母の苛烈な愛情を表現した宮沢りえ

宮沢りえが表現した母の苛烈な愛情、母の日にこそ見たい名作映画『湯を沸かすほどの熱い愛』の魅力

2025.05.09 08:00
母の苛烈な愛情を表現した宮沢りえ

2016年に劇場公開された映画『湯を沸かすほどの熱い愛』が5月11日(日)21:50から、CS放送「映画・チャンネルNECO」にて放送される。テレビジョン編集部では、一足先にこちらの作品を視聴。作品、そして豪華俳優陣による体当たりの演技など、その魅力について紹介する。

映画『湯を沸かすほどの熱い愛』とは?

映画『湯を沸かすほどの熱い愛』は、宮沢りえが家族の再建に懸命に取り組むヒロインを演じた、感動の話題作。

持ち前の明るさと強さで娘を育てている幸野双葉(宮沢りえ)が、突然の余命宣告を受けてしまう。双葉は残酷な現実を受け入れ、1年前に突然家出した夫を連れ帰り休業中の銭湯を再開させること、気が優しすぎる娘を独り立ちさせることなど、「絶対にやっておくべきこと」を実行していくというストーリーだ。

共演に杉咲花、伊東蒼、篠原ゆき子、駿河太郎、オダギリジョー、松坂桃李ら錚々たる俳優たちが肩を並べている。

一筋縄では行かない家族の愛には賛否

この映画は、公開当時から絶賛する声もあれば、いまいち「響かない」という声もあり、賛否が分かれたことでも話題になった。

その理由は、一筋縄では説明できない家族への愛が描かれているからだ。

あらすじを見ただけでは、残酷な現実を受け入れ、それを乗り越える、涙なしでは見られないストーリーかという印象を受ける人も多いことだろう。しかし、ここに描かれているのは宮沢演じる双葉の強さ、そしてそんな双葉が最後に残したいものだ。

その1つが娘・安澄(杉咲花)に対する強さだ。

例えば同級生に制服を隠された翌日、今日だけは学校に行きたくないと話す安澄を布団から引きずり出し、「負けずに学校に行け」と叱咤激励するシーンや、安澄にとある真実を伝え、その真実と向き合わせた上で行動しろという場面など。一視聴者としては「それはいくらなんでも…」と思うシーンもなくはない。

単なるストレートな感動作ではないからこそ、このシーンをどう捉えたら…と戸惑う声も少なくはないのだが、ある意味でそれがリアルな愛であるようにも思える。まるで、双葉の苛烈ともいえる愛情が、タイトルにもなっている「湯を沸かすほどの愛」につながるかのようだ。

強く、そして人間味のある双葉の喜怒哀楽

双葉は非常に明るく、そして強い。そして、作中の言葉を借りるのならば「あの人のためなら、なんでもしてあげたい」と思わせるキャラクターでもある。

銭湯を復活させた際も、失踪した夫・一浩(オダギリジョー)と、その幼き連れ子・鮎子(伊東蒼)、そして安澄に対して「働かざる者食うべからず!」と言い、3人を半ば強制的に再起に巻き込む。突然の状況に戸惑い、協力しないという選択を誰も取ることができないのだ。

その一方で、非常に人間味溢れるキャラクターでもある。先述したように安澄を叱責したかと思えば、余命を宣告されたその日には浴槽で小さく丸まって1人静かに泣くなど、表情も豊かだ。

また、寿命が近づき弱っていく中で、生き別れた母親に会いに行った双葉が取る静かなる怒りゆえの行動は、恐怖さえも感じさせる。

そんな要所要所での宮沢の絶妙な表情は、ぜひとも注目してほしい。

杉咲花、伊東蒼…実力派女優たちの9年前の姿も必見

また、共演の俳優たちも豪華である本作。

なんと言っても注目すべきは9年前、18歳のころの杉咲花の姿だろう。

杉咲といえば、2023年度、映画『市子』にて、第78回毎日映画コンクール 女優主演賞、そして第47回日本アカデミー賞 優秀主演女優賞を受賞。さらに、2024年にはドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』で第120回ザテレビジョンドラマアカデミー賞 主演女優賞などを受賞したことでも知られている実力派。

その彼女が、いじめに悩み不登校寸前の状態の中で母の言葉で学校に行くシーン、そして、学校に行くまでの間に“お母ちゃん”こと双葉と言い合うシーンは、まさに圧巻である。

さらに、6歳のデビュー以来19歳となった今もドラマ・映画の出演を重ね、その高い演技力に注目が集まる伊東蒼が、一浩の連れ子・鮎子として登場。また、2025年1月期の日曜劇場『御上先生』で主演を務めた松坂桃李が、旅先で双葉が出会う青年役として出演するなど、脇を固めるキャストも豪華で魅力的だ。

母が向ける家族への愛という普遍的なテーマを扱った本作。母の日のタイミングに、ぜひ見ておきたい名作映画のひとつだ。

文/於ありさ

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