夜行バスで彼が私の席を勝手に替えられて、傷ついていた私→心優しい隣に座ってきた人に救われた話
彼が勝手に席を替えていた
バスの乗車口で切符を確認したとき、私は違和感を覚えました。私の席番号が、予約時と違っていたのです。「あれ、隣同士じゃなかったっけ?」と尋ねると、Kさんは少し気まずそうな顔をしました。
「ああ、ごめん。俺、知り合いが乗るって聞いて、そっちと隣になりたくてさ。席、替えてもらったんだ」
あまりにもあっさりとした説明に、私は言葉を失いました。事前に相談もなく、勝手に私の席を動かしていたこと。そして、「知り合い」という曖昧な言葉。胸の奥がざわつきましたが、バスはすでに出発時刻を迎えようとしていたため、私は黙って変更された席へ向かうしかありませんでした。
隣に座ってきたのは、見知らぬ女性だった
指定された席に着くと、通路側にはすでに誰かが座っていました。若い女性です。彼女は私を見て、にっこりと微笑みました。
「あ、お隣ですね。よろしくお願いします」
穏やかな声に少しだけ緊張がほぐれたものの、私の頭の中は混乱していました。Kさんの言っていた「知り合い」とは誰のことなのか。そして、なぜ私がこの見知らぬ女性の隣にいるのか。ふと後方を振り返ると、Kさんは別の女性と楽しそうに話し込んでいる姿が見えました。その瞬間、胸の奥で何かが音を立てて崩れていくような感覚がありました。
隣の女性が気づかせてくれたこと
バスが高速道路に入った頃、隣の女性、Mさんが静かに話しかけてきました。
「もしかして、後ろの方と一緒に来られたんですか?」
私が曖昧にうなずくと、Mさんは少し考えるような表情を浮かべました。そして、「大変でしたね」と、短く言葉を添えてくれたのです。
その一言に、私は不思議と救われた気持ちになりました。Mさんは何も詮索せず、ただ静かに寄り添ってくれました。話してみると、彼女もまた一人で帰省する途中とのこと。仕事のことや、地元の思い出話。他愛のない会話を交わすうちに、張り詰めていた心が少しずつ緩んでいくのを感じました。
そして...
夜行バスが目的地に着く頃、私の心には静かな決意が生まれていました。Kさんとの関係を続けることは、もうできないだろう。けれど、それは悲しいことばかりではないのかもしれない。
バスを降りる際、Mさんが「お元気で」と声をかけてくれました。短い時間だったけれど、彼女の優しさは確かに私の支えになっていました。見知らぬ人の温かさが、こんなにも心に沁みることがあるのだと知りました。
あの夜の出来事は、私に大切なことを教えてくれました。本当に大切にしてくれる人は誰なのか。そして、一人でも前に進む強さを持っていいのだということ。
新しい朝の光の中、私は静かに一歩を踏み出しました。
(ハウコレ編集部)
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