嫁が「桃と和牛が嫌い」と言ったから毎月送り続けている。あの子の困った顔を想像するだけで気分がいい
気に入らなかった、最初から
息子が連れてきた女は、そつのない子でした。にこにこしてお世辞が上手で、こちらの機嫌を損ねないように立ち回る。そういう子が一番信用できません。結婚式の準備でチャットのやりとりが始まったとき、腹の中を見てやろうと思いました。
「嫌いな食べ物は?」送ったのは試すためです。返事は「桃と和牛です」高級食材を挙げてくるあたり、欲がないふりをするのが上手な子だと思いました。
本当に嫌いなのか嘘なのか、正直どちらでもよかったのです。「あら、そうなの。覚えておくわね」と返しました。どちらにしても、使い道はあるのですから。
毎月届けるという快感
翌月から桃と和牛を送り始めました。本当に嫌いなら迷惑でしょうし、嘘なら嘘で「嫌いだと言ったのに送られてくる」状況に困るはず。どちらに転んでも、あの子が不快になる。完璧な一手だと思いました。
電話で「お義母さん、いつもすみません」と礼を言ってくるあの声。丁寧なのに、ほんの少し引きつっている。私は「嫌いなものばっかり送ってごめんなさいね」と返します。「ごめんなさいね」は謝罪ではなく確認です。あの子が嫌な思いをしているかどうかの。
電話を切ったあとのお茶がいつもよりおいしいのは、性格が悪い証拠でしょう。自覚はあります。
お盆に見た、引っかかる顔
お盆の食卓に桃を出したのは仕上げのつもりでした。目の前で「あなたは食べられないわよね」と言って、困らせてやりたかった。あの子は「少しだけ」と一切れ口にしました。
そのとき、少しだけ想定と違うことが起きたのです。あの子が桃を食べた瞬間、ほんの一瞬だけ、顔が緩みました。目が柔らかくなって、口元がふっとほどけて。すぐに表情を戻しましたが、私は見逃しませんでした。
「桃、おいしそうに食べるのね」と言うと、あの子は「嫌いでも少しなら大丈夫なんです」と微笑みました。よくできた返事です。でも、あの一瞬の顔が頭から離れません。
そして...
考えすぎでしょう。たまたまおいしかっただけ。嫌いなものでもおいしいと感じることはある。そう自分に言い聞かせて、翌月も桃を送りました。
でも最近、ふと思うことがあるのです。毎月届く荷物に、あの子が少しも困っていなかったとしたら。むしろ喜んでいたとしたら。高い桃を取り寄せ、丁寧に梱包し、送料を払い、電話で嫌味を言って、それで満足しているのは私だけだったとしたら。
いえ、そんなはずはありません。あの子は確かに「桃と和牛が嫌い」と言いました。来月も送ります。あの子を困らせるために。きっと、困っているはずだから。
(60代女性・専業主婦)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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