親孝行アピールの裏で母の通帳に手をつけていた私が、姉に全部明かされた日に失ったもの
「姉がいるから大丈夫」という甘え
母が要支援になったとき、正直「姉ちゃんがやってくれる」とほっとした部分がありました。嫁との関係もあるし、仕事も忙しい。自分が動かなくても、姉が何とかしてくれる。その甘えが当たり前になるまでに、たいして時間はかかりませんでした。
「姉ちゃんがいてくれるから安心だよ」。月に一度だけ顔を出して写真を撮って帰る。それだけで「来てる」という実績になる。やっている自分と、やっていない自分の区別が、だんだんつかなくなっていきました。
「少しだけ」が止まらなくなった
お金の問題は、仕事がうまくいかなかった時期に始まりました。母の通帳から引き出すとき、「花を買ってきてあげる」と伝えました。「必ず返す」と心の中で言い訳しながら、その花を一度も買いませんでした。
一度やってしまうとやめられなくなりました。SNSに母との写真を投稿してたくさんのいいねをもらうたびに、自分は悪いことをしていないと思い込もうとしていた気がします。「孝行息子」に見えている自分が、本物だと信じたかった。
証拠を突きつけられた日
姉から「話がある」と連絡が来たとき、何を言われるかわかっていました。通帳のコピーを並べた姉の手が、かすかに震えていました。「これ、説明してくれる?」という声は、怒鳴り声よりずっと怖いものでした。
「少し借りてただけだ」「姉弟だから平等にもらう権利がある」という言葉が口をついて出た瞬間、姉の目から感情がすっと消えました。あの目が、今も忘れられません。
そして…
姉が何をするかは、想像していませんでした。翌朝、スマホが鳴り続けました。叔母から。いとこから。大叔母から。何が起きたかわかりました。姉が親戚のグループチャットに、通帳のコピーを送ったのです。
大叔母からの電話は40分以上続きました。「あんたのお父さんが聞いたら何て言うか」という言葉が、耳の奥に張りついて離れません。いとこからは既読がつかないまま、今も返信がありません。SNSの「孝行息子」を見ていた人たちが、全員、真実を知った。慌ててすべての投稿を削除しましたが、もう遅かった。
嫁には、その夜に全部話しました。黙って聞いていた嫁は、最後にひとこと言いました。「私、実家に帰ります」。止める言葉が出ませんでした。母の見舞いには行けていません。玄関に立つ資格があるのかどうか、まだわかりません。
姉は私を怒鳴りもしなければ、追い詰めに来ることもありませんでした。ただ、事実を渡すべき人たちに渡しただけだった。そのやり方が、怒鳴られるどんな言葉より重かった。私が2年かけて積み上げた「いい息子」の評判は、一晩で消えました。SNSのいいねも、親戚の信頼も、嫁の笑顔も。全部、自分で壊したのだと、今はわかっています。
(30代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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