「こんな店潰してやる」と怒鳴る客→夫が静かに放った一言で、場が静まり返った話
突然始まった理不尽なクレーム
その日は平日の昼下がり。私がいつものようにレジに立っていると、50代くらいの男性客がカウンターにやってきました。
「このコーヒー、ぬるいんだけど」
提供したのはほんの数分前。規定通りの温度で淹れたはずでした。私は丁寧に謝罪し、「新しいものをお作りしましょうか」と提案したのですが、男性は首を横に振ります。
「作り直しじゃなくて、返金しろよ。飲んじまったけど、まずかったから金返せ」
飲み終わったカップを突き出しながら、男性の声は次第に大きくなっていきました。私は戸惑いながらも、店長に確認してまいりますと伝え、その場を離れようとしたのですが——。
エスカレートする怒声
「逃げる気か!」
男性の怒鳴り声が店内に響き渡りました。他のお客様が驚いた表情でこちらを見ています。小さなお子さん連れのママが、不安そうに席を立つ姿も目に入ってきます。
「こんな店潰してやるからな。SNSで拡散してやる。お前の名前も晒してやるよ」
私の胸がぎゅっと締め付けられました。何も悪いことはしていないのに、なぜこんな言葉を浴びせられなければならないのか。涙がこみ上げてきそうになるのを必死にこらえながら、私は静かに頭を下げ続けるしかありませんでした。
店長を呼ぼうにも、この場を離れればまた「逃げた」と言われてしまう。どうすることもできない状況に、私の心は限界に近づいていました。
静かに現れた夫
そのとき、店のドアが開く音がしました。入ってきたのは、仕事の外回り中だった夫。近くを通りかかったので寄ってみたとのことでした。異様な雰囲気を察した夫は、すぐに状況を理解したようです。
夫はカウンターの近くまで歩み寄ると、騒いでいる男性の隣に静かに立ちました。そして、穏やかな、けれどもはっきりとした声でこう言ったのです。
「あの、すみません。妻がお世話になっております。何かございましたか」
その一言に、男性の表情が一瞬凍りつきました。夫は続けます。
「お話があるようでしたら、私も一緒に伺います。それと、威力業務妨害という言葉はご存知ですよね」
声を荒げることもなく、淡々と。けれどもその静かな言葉には、私を守るという明確な意思が込められていました。
そして...
男性は何か言いかけましたが、言葉にならなかったようです。周囲のお客様の視線も感じたのか、舌打ちをひとつ残して足早に店を出ていきました。夫は何事もなかったかのように「コーヒーを1つ」と注文し、私に向かって小さく微笑みました。
その夜、帰宅した私は改めて夫にお礼を伝えました。夫は「たまたまだよ」と照れくさそうにしていましたが、あの瞬間どれほど心強かったか、言葉では言い尽くせません。
大きな声で怒鳴り返すのではなく、静かに、でも毅然と私を守ってくれた夫。あの日の出来事は、この人と結婚してよかったと改めて思わせてくれる、忘れられない一日になりました。
(30代女性・飲食業)
本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。
(ハウコレ編集部)
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