

高山一実「トラペジウム」に込めた思い「夢を目指す過程って素晴らしい」

2021年まで乃木坂46の1期生として活躍した高山一実の長編小説デビュー作で、累計30万部の大ヒットを記録した「トラペジウム」が、アニメーション映画となって5月10日(金)に全国で公開される。アイドルを夢見る主人公・東ゆうが、東西南北の美少女を集めてアイドルグループを結成する展開を、現役アイドルであった高山自身の経験や葛藤を交えながら書きつづった本作。原作者として制作に携わった高山に、映画化にあたってのこだわりや執筆時の思い、芸能界に対する考えなどを語ってもらった。
自由に言葉にしたものをアニメーションにしていただいた
――原作者として、著書の映画化に対する思いを聞かせてください。
私が「こうだったらいいな」と自由に言葉にしたものをアニメーションにしていただき、本当にうれしいです。エンディングに流れる曲では作詞も担当させていただきました。曲も、サビのメロディーは浮かんでいたので、それをベースに作っていただいたんです。すごくありがたいですね。
――シナリオ制作にも携わっていらっしゃるんですよね。
原作があるので、新たに「こうしてください」とはそこまで言っていませんが、工藤真司のせりふについては「原作よりも少し冷たい言葉にしてほしい」と話しました。「アイドルを目指す子が男の子と会っている」ことの見え方を考えた時に、東ゆうは真司と恋愛関係になるつもりはなかった、というニュアンスを見せたくて。映像になるとシーンがコンパクトになるので、視聴者の方に誤解されてしまった時に補いきれないなと。
アニメの世界ってそうなんだ
――他に映像化する中で難しかった点はありますか?
私自身が大変ということでもないんですが、私の中に画が浮かんでいないような場面は、スタッフの方が一から作ってくださるんです。例えば、学校にしてもどこか特定の学校を挙げた方が作りやすかったようで、「アニメの世界ってそうなんだ」と思いました。ゆうが聴いているアイドルの曲も、実際のアイドルの曲なのか、架空の曲なのか、とか。どこまで具体性を持たせるかを選択していくことは難しかったです。
――原作の読者に対して伝えたいことはありますか?
映像化されて「ここのシーンってこうだったの?」と思うこともあるかもしれませんが、だからと言って想像していたことが間違いだというわけではないです。私がすべてのシーンを「ここはこの場所で」と決めたわけではないし、むしろどう思い描いていたのかを聞いてみたいです。
今後は映画を見た上で小説を買ってくださる方もいらっしゃると思いますが、そういう方は小説の中のゆうのせりふが結川あさきさんの声で頭に流れると思うんです。それもそれでいいんじゃないかなと思っています。
より良いものを作りたいし、私の意思はお伝えしたい
――小説も大きな反響がありましたが、映像化を機に変更したり付け加えたりした場面などはありますか?
小説を発売した後、私が直接頂く感想は好意的なものが多かったですが、「アイドルになってからのシーンをもうちょっと見たかった」という方も結構いらっしゃいました。映画ではそこを多く描いていただいていたので良かったです。私がイメージしていた以上にさまざまな活動をしていましたが、ストーリーとしてはあれくらいの規模感になるのもすごくいいなと思います。
――原作のある作品の映像化は原作者がすべてをコントロールできるわけではないので、全員が納得する形に作り上げるのは困難な面もあると思います。
私はアニメに関しては素人ですし、さまざまな確認作業も大変だったと思いますが、すごく丁寧に作ってくださいました。私が強く言ってしまうと、それはそれで飲み込まざるを得ない状況になる可能性もある中で、それでも一つ一つ聞いてくださることがとてもありがたかったです。
「なんでもいいですよ」とお任せする選択肢もありましたが、せっかく聞いていただいたのならより良いものを作りたいし、私の意思はお伝えしたいなと思ってそうさせていただきました。声優さんのオーディションにも入らせていただいたんですが、決まった後に「これでいいですか?」と聞かれるのでなく、現場で一緒に決めさせてもらえたことが、すごくうれしかったです。
「学生たちに届けるにはどうしたらいいかな」という思いで書いた
――小説の執筆時点では、どのようなメッセージを世の中に伝えたいと考えていましたか?
「学生時代はすごく大切なものだ」と伝えたかったです。私自身も高校生に上がる頃、周りの親戚に「高校が一番楽しかった」「楽しんだ方がいいよ」と言われましたが、実際に高校生になるとギャップがあって、楽しくないと思ったんです。
その後は、だんだんと良いものだと思えるようになって、3年生の時にグループ(乃木坂46)のオーディションを受けたことで今の自分があります。大人からのアドバイスを煙たく思いながらも自分の意思で行動した、すごく良い3年間でした。
そういうことを、耳の痛くなるような言い方をするのではなく、学生たちに届けるにはどうしたらいいかな、という思いで書いたのが「トラペジウム」です。「夢を目指す過程って素晴らしいんだよ」という思いを込めました。
芸能界は“良い職業”「人の人生に多く関われる」
――映画では、東西南北のメンバーがすれ違っていく生々しさも描かれていたように感じました。
“順風満帆な少女たちの成長ヒストリー”にはしたくなくて、東西南北は絶対に失敗させようと思っていました。あまのじゃくなんでしょうね(笑)。「女の子たちを集めてアイドルを目指し、アイドルになれました」だけでは簡単すぎると思ったんです。
――高山さんご自身はアイドル卒業後も芸能界で活躍されていますが、人前に立つ職業をどう捉えていますか?
人の人生に多く関われる、こんなに良い仕事はないと思っています。作品の中の大河くるみとは真逆の考えですね。「発言の一つ一つがいろいろと取り上げられて生きづらいね」と言われることもありますが、「でも、それが芸能人だよな」と思っています。そういう面もあるかもしれないけれど、それ以上に、やりたいことがかなえられる良い職業だと思います。良い人も多いし。
アイドルグループの理想は「ずっとみんなでいたらいいのに」
――高山さんは、もしもう一度人生をやり直すならまたアイドルの道を選びますか?
絶対に選びます。応募するもっと前に戻って、ダンスや歌を習っておきたかったです。私ってヘラヘラしているところがあるんですけど、「でも、ダンスができる」「でも、歌がうまい」というギャップがあったら格好良くないですか? (得意の)剣道はアイドルと関係なさすぎました(笑)。
――そうしていたら、もっと長い期間アイドルを続けていた可能性もあるのでしょうか?
どうなんですかね? でも、卒業の時期はどちらにしてもあそこだったと思います。正直言うと、全員が卒業せずにずっとやっていたかったです。グループ名は変わらないけれど、メンバーは変わっていく女性グループって多いじゃないですか。私は「みんなでずっと一緒にいたらいいのに」と思っていたし、楽屋でそう言うこともあったけど、他の夢を持っている子もいっぱいいるし、こればかりはどうしようもない。
――その現実を本作でも表現されているというわけですね。
そうかもしれません。
◆取材・文=山田健史/ヘアメーク=入江美雪希、スタイリスト=Toriyama悦代(One8tokyo)
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