“VR先進国” 台湾の有識者が語る、VR/XR映像分野の現在地「台湾では国がクリエイターの支援を継続」
新しい映画祭「Cinema at Sea-沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル」が11月23日~11月29日に沖縄・那覇で初開催された。日本初上陸となる映画の上映はもちろん、映画にまつわるさまざまなイベントも催され、VR機器でアジアシェアのトップかつ、世界2位のシェアを誇る台湾のメーカーHTC社のヘッドセットブランド・VIVE ORIGINALSによるVR体験上映も実施。今回は、国際映画祭でVR映像の部門があるのはまだ珍しく、世界的に見ても技術が発達しているという「VR先進国」である台湾のゲストを招いて行われた「VRフォーラム」の様子をリポートする。台湾におけるVR映像文化発展の取組や、世界的な価値、VRとXRの違いなどさまざまな話が飛び出した。
アジアでトップ、世界シェア2位のHTC社の取組
フォーラム前半は、HTC社のヤン・ナイジェン氏が登壇し、HTC社のVR部門の取組を紹介。
HTC社によるVRヘッドセットブランド・VIVE ORIGINALS は2016年からスタート。台湾クリエイターと共にVRの映画を作ってきた中で、映画、アニメ、アーティストとコラボしたMVなどを手掛けてきた。今回の映画祭で体験上映をした作品は金馬賞(※台湾版アカデミー賞)とHTCがタイアップした作品をはじめ、過去のプログラムから抜粋したものを上映したという。
同映画祭の上映作品の説明のほか、メタバースのプラットフォーム「BEATDAY」について紹介。これまで、オンラインで、ライブを見る、カメラの視点で固定的な映像だった。それをどう発展させるかに挑戦した作品を展開している。
このプラットフォームでは、コンサート観賞体験を提供。3Dモーションキャプチャとゲームエンジン技術を使って自分のアバターを作ることができ、自由自在な位置でライブを見ることができる。メタバースプラットフォームの面白さは、自分が監督になれるところ。度の位置から鑑賞するのか、歌手の後ろからみることも可能。空間内で新しい友達を作りながら一緒に楽しむこともできるという。今はPCからダウンロードして楽しむものだが、近い将来はVR版を作っていくとのこと。
「技術革新のスピードが速いVR業界ですが、技術革新が大事なのではなく、もっとも大事なのは、ヒューマニティの部分だと捉えています。サイエンスはツールでしかない、この時代においてどういう新しい伝え方ができるかにチャレンジをしている」と、VR業界への挑戦する思いを明かした。
VR先進国の台湾では、政府がクリエイターを支援
第二部は、同映画祭のプログラムディレクター、ワンダー・オン氏をモデレーターにしたトークイベント。高雄映画祭VR部門キュレーターであるリー・シャンチャオ氏と、VR映画『蘭嶼(らんしょ)の沖で』監督のチェン・シーアンとVR/XRの現在地について語り合った。
ワンダー・オン:もしかしたらまだVRのことが分からない方もいらっしゃると思います。
VRの最新技術がどういうものなのかを台湾からのスペシャルゲストのお2人から紹介してもらいましょう。ひとつめの質問です。台湾のVRは世界的にもトップクラスだという意見もありますが、世界ではどういった立ち位置なのでしょうか。
リー・シャンチャオ:VRが流行り出したのは2016年。それから映画祭でも紹介されてきました。VRは技術ベースの部分がある、VR作品の制作に政府も助成金を出すなど奨励している。台湾では世界的にもVRの作品作りがしやすい環境にあるということは言えると思います。
ワンダー・オン:世界でも先端技術をもっていることはわかりました。どういった課題があるのでしょうか。
リー・シャンチャオ:高雄映画祭では、2017年から政府の奨励のもとで、XRのプログラムを推し進めているが、台湾の人達がVR/XR楽しんでいるかというと、従来の映画のほうがまだ圧倒的に多い。見る側がもっと広まって体験してもらえるか大事。そのために続けていくのが大事です。
ワンダー・オン:高雄映画祭はたくさんの予算を投じています。金馬賞などでVRを取り上げたりと盛り上がりがあったが、今はそこまで力をいれていない印象です。お客さんの受けが良くないから予算を投じなくなってきているのではないでしょうか。それでも今も高雄映画祭で果敢にVRを推していくのはなぜでしょうか。
リー・シャンチャオ:映画祭は“お祭り”ですが、高雄映画祭はVRを楽しめるシアターを持っていて日常的に実践できるのが強みです。VR、XRを大規模で映画祭で展開するには、人材や設備などかなり予算がかかります。一過性の映画祭のためだけにやるのではなく、常設的にできることが、育成や準備としても大切です。なぜ、高雄映画祭がXRの専門部門をつくれるかといえば、常設して蓄積してきた環境設備があるからです。
「虚」と「実」の捉え方がポイント、VRとXRの違いは?
ワンダー・オン:「Cinema at Sea」で上映した作品はVR作品です。VRとXRの違いは?
リー・シャンチャオ:VRは、ヘッドセットをもって体験するもの。XRはもっと虚実ないまぜにした複合的なもので、携帯などさまざまな機材と連携することができます。虚実ないまぜ、がポイントであり、VRは「虚」の世界をVRヘッドセットを通して観るもの。XRは現実の風景などの映像の中に虚をいれて、「虚」と「実」を一緒に体験できるものです。
ワンダー・オン:XRは面白い体験でした。ヘッドセットを付けた瞬間にコンサート会場に様変わりする。面白いのが、自分と同じ空間にいる人とインタラクティブなコミュニケーションがとれる。ゲームなどでも展開できる可能性がありますね。
リー・シャンチャオ:これからVR/XRが主流になっていくかというと、また違うと思います。これまではVR、XRは映画祭のプログラムとして組まれてきました。VR/XRというものが確立されてきた今は、映画の中だけで語るものではなくなってきていると思います。映画の体験とは全く違うものになってきている。
今は映画祭の一部門でやっていることが多いですが、VR作品だけの映画祭をつくることが可能だと思います。VRヘッドセットを装着して個々が作品を観賞することで、ネットワークを作ることは難しいと思いますが、それがXRになると、体験している空間を共有できていければ、面白いことがもっとできるはずです。
注目の先端技術だがまだ発展途中、継続するために支援が必要
ワンダー・オン:今の話しは感慨深いですね。私が思うのは、これからは体験格差ができてしまうのではということです。ヘッドセットは高価で、ある程度の金額を払った人でないと体験できないもの。そして、作る側も製作費をバックアップしてもらわないと作れない。観たい、作りたいという考えがあってもそういった課題があると思いますが、その点についてはどう思いますか?
リー・シャンチャオ:ヘッドセットひとつでいろいろな体験が可能になるのでもちろん大事です。今年の高雄映画祭で大規模な実験をした中で言うと、VR体験の会場を確保しないといけない問題もありました。施設面は特に、政府の支援なくては難しいのではないかと思います。体験するアナログの場がないと作品自体が良くなっていかないですね。HTCのような民間企業とタイアップするなど、企業との支援、公的な支援、両輪での支援は必要だと思います。
リー・シャンチャオ:僕の理解が間違っていたらごめんなさい、VR/XR作品はコストがかかる、そして回収が難しい、という理解であっていますか?
チェン・シーアン:VR/XRは大きな場を確保しないといけない、ロケーションベースのエンタメとも言われています。技術だけでなく体験のハードルもあります。携帯、パッド、PCを持っている、は特別なことではないですが、そこまで浸透していくと変わると思いますが、ロケーションベースのエンタメをどう発展していくかかが課題です。現状では回収はどうしてもできないので、政府の支援に頼る形になっていますね。
ワンダー・オン:90年代に「ネットフリックス」の話しをしてもちんぷんかんぷんだったと思います。VR/XRも今は具体的に未来を言い当てるのは難しいですよね。まだ未完成でありながら、実践精神をもって実施しないとリードできないと思います。世界で戦っていくためには、今実践をしていくことが大事ですね。
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