母は笑顔で迎えてくれたのに、父はリビングのソファに座ったまま、彼の顔をじっと見ていました。
食事のあと、彼がトイレに立った隙に、父が低い声で言いました。「うちとは住む世界が違うから」。意味がすぐには飲み込めず、「それってどういう意味?」と聞き返しました。父は答えず、お茶を一口すすっただけでした。
噛み合わない言い分
その夜、彼が帰ったあと、父と話し合いました。「あの子が悪いとは言ってない」と父は繰り返します。「じゃあなんで反対するの」と食い下がっても、「お前のためだ」としか返ってきません。
彼の何がいけないのか。学歴なのか、収入なのか、家柄なのか。具体的なことは何ひとつ言わないまま、父はただ「住む世界が違う」の一点張りでした。母は黙って台所に立っていました。視線を向けても、こちらを見ようとしませんでした。
叫んでしまった言葉
翌月も、その翌月も、父の態度は変わりませんでした。彼の話題を出すだけで表情がこわばり、「お前にはわからなくていい」と会話を打ち切ります。
ある夜、とうとう限界が来ました。「お父さんの気持ちなんてわからない」自分でも驚くほど大きな声が出ていました。父は一瞬だけ目を見開いて、それから視線を落としました。何か言いかけたように唇が動いたのは、見間違いだったのかもしれません。
そして...
あの夜から、父とは交際の話をしなくなりました。反対されたまま、許されたわけでもないまま、私は彼と会い続けています。
父が何を守りたかったのか、本当のところはわかりません。ただ、あの日視線を落とした父の横顔には、怒りではなく、もっと古くて深い何かがにじんでいた気がするのです。それを聞く勇気が、まだ私にはありません。
(20代女性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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