MCU“ハルク”俳優マーク・ラファロ、57歳の誕生日 変幻自在の演技で見る者をとりこにする名優のキャリア
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)のブルース・バナー/ハルク役でおなじみの俳優マーク・ラファロが、11月22日に57歳の誕生日を迎えた。ハルクだけでなく、近年では2023年公開のエマ・ストーン主演作「哀れなるものたち」で不遜な弁護士ダンカン・ウェダバーンを好演したことも記憶に新しい。誕生日を機に、そんなラファロのこれまでの軌跡を振り返る。
名門演技学校出身…1994年に長編映画デビュー
ラファロは、1967年11月22日に米国ウィスコンシン州で生まれた。高校生の時に俳優になろうと思い、ロサンゼルスでバーテンダーなどをしながら、名門演技学校ステラ・アドラー・コンサバトリーに通い、芝居を学んだ。1994年の「ダーク・ミラー/悪魔の囁き」で長編映画デビューを果たすがそこからしばらくは地道な活動を続けることになる。
その才能が開花したのは2000年、映画「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」にローラ・リニーが演じるサマンサの弟・テリーを演じ、その演技が評価されて「モントリオール国際映画祭」男優賞と「ロサンゼルス映画批評家協会賞」ニュー・ジェネレーション賞を受賞した。2004年のトム・クルーズ主演作「コラテラル」に警察官レイ・ファニング役で出演。2007年のデヴィッド・フィンチャー監督の「ゾディアック」にはサンフランシスコ市警殺人科の刑事デイヴ・トースキーを演じ、2010年のマーティン・スコセッシ監督&レオナルド・ディカプリオ主演の「シャッター アイランド」ではディカプリオ演じる連邦捜査官テディ・ダニエルズと一緒に捜査をするチャック・オールを好演。メジャー作にも多く出演するようになっていった。
「シャッター アイランド」と同じ2010年公開の映画「キッズ・オールライト」はラファロの代表作の一つに挙げられる。カリフォルニアを舞台に、レズビアンカップルと2人の子どもたちで構成される家族が暮らしていたが、ある日、子どもたちが二人の母親(アネット・ベニングとジュリアン・ムーア)に精子を提供した男性に会いにいったことで、家族の崩壊の危機が訪れた…という物語。その提供した男性を演じたのがラファロ。自由に人生を過ごし、無精髭をたくわえて多少いかつい感じがあるが、魅力的な人物で、作品ごとに雰囲気の違う役を演じてきたラファロだから演じられた役とも言える。この演技も評価が高く、「アカデミー賞」助演男優賞と「英国アカデミー賞」助演男優賞、「全米映画俳優組合賞」助演男優賞、「クリティクス・チョイス・アワード」助演男優賞それぞれにノミネートされ、「ニューヨーク映画批評家協会賞」助演男優賞を受賞している。
“当たり役”ハルクは「アベンジャーズ」から参加
ラファロの“当たり役”、ブルース・バナー/ハルクとして作品に登場したのは2012年公開の「アベンジャーズ」だった。公開時、ラファロは45歳。2003年公開の「ハルク」を演じたエリック・バナは公開時35歳で、2008年公開の「インクレディブル・ハルク」でハルクを演じたエドワード・ノートンは39歳ということで、過去のハルクと比べて、より大人なハルクだった。それでも2013年の「アイアンマン3」、2014年の「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」、2017年の「マイティ・ソー バトルロイヤル」、2018年の「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」、2019年の「キャプテン・マーベル」「アベンジャーズ/エンドゲーム」、さらには2021年の「シャン・チー/テン・リングスの伝説」や2022年のドラマシリーズ「シー・ハルク:ザ・アトーニー」にも出演し、“ハルク”=ラファロというイメージをしっかりと定着させた。
ハルクの印象が強いのは確かだが、いろんな役になりきれるラファロだけに、ハルクを演じている時期でも、いろんな作品で存在感を示している。例えば2014年に放送されたドラマ「ノーマル・ハート」では、ラファロは主演を務めただけでなく、製作総指揮を兼任。ブラッド・ピットも製作総指揮に名を連ねた本作は、「プライムタイム・エミー賞」作品賞を受賞。
スティーヴ・カレルとチャニング・テイタムがW主演を務めた2014年公開(日本は2015年)の「フォックスキャッチャー」で、テイタム演じるレスリングの金メダリストのマークの兄、デイヴを演じ、「アカデミー賞」助演男優賞にノミネートされたほか、「英国アカデミー賞」「ゴールデングローブ賞」「全米映画俳優組合賞」「クリティクス・チョイス・アワード」でも助演男優賞にノミネートされ、「サンディエゴ映画批評家協会賞」では助演男優賞を受賞している。2015年の「スポットライト 世紀のスクープ」で2年連続で「アカデミー賞」助演男優賞にノミネートされており、彼の演技の評価の高さがうかがえる。
そして「哀れなるものたち」。「女王陛下のお気に入り」のヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンのゴールデンタッグによるこの作品で、ラファロは主人公ベラ(ストーン)をリスボンへ連れ出す弁護士ダンカン・ウェダバーンを、これまでに演じてきたどの役とも違う雰囲気を作り上げ、見る者に強烈な印象を与えた。この作品は「アカデミー賞」で主演女優賞、美術賞、衣装デザイン賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞の4部門で受賞し、「ヴェネツィア国際映画祭」で金獅子賞を受賞。ラファロ個人での受賞はないが、一見の価値ありという演技を見せてくれているので、これもぜひチェックしてもらいたい。
今後、「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督による「ミッキー17」がスタンバイ。また、少し先の話にはなるが「アベンジャーズ:ドゥームズデイ(原題)」(2026年5月全米公開予定)、「アベンジャーズ:シークレット・ウォーズ(原題)」(2027年5月全米公開予定)なども情報が出てきているが、ラファロ演じるハルクは登場するのだろうか…。もし出るようなら彼の変幻自在な演技を楽しみにしたいと思う。
なお、MCU過去作はディズニープラスで配信中。
◆文=田中隆信
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