同じ「MSCベリッシマ」でも価格やサービスが違う? 安さだけでない賢いクルーズの選び方
クルーズ旅行を申し込む際、「同じ船なのに価格が違う」ことがあります。 通年日本を周遊する人気のクルーズ船「MSCベリッシマ」も、「価格差が結構あるのはなぜか?」という声が多く聞かれます。賢いクルーズの選び方をレクチャーします。
同じクルーズ船なのに価格が違う理由は、大きく二つあります。一つは、手配するタイミングによる違い。早期予約や出発間際(※出発2カ月前ぐらい以降)の予約はディスカウントになることも。
そしてもう一つ、今回の主題となるのが「自主運航」と「チャーター」による違いです。前者は船会社が通常運航しているクルーズ、後者は旅行会社などが船をチャーターして運航するものです。
筆者は両パターンで、「MSCベリッシマ」へ乗船をしましたが、乗客や船内の雰囲気、サービスにずいぶん違いがありました。今回は同じ船でも価格やサービスが違う理由と賢い選び方をレクチャーします。
※本記事では外国船日本発着クルーズ(例としてMSCベリッシマ)について、自主運航とチャーター(例としてジャパネットクルーズ)の違いをご紹介します
自主運航VSチャーター それぞれの特徴は?
MSCベリッシマの場合、船会社の自主運航クルーズでは、1泊当たりの価格は1万円代~、そして18歳未満の同室の子どもは3人目・4人目はクルーズ代金無料(※チップや港湾税などは別途)という料金体系。そのためファミリーに優しい船として知られ、夏休みなどを中心に船内はにぎやかな雰囲気となります。
また自主運航は海外ゲストも多く、サービスも海外仕様。日本発着クルーズでは、レストランに日本語メニューがあるなど一定の対応はありますが、日本語が話せるスタッフはそれほど多くはない印象です。
対して、チャータークルーズは貸切なので、価格やサービスもチャーターする会社でカスタマイズが可能。実はチャーターする会社により内容もかなり違います。
日本発着の場合、乗客もほぼ日本人で、サービスも日本人向けにアレンジされることが多く、例えば食事のラインアップや量、味付けなどを変えたり、日本人好みのイベントをチャーター会社が独自で開催することも。
レストランに日本語メニューが用意されていたり、船内のイベントでは通訳が付いたり、日本語が話せるスタッフが多く乗船していたりなど、言葉の面のケアも充実していて安心感があります。
チャータークルーズのメリットは? ジャパネットチャーターの場合
チャータークルーズは、価格体系もサービスもチャーターする企業により中身は異なります。例えばジャパネットクルーズでは、MSCベリッシマのチャータークルーズを来年(2025年)も春と秋に運航します。その価格は1泊当たり2万5000円~。自主運航と比較すると割高に感じますよね?
でも乗船してみると、快適に船旅が満喫できるサポートなど、さまざまなサービスがクルーズ代金に含まれていて、決して高くはないと感じます。快適さを求める方、初めてクルーズ旅行の方などにおすすめです。
そうはいっても価格差がある分、何が違うのか? は気になるところ。ジャパネットの「MSCベリッシマで巡る~日本一周クルーズ10日間」への乗船をもとに、そのサービスを具体的に見ていきましょう。
乗船前から安心、情報満載の冊子&人数を絞って快適に
・出発前に、どこよりも親切な「MSCベリッシマ」クルーズの冊子が到着
初めての乗船だと、クルーズに際して分からないことや不安もあります。ジャパネットクルーズでは、船内施設や過ごし方、寄港地観光まで、先回りした情報が満載の冊子を乗船までに届けてくれます。
例えば、船内にある20のバーや各レストランの特徴、電源のソケットや洗面台の形状など部屋の設備、あると便利な持ち物まで、詳しく掲載。
クルーズを経験している筆者も「なるほど」と思うグッズも紹介されていました。同じ船(MSCベリッシマ)で、何度もチャータークルーズを実施してノウハウが溜まっているからこその実践的な情報は、不安をワクワクに変え、乗船を待ち遠しくしてくれます。
・乗客数は1室2名が基本。船内の混雑は大幅緩和
MSCベリッシマの乗客定員は5000人と多いこともあり、どうしても混雑することがあります。MECベリッシマに限らず、大きな船では、施設が充実している分、混雑はある意味仕方ないこと。
特にMSCベリッシマの自主運航は、子ども料金が無料のため1室あたりの人数が多く、結果として総客数が増える傾向に。毎晩のショーも整理券が必要だったり、乗下船に時間を要したりすることも。また、お子さま連れが多いので、プールサイドやウォータ―パークは混雑することが多く、船内全体がにぎやかな雰囲気です。
一方、ジャパネットのチャータークルーズは1室あたり2名が基本で、全体の乗客数も4000名ほどに抑えているといいます。長期休暇時を避けた運航であること、子どもも料金がかかることもありファミリーは少なく、大人の雰囲気。
ショーも整理券なく毎晩楽しめましたし、甲板にあるプールのデッキチェアも空いています。ウォーターパークのスライダーなども待ち時間なしで滑り放題でした。
初心者も船を120%楽しめる、ジャパネット独自のサービスとは?
・船内新聞は2種類。今必要な情報が豊富
船内の催しや重要事項は、毎晩配られる船内新聞でチェックしますが、それとは別に「ジャパネット通信」が毎日配られます。これが非常に便利!
かゆいところに手が届くような気が利く情報が載っていたり、知らないと見逃してしまうイベントや施設が紹介されていて、クルーズライフを楽しむうえで欠かせない情報源になります。
・充実した日本語サポート。日本語の掲示やサポートデスクも
レストランのメニューが日本語なのは当たり前。エレベーターには日本語の船内マップが貼られ、迷いやすい場所の表示も日本語の案内になっています。
ジャパネットデスクでは寄港地観光などの相談も日本語でOK。またジャパネットクルーズのスタッフが多く乗船しており、何かあったときに気軽に相談できるので安心です。
・150種のドリンクが飲み放題! 船内にある20のバー&カフェが行きつけに
カジュアル船全般に言えることですが、船内の飲み物の値段は意外と高く、MSCベリッシマでは、1リットルのペットボトルの水が5.5ドル、500mlのペットボトル飲料が4.5ドルほど。お酒については8ドル~10ドルがボリュームゾーン。
飲み放題パッケージもあるのですが、対象となる飲み物がよく分からない、同室の全員の申し込みが必要などシステムが煩雑で少々使いにくいと感じます。
ジャパネットのチャータークルーズでは、そのようなわずらわしさを避けるため、10ドル以内のドリンクは、アルコールも含めて全て無料。その種類は150種にもなります。船内には20のカフェ&バーがあるので、毎日「どこで何を飲もう?」と話し合うのが日課に。
もちろんレストランでは、フルコースの料理にあわせてお酒を頂くこともでき、お酒が好きな方にはたまらないシステム。
あまりお酒は飲まないわが家も、ノンアルコールのおしゃれなカクテルやおいしいカフェラテをいただきました。ありがたかったのは、ミネラルウォーターが無料なこと。意外と消費しますし、円安だけにありがたさを感じます。
・食事のポーションは小さめ。朝食には「おにぎり」も
外国客船の食事は、一皿の大きさにびっくりすることも。ジャパネットクルーズでは食事のポーションは小さめにして、いろいろな料理を楽しめるようにしているとか。フルコースの際も、メイン料理を2つなど、好きなものを好きなだけいただけます。
また和食の味は、日本人スタッフが毎日チェックしているそう。驚いたのは「おにぎり」が、ビュッフェにあること。これはジャパネットクルーズのオリジナルサービスだといいます。
・ラジオ体操にライブラリー、ジャパネット独自のイベントも充実
毎朝のラジオ体操や、約1000冊の書籍がそろうジャパネットライブラリー、ゲスト参加型のファッションショー、そして生バンドを従えて大海原を舞台に歌える生カラオケなどなど、ジャパネットが主催のイベントがたくさん。船内の楽しみの選択肢が広がります。
また最初の終日航海日には、船内のスタンプラリーが開催され、巡る中で施設を見学し、クルーズライフを楽しむ準備が整います。
寄港地観光のサポートも万全。無料循環バスで手軽に観光
・無料循環バスを寄港地全てで運航。中心部までの足を確保
荷物を船に置いて寄港地を観光できるのもクルーズの醍醐味(だいごみ)です。ただ大型船は寄港できる港が限られ、貨物用など辺ぴな埠頭に着岸することも多々あります。着いたのはいいけれど最寄りの公共交通機関までは歩けず、タクシーも大混雑で困ることも多いのです。
そのような中、ジャパネットクルーズでは、全ての寄港地で無料の循環バスを用意。主要な駅や観光地へのアクセスが確保されているので、事前に調べなくてもふらっと寄港地を観光できて本当に便利です。
・観光協会による寄港地説明会を実施
寄港地に立ち寄る前日には、観光協会の方などが寄港地の見どころや、循環バスを利用した旅プランなどを教えてくれる寄港地説明会を実施。ノープランでとりあえず船に乗っても、ガイドブックがなくても、しっかり寄港地の情報が船上でゲットできます。
・港では歓迎イベントやクルーズ乗船者へのサービスも
ジャパネットクルーズの「MSCベリッシマチャーター日本一周コース」は、東京発着で、函館、秋田、金沢、済州島(韓国)、鹿児島を巡り、東京にもどる10日間のコース。このコースを何度も実施しているため、港との連携もあって乗下船の手続きもスムーズ。
寄港地にとってクルーズは経済効果が大きく、定期的に立ち寄るジャパネットのクルーズには歓迎ムードが漂います。秋田県では、お土産の割引や、秋田市内でクルーズのお客さまを歓迎する催しを実施するなどのサービスもありました。
「乗って初めて分かる不便さ」を、あらかじめ解消し、しっかりと「クルーズ楽しい!」と思えるようになっていることに、クルーズ歴15年の筆者も驚きました。
価格だけではなく希望や内容で使い分けるのが賢い選択
冒頭でも触れましたが、どんな人が乗っているかで船内の雰囲気は大きく変わります。子どもが多ければにぎやかで、子どもたちはキッズクラブでの交流も楽しめます。逆に大人が多ければゆったりと過ごせます。
海外の人が多ければサービスはインターナショナル、日本人向けのチャーターならサービスも日本人ファーストに。
ジャパネットのチャータークルーズは、比較的年齢層も高めでサポートが手厚く「大人の船旅」「クルーズデビュー」との相性がいいと感じます。
子ども連れの場合は、プールなどが空いているメリットはありますが、子ども料金がかかること、キッズクラブも数名しかいないなど、同世代のお子さんとの交流がしにくいネックもあります。
もちろんチャータークルーズにもいろいろあり、チャーターする会社により、ターゲットやテーマも変わります。夏休みやGWには、船内イベントやサービスを家族向けにした、ファミリーをターゲットにしたチャータークルーズを実施する会社もあります。
この通りチャータークルーズの中身は、それぞれ違うので、事前に希望の過ごし方に合いそうか、価格はどうか、またチャーター会社の評判なども吟味するといいでしょう。
慣れてきたら、価格が手ごろな自主運航クルーズにチャレンジをしてみるのもいいでしょう。ただし、自分で手配・管理・解決が必要なことが多く、船内でのサポートも基本は船会社頼り。言葉の面やトラブルがあった際に不便を感じることもあるので注意が必要です。
外国船の自主運航クルーズを申し込む際、直接船会社に申し込みができる場合もありますが、比較的上級者向けだと感じます。
クルーズを取り扱う旅行会社も増えていますし、旅行会社のスタッフが乗船し船内生活をサポートしてくれる会社もあります。サポート体制をチェックしてどこで申し込むかを検討するといいでしょう。
同じ船でも、価格やサービスが違う……しっかり頭にいれて、ご自身にあったクルーズを上手に選びクルーズを満喫してくださいね。
執筆者:村田 和子(旅の準備・お得・便利ガイド)
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