産婦人科医に聞いた! “卵子凍結”に対する世の中の誤認と、正すべき点とは?

産婦人科医に聞いた! “卵子凍結”に対する世の中の誤認と、正すべき点とは?

2024.12.13 11:10

オンラインピル診療サービス「mederi Pill(メデリピル)」を展開するmederiは、オンライン診療を担当している産婦人科医を対象に「卵子凍結に関する意識調査」を実施しました。

また調査結果を踏まえ、岡田有香先生(グレイス杉山クリニックSHIBUYA 院長)のコメントを加えた調査レポートとして公開しています。

■卵子凍結への正しい認知と理解はまだまだ不十分

「卵子凍結について、正しく認知されていると思いますか?」という質問に対し、7割が「思わない」と回答し、「正しく認知されている」という回答はありませんでした。

世の中の卵子凍結への一般的な認知と理解は不十分であり、専門医の視点からも懸念として感じられている状況が読み取れます。

◇▶︎岡田先生コメント

「今回の調査結果では、卵子凍結に対する社会的な認知度や理解がまだ不十分であると認識している産婦人科医が多くいるように思います。ただ、実際に卵子凍結を行っている患者様を身近で見ている産婦人科専門医としては卵子凍結を行う決意をしている方々は卵子凍結に対して過度な期待はしていません。高齢妊娠/出産のリスクについても理解はしていますが、現時点でパートナーが見つからないためにできることの一つとして慎重に選択しています。だからこそ、東京都の卵子凍結助成金の説明会を約9,100人が受講しても、受講した中で実際卵子凍結を行っている方は全体の約15%程度の1,500人と報道されています。

もちろん一部には不妊治療や受精卵凍結との違いをご理解されていない方もいますので、パートナーがいらっしゃる方には今すぐの妊娠で宜しければ不妊検査等からをお勧めし、今すぐの妊娠がどうしても難しいという方は高齢妊娠や高齢出産でのリスク上昇を説明した上で受精卵凍結についてお話しております。」

■卵子凍結で、より広く周知されるべきポイントは?

卵子凍結に関して重要だと考えられる情報として、以下の回答が挙げられました。

・成功率

・失敗率

・適正年齢

・プロセス

これらの情報は、卵子凍結を検討する女性にとって必要不可欠であり、より広く周知されるべきポイントだと考えられます。

■正しい知識とともに卵子凍結は認知されるべき

「世の中で誤認されており、正すべき点」として、以下の回答が寄せられました。

・リスクや副作用があること

・受精卵凍結と卵子凍結の違い、体外受精の違い

・凍結しておけば何歳でも産める、卵子凍結しているから安心だと思うこと

・(凍結しておいた)卵子が必ずしもすべて受精し着床するわけではないということ

・高齢妊娠はハイリスクであり、卵子凍結であっても必ずしも全てが着床するわけではない

卵子凍結を検討する際に、そのリスク・副作用・年齢との関係など、女性自身が正しい知識を持った上で選択できる状況が望ましく、社会全体としても正しい知識を必ず含めた形で卵子凍結に関する発信が必要であると言えます。

◇▶︎岡田先生コメント

「産婦人科医の中でも周産期に携わる医師と不妊治療に携わる医師の間に意識の乖離があるのは事実です。すでに卵子凍結は国際的に認められている選択肢ではあるため、プレコンセプションケアの中で伝えられる必要はあると考えています。現在のインターネット社会の中で個人個人がどれだけ情報を正確に集めて判断できるかという部分の確認は、最終的に卵子凍結を施行するクリニックが果たす役割と考えております。また、卵子凍結に関連する情報収集やクリニック選びにおいても、信頼できる医療機関や専門家からの情報を得ることが不可欠です。クチコミやインターネット上の情報だけでなく、ぜひ実際病院に足を運び、専門医とお話する機会を持っていただくことを推奨します。当院では個人個人の背景の疾患や、年齢、AMH値などから個人に合わせたカウンセリングを行うことで本当に卵子凍結という選択肢で良いのか、その他の選択肢がある場合はより確率が高い選択肢をお伝えしています。卵子凍結を行いたいと来ていただく方の一人ひとりが明確にメリットデメリットを考えられるようサポートしております。また、卵子凍結は施行して終わりではなく、プレコンセプションケアの一環で提供されるべきものであり凍結後も継続して婦人科にかかり続ける必要があります。現在日本の卵子凍結では卵子凍結後のフォローまで含めてできていない場合もありますので、しっかり全ての人がかかりつけの婦人科を持てるようにしていくべきだと考えます。」

■卵子凍結にはメリットとデメリットがあり、どちらも理解される必要あり

卵子凍結のメリットへの回答として、女性のライフプランを考える上でのメリットが強調されました。

・選択肢が増えること

・自身のキャリア設計が考えやすくなる

一方、卵子凍結のデメリットとしては、リスク面が挙げられました。

・コストに見合う妊娠成功率なのかが不明

・卵子を受精させて妊娠できても、本人の年齢が高ければ妊娠時の合併症などのリスクは上がるためハイリスク妊娠が増加する

◇▶︎岡田先生コメント

「個人個人の状況に合わせたカウンセリングを行った上で、施行した卵子凍結であれば将来卵子を使用しなかったとしても施行したことに後悔は少ないと言われています。もちろんメリットはアンケートにあります通り「選択肢が増えること」「自身のキャリア設計が考えやすくなる」ということはありますが、一番重要なのは「その後の妊娠の計画に寄与する」ことだと思っています。卵子凍結をしなければ知り得なかったご自身の情報を得ることはでき海外の論文でもその後の妊娠の計画に卵子凍結が役立っています。」

■本音は「自分自身だったら卵子凍結するかどうかわからない」

「自分自身が当事者だった場合、卵子凍結をすると思いますか?」という質問に対して、「わからない」という回答が最も多く、「はい」「いいえ」は同等の回答数となりました。「わからない」と回答した専門医の理由としては「置かれている状況で異なるため」が挙げられました。

また、「卵子凍結をすると思う」と回答した専門医の理由としては「お金がある場合はキャリアプランを考える上で選択肢に入る」という声が寄せられました。

「卵子凍結はしないと思う」と回答した専門医の理由としては「必ずしも妊娠につながるとは限らず、採卵術が痛いため」という意見がありました。

■十分な情報を踏まえた施行判断とクリニック選びがポイント

卵子凍結を検討する際の情報収集方法として、以下のアドバイスが挙げられました。

・卵子凍結の経験者からのクチコミを参考にする

・リスクや成功率について医療機関で専門医に尋ねる

・クリニックのWebサイトやYouTube、治療経験者のYouTubeなどを視聴する

・日本産婦人科学会の動画をまずは視聴する

加えて、卵子凍結を実施するクリニック選びにおいて最も重視すべき点は、以下のポイントが挙げられ、専門医の見解や経験者のクチコミを踏まえて女性自身が判断することが大切だとわかりました。

・経験豊富な医師や専門スタッフがいるかどうか

・卵子凍結および妊娠成功率の実績

・設備や技術の充実度

◇▶︎岡田先生コメント

「卵子凍結施行を検討される方は、かかりつけの婦人科がない方が半数です。卵子凍結をいざ施行しようと思われた際に初めて病気が見つかるということも多くあります。まずは、婦人科かかりつけ医をつくるようにしましょう。20歳からは1年に1回は婦人科受診をして定期的なチェックが不可欠です。卵子凍結を検討する女性たちが、適切な知識とサポートを得ながら、自身のライフプランを実現していけるよう、今後も正確な情報提供と患者教育に努めてまいります。」

■まとめ

今回のアンケート結果から、世の中における卵子凍結への正しい認知と理解がまだ不十分である状況が浮き彫りになりました。調査結果を受け同社では、「mederiでは、今後も卵子凍結に関する正しい情報提供を通じて、女性のライフプランニングをサポートしてまいります」とコメントしています。

◇【コメント医師プロフィール】

岡田有香先生(グレイス杉山クリニックSHIBUYA 院長)

2014年聖路加国際病院に入職。出産や手術、不妊治療の全てに携わる。2021年から杉山産婦人科にも所属。聖路加国際病院では子宮内膜症や低用量ピルの診療とがん治療前の卵子凍結などにも携わり、杉山産婦人科では不妊治療を学ぶ。不妊治療に多くの方が苦しむのを見て、不妊治療に進む前から定期的に婦人科にかかり不妊予防を行う重要性を改めて認識し、グレイス杉山クリニックSHIBUYA院長に就任。生理の知識や妊活、卵子凍結についてInstagramでも発信している。

■調査概要

産婦人科医を対象とした卵子凍結に関する意識調査

調査対象:mederi Pillにてオンライン診療を行う産婦人科医

調査方法:アンケートフォームを用いた調査

(エボル)

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