「甘えるな」と妻に言った俺→妻が出て行った日、冷蔵庫を開けて気づいたこと
余裕がなかった
娘が生まれてから、職場では後輩の指導を任され、家では夜泣きの声が壁越しに聞こえてくる毎日でした。自分だって寝不足で、通勤電車で立ったまま寝落ちすることもありました。
でも「仕事があるから」と別室で寝ることを選んだのは自分です。週末にソファで過ごしたのも、本当は休みたかったから。「手伝おうか」の一言が出なかったのは、そう言ってしまったら自分の余裕のなさを認めることになる気がして、怖かったのだと思います。
母を盾にした夜
あの夜、泣いている妻を前にして、最初に込み上げてきたのは苛立ちではなく、どうしていいかわからない焦りでした。支えたい気持ちはあるのに、何をすればいいのか分からない。それでも「分からない」と素直に言うことができなかったのです。
「なんで泣いてんの。母親だろ、しっかりしろよ」
妻が声にならない声で「もう限界なの、少しだけ手伝って」と言いました。その一言を受け止める余裕すらなかった。代わりに口をついて出たのは「甘えるな。うちの母親はひとりで3人育てたぞ」という言葉でした。
母がひとりで俺たちを育てたのだと、ずっと本気で思い込んでいました。幼い頃の記憶の中では、いつも母だけが台所に立っていたからです。けれどそれは、ただ自分の見えている世界があまりにも狭かっただけでした。
妻がいなくなった家
翌日、仕事から帰ると家は暗いままでした。テーブルの上に手紙が一枚。
「"甘えるな"と言われた日から、あなたに何かを求めるのをやめました。だから、この家にいる理由もなくなりました」
読み終えて最初に思ったのは「大げさだな」でした。すぐ帰ってくるだろうと。
でも、冷蔵庫を開けて手が止まりました。日付のラベルが丁寧に貼られた作り置きの味噌汁。自分の弁当用のおかずまで、3日分。洗濯物もたたんでありました。妻がたったひとりで抱えていたものが、この家のあちこちに残っていました。
そして...
妻に電話をしました。「いつ帰ってくるの」と聞いたら、「帰りません」の一言。謝罪の言葉を言えなかった。言い方がわからなかったのです。
LINEを送っても返事はありませんでした。それでもまだ「いつまでそうしてるつもり」「大げさすぎないか」と送り続けました。
どうしようかと母に電話をすると「お前は私がひとりで育てたと思ってるの? おばあちゃんが毎日来てくれてたでしょう。それも覚えてないの?ひとりで育てたなんて、私は一度も言ったことないよ」言葉に詰まりました。母は続けました。
「お前がやったことは、嫁さんに"助けてって言うな"って言ったのと同じだよ。本当に情けない」
母が怒っているのではなく、悲しんでいるのが声でわかりました。自分が盾にした「強い母親像」は、自分が都合よく作り上げたものだったのです。
(30代男性・会社員)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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