「奈良のかき氷」空前ブームのなぜ? “火付け役”の有名店でふわふわの絶品氷を食べ比べ
“かき氷の聖地”と呼ばれる奈良。氷に関する故事やゆかりの神社もあることから、かき氷で街が盛り上がり。現在、提供店は50店以上。中には冬でも味わえるお店も! その火付け役となった人気店で、バリエ豊かなメニューを食べ比べてきました。
かき氷は夏の風物詩といわれますが、筆者は凍てつくような冬に、暖房のきいたぽかぽかの室内でいただくかき氷が大好き! 関東エリアで一年中かき氷を提供する店を探しては、たびたび足を運んできました。
数年前、奈良でもそんなお店を発見! しかも1店舗だけでなく、エリア全体でかき氷ガイドを作ったりと、かき氷で街を盛り上げていることを知りました。最近は、奈良へかき氷を目当てに訪れる国内外からの観光客も増加中。ブームの仕掛け役である人気店へ行ってきました。
氷室の守護神が祀られたのが起源。氷の行事やおみくじでも知られる「氷室神社」
かき氷を味わう前に訪れたのは、天然の氷を採取して保管していた「氷室」の名を冠する、奈良市春日野の「氷室神社」。
和銅3(710)年、平城京遷都にともない、元明天皇の勅命によって三笠山麓や春日野町に造られた氷室の守護神として祀られたことが始まりで、翌年に天皇に氷を献上する勅祭が行われ、70年以上に渡り、平城宮に氷を納めていたとか。
そうした故事があることから、今も製氷や冷蔵冷凍関連の業界の信仰を集めていて、巨大な氷柱を立てて商売繁盛を祈願する「献氷祭」が5月1日に営まれています。
毎月1日の日没から21時頃(1月のみ0~4時)には、氷の行燈(あんどん)に灯をともす「氷献灯(こおりけんとう)」という行事も行われています。願い事を書いた絵馬の上に、四角く切り出した氷の行燈を置き、それを境内に並べて、ろうそくに灯をともします。石段に等間隔に置かれる氷の明かりは幻想的で、見る者を魅了します。
参拝客が気軽にいつでも体験できるのが、氷みくじ。引いたおみくじを四角く切り出した氷の上に貼り付けると、文字が浮かび上がってくるから不思議。水みくじはこれまでにも体験したことがありますが、氷みくじはこちらが初めて! 寒い時期は氷が溶けにくく、ひんやりとした感触に身が引き締まります。
境内では、かわいいかき氷の絵柄の入った絵馬や肌守りも授与されているので、かき氷好きはチェックしたいもの。
「氷室神社」
・奈良県奈良市春日野町1-4
・TEL:0742-23-7297
・拝観時間:6:30~17:30(4~10月は6:00~18:00)
・定休日:無休
・拝観料:無料
・交通アクセス:近鉄奈良駅から徒歩約15分
「氷室神社」に参拝し、おいしいかき氷をいただけることに感謝したところで、早速、冬でもかき氷が味わえる、奈良を代表するかき氷専門店へと足を運びました。
奈良のかき氷を全国区へと導いた「kakigori ほうせき箱」で絶品氷を食べ比べ
2015年に5.5坪のお店からスタート、2018年に興福寺にほど近い「奈良もちいどのセンター街」に移転、店舗を拡張したかき氷専門店「kakigori ほうせき箱」。共同経営者のひとり平井宗助さんが、地産地消をいち早く取り入れていたカフェ「おちゃのこ」のかき氷に魅せられ、「おちゃのこ」のスタッフだった岡田桂子さんとともにオープンしました。
2人は2014年に氷室神社の献氷祭の神賑(かみにぎわい)行事としてかき氷の祭典「ひむろしらゆき祭」を開催。以後、毎年開催され、奈良は全国からかき氷ラバーが集まる、かき氷の聖地へと発展を遂げました。
「kakigori ほうせき箱」のかき氷の特徴は、シロップにエスプーマを取り入れていること。創業当時は関西初と話題になりました。イチゴをはじめ奈良産の旬のフルーツや大和茶、牛乳、西吉野産はちみつなど、奈良産の食材を積極的に取り入れ、見た目のかわいらしさやインパクトの強さに、かき氷のイメージが覆されました。
こちらは一年を通してかき氷メニューを提供。定番と季節替わりのメニューを合わせて常時約10種類がラインアップ。
カラフルで映えると人気の「パステルフルーツ氷」は、すだちシロップ、マンゴーシロップ、バタフライピーシロップ、MIXラズベリーシロップなどがカラフルな層をなし、その上にミルクエスプーマとヨーグルトエスプーマがこんもり。そして、てっぺんにりんごゼリーをトッピング(季節によりメニューに変更あり、以下同)。
「大人の抹茶DX」は、大和抹茶のシロップとミルクシロップに、マスカルポーネクリームが隠れていて、ラム酒も効いた大人味。
「琥珀パールDX氷」は、ミルクシロップとミルクエスプーマのあっさりした氷に自家製カラメルとナッツがたっぷりとかかり、中に隠れたピスタチオペーストがアクセントに。ナッツのザクザクした食感と香ばしさも相まって、筆者はこちらがイチオシでした!
びっくりするようなボリュームに、1人で食べきれるか心配になりますが、氷がふんわりときめ細かくて軽く、口に入れるとすーっと溶けていくので、不思議と食べ切れてしまいます。自家製のシロップやエスプーマも甘ったるくなく、飽きのこない味。しかも、頭が痛くなりません。
使用する氷は市内の「日乃出製氷」が製造する大和氷室。専用の機械で48時間以上凍らせた純氷といいますが、こちらは通常の純氷よりも長く72時間かけて凍らせているため、薄く削っても崩れにくく、口溶けもいいのだとか。
実は、共同経営者の平井さんの家業は、柿の葉すしの老舗店「平宗」。平井さんは柿の葉を活かすことができないかと頭を捻り、柿の葉茶を商品化。奈良の自然栽培された柿の葉茶と和紅茶をシロップに用いたかき氷、「柿の葉茶&和紅茶とカスタード」も考案しました。
通年営業していることから、夏以外の季節を目がけて訪れるリピーターも多いとか。冬には冬に旬を迎える果物、例えば、大和橘や熟柿(完熟したトロトロの柿を氷にかける)、イチゴのかき氷などがお目見え。ソースも夏にはお目にかかれない、モッタリ系ソースを使うなど、夏とはひと味違った、冬ならではのかき氷に出会えますよ!
「kakigori ほうせき箱」
・住所:奈良県奈良市餅飯殿町47
・TEL:0742-93-4260
・営業時間:10:00~12:50LO、14:00~16:50LO(土・日曜は~17:20LO)※季節により変動あり
・定休日:木曜
・交通アクセス:近鉄奈良駅から徒歩約8分
「kakigori ほうせき箱」や「ひむろしらゆき祭」がきっかけで、今や、奈良にはかき氷を提供するお店が50軒以上に増え、通年楽しめるお店も少なくありません。筆者は、姉妹店である「柿の葉茶専門店SOUSUKE by ほうせき箱」にも行ってきました。
自然栽培の柿の葉をさまざまに商品化。もちろん限定かき氷にも出会える!
奈良県庁のお隣、奈良公園バスターミナルに、2022年にオープンした「柿の葉茶専門店SOUSUKE by ほうせき箱」では、「kakigori ほうせき箱」で提供するメニューとは異なる特製かき氷が味わえるので、かき氷ラバーはこちも要チェックです!
筆者がいただいたのは、定番人気のSOUSUKE。自社商品の柿の葉茶薪火焙煎深煎にミルクシロップ、チーズクリームやミックスナッツを合わせた大人の味。てっぺんには鹿さんクッキーをトッピング(+100円)。
こちらのかき氷は常時約6種類。季節ごとにメニューは変わりますが、柿の葉茶や大和抹茶、加賀棒茶などのお茶や、チーズやナッツ、ハーブやリキュールなどを自在に使い、大人の味に仕上がっている印象。鹿さんクッキーだけでなく、練乳、自家製つぶあんなどをプラス料金でトッピングできるので、自分好みにアレンジできるのもうれしいですね。
こちらの店ではかき氷が食べられるだけでなく、奈良で自然栽培された柿の葉茶を用いたお茶や調味料、シロップや飴といった食品のほか、雑貨も商品化され、販売されています。薪火焙煎の柿の葉茶は、ほうじ茶にも似た豊かな香りをもち、ノンカフェインなのでカフェインに敏感な方にも安心。
柿の葉を使った調味料も豊富。トマトソースやジェノベーゼソース、はちみつもあります。柿の葉にはタンニンやルチン、ビタミンCといった成分が多く含まれるそう。
さらに、柿の葉に柿渋、はちみつを配合し、釜炊き製法で丁寧に作った石けんや、合成着色料・合成香料は使用せず、柿の葉エキスに海塩、ハーブを組み合わせた入浴剤までずらり。柿の葉のもつ抗酸化作用や免疫力強化作用が働いて、体を芯まで温め、肌がしっとりと潤うのが分かるはず。
「柿の葉茶専門店 SOSUKE by ほうせき箱」
・住所:奈良県奈良市登大路町76 奈良公園バスターミナル西棟1F
・TEL:なし
・営業時間:ショップ10:00~18:00、飲食12:00~17:00(LO)
・定休日:月曜(物販のみ)
・交通アクセス:近鉄奈良駅から徒歩約8分
奈良にはこの他にも、通年かき氷が楽しめるお店がいっぱい。奈良かき氷ガイドは毎年、氷室神社や掲載店舗で配布中(なくなり次第終了)。2024 奈良かき氷ガイド製作委員会の公式Webサイトでもチェックできるのでアクセスしてみて。
なお、令和7年版は2025年3月下旬に発行予定! 筆者も新版を入手したら、さらなるかき氷行脚を楽しみたいと思っています。
執筆者:塩田 典子(一人旅ガイド)
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