日台韓の映画ファンを魅了する、台湾俳優「シュー・グァンハン」の魅力とは

2025.01.06 18:00

2024年も多くの台湾作品が日本に上陸したが、その中で特に日本のメディアに登場した俳優の一人がシュー・グァンハン(許光漢 / グレッグ・ハン)ではないだろうか。

雑誌の表紙を飾り、清原果耶とW主演の映画『青春18×2 君へと続く道』がアジア全域でヒットしたことも記憶に新しい。同作は36歳の台湾人青年ジミー(シュー・グァンハン・演)が、18歳のときに出会った初恋の日本人少女・アミ(清原果耶・演)の足跡を尋ねて日本を旅する物語だ。

二人が共に過ごした時間、台南の風景や人情、ジミーが日本で出会った人々との交流……数多くの魅力を有する本作の感動をより鮮やかにしたのが、瑞々しい18歳と挫折を経た36歳のジミーを一人で演じたシュー・グァンハンの演技だ。日台のみならずアジアで人気急上昇のシュー・グァンハンとはどんな俳優なのか。出演作と共に振り返りたい。

難役で確かな演技力を示したブレイク前夜

シュー・グァンハンの俳優デビュー作は、2013年に「許穎東」名義で主演した青春ドラマ「潛入藍中籃(原題)」(マレーシア制作)だ。

彼の俳優人生は好スタートを切ったかのように見えたが、同時期に動いていた歌手デビュー計画が白紙になり、それに伴い芸能活動自体が暗礁に乗り上げてしまう。その直後からアルバイトで生計を立てながら、オーディションに挑み続けるという苦節の時期を迎えていたとは、今の活躍からは想像できないだろう。

そんな彼の転機になったのが2016年のドラマシリーズ「植劇場」だ。これはワン・シャオディ(王小棣)監督ら台湾の著名な映画人が立ち上げた若手育成プロジェクトの中で製作された作品群であり、名監督らの指導をみっちり受けた “訓練生” たちが出演しているのだ。

同プロジェクトは映画『1秒先の彼女』(2020)に主演したリウ・グァンティン(劉冠廷)やドラマ「悪との距離」(2019)で無差別殺人事件の犯人の妹役で鮮烈な印象を残したチェン・ユー(陳妤)など今の台湾エンタメを牽引する若手スターを多数輩出している。

その中でシュー・グァンハンは植劇場のドラマ「戀愛沙塵暴(原題)」(2016)と「先生、本当の恋って?」(2016)に出演。特に「先生、本当の恋って?」でシュー・グァンハンが演じたのは、愛に飢え、障害を持ち、性的な衝動を押さえられず、性犯罪を繰り返してしまう青年という難役だ。

このセンシティブな役柄を見事にものにし、その演技力に注目が集まった。本作をもって台湾版エミー賞こと「金鐘賞」の助演男優賞にノミネートされている。

温かみあるオーラと確かな実力を兼ね備えるトップスターに

その後、映画『ひとつの太陽』(2019)では “出来の悪い” 弟を持つ優秀な長男役に。親の期待を一身に背負い、太陽に照らされ続けたがゆえの苦悩を好演し、業界評が高まったところで、続いて放送された「時をかける愛」(2018)で彼の魅力が台湾全土に知れ渡ったのだ。

同作は、行方不明になった恋人を忘れられないヒロイン・黄雨萱(ホァン・ユーシュエン)が偶然見つけた20年前の写真に恋人そっくりな人物を見つけ、調べていくうちに自身が20年前にタイムスリップしてしまうところから展開する。

雨萱はタイムリープを繰り返しながら恋人失踪の真相を探るのだが、その恋人・王詮勝(ワン・チュエンション)と20年前に存在した彼にそっくりな李子維(リー・ズーウェイ)の二役を演じたのがシュー・グァンハンなのだ。

王詮勝と李子維は同一人物なのか、雨萱のタイムリープと二人の存在に関係はあるのか……毎回、謎が謎を呼ぶ展開は、シュー・グァンハンはじめ俳優陣の演技力がなければ、あの感動的な結末につながらなかっただろう。

「時をかける愛」は台湾で社会現象になるほどメガヒットし、シュー・グァンハンも大ブレイク。その優しい容貌と落ち着いた物腰から、中国語で温かみと思いやりのあるイケメンを指す「暖男(ヌアンナン)」の代表格と見なされるようになり、「新・国民的彼氏」と呼ばれるようになった。

深掘りするならコメディ作もチェック!

今やすっかり「イケメン」「温かい」「聡明」なイメージが定着したシュー・グァンハンだが、ブレイク前に出演した年上バリキャリ女子と実直な年下男子との恋を描いた「年下のオトコ」(2017)では、イケメンとは真逆の超個性的な友人・ニーグルを演じている。

刈り上げマッシュルームボブというビジュアルも含めて「本当にシュー・グァンハン!?」と思うほどのカメレオン俳優ぶりに驚かされるはずだ。

そんな「コメディも板につくシュー・グァンハン」を思い出させてくれた作品が映画『僕と幽霊が家族になった件』(2022)とそのスピンオフドラマ「正港署」(2024)だ。

シュー・グァンハンが演じたのはゲイに偏見を持ち、よく言えば真っ直ぐな性格、悪く言えば単純なおバカ刑事。両作では周囲を振り回すコミカルな演技と、アクションが光る。彼の魅力を深掘りするには、ぜひコメディ作もチェックしておきたい。

日台のみならずアジアで大ブレイク

「時をかける愛」、『青春18×2 君へと続く道』のアジアでのヒットを受け、シュー・グァンハンの人気は香港や韓国でも高まっている。

特に韓国では2022年に開催されたファンミーティングのチケットが5分で完売する人気ぶり。そして2024年に満を持して韓国ドラマ「NO WAY OUT:ザ・ルーレット」にメインキャストとして出演を果たしている。

本作は凶悪犯の命にかけられた懸賞金200億ウォン(約22億円)をめぐって、命がけの戦いが繰り広げられるサバイバルドラマで、シュー・グァンハンが演じるのは冷酷無比の殺し屋「Mr.Smile」。

本作でも新たな魅力を開花させたと言えるだろう。台湾の国民的彼氏から、アジアの彼氏と呼ばれる日もそう遠くないのかもしれない。

日本で見られるシュー・グァンハンの出演作

『青春18×2 君へと続く道』Netflix(見放題)

「先生、本当の恋って?」Netflix(見放題)

『ひとつの太陽』Netflix(見放題)

「年下のオトコ」プライムビデオ(見放題)ほか

『僕と幽霊が家族になった件』Netflix(見放題)

「正港署」Netflix(見放題)

「NO WAY OUT:ザ・ルーレット」Disney+(見放題)

「アテンションLOVE」プライムビデオ(見放題)ほか

「NOW HERE MAN」Netflix(見放題)

「路(ルウ)〜台湾エクスプレス〜」プライムビデオ(有料チャンネル)ほか

「最後の雨が降るとき」プライムビデオ(見放題)ほか

『ヒジュラー 愛される魂』FOD(見放題)

「華燈初上-夜を生きる女たち-」Netflix(見放題)

文/沢井メグ

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