「観光列車」満足度ランキング! 一生に一度は乗りたいおすすめTOP10【2024年】

2024.10.13 21:15
提供:All About

観光列車はコロナ禍を経ても相変わらず人気で、全国には数えきれないくらいの列車が走っている。そこで、2019年、2021年に続き、筆者が取材できた列車について、「満足度の高かった列車TOP10」を選んでみた。

観光列車の人気は衰えを知らない。全国を走る数多くの観光列車の中から、筆者が実際に乗車し取材した列車について、「満足度の高かった観光列車TOP10」を選定した。各車両の車内設備、車窓、飲食サービス、車内イベントなどのユニークさ、沿線観光地の魅力、総合的な満足度を点数化し、順位を決定している。

なお、「ななつ星in九州」「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」「TRAIN SUITE 四季島」「THE ROYAL EXPRESS」といった高額で抽選倍率の高い超豪華列車は、別格として今回の対象から除外した。

「THE ROYAL EXPRESS」は超豪華クルーズトレインのため、今回のランキングの対象外
「THE ROYAL EXPRESS」は超豪華クルーズトレインのため、今回のランキングの対象外



観光列車とは?

満足度ランキングの前に、観光列車とは何かまとめておきたい。観光列車とは、単なる移動手段ではなく、乗車自体を楽しむための列車だ。以下のような特徴がある。

車両の特徴
「スペーシアX」のコックピットラウンジ
「スペーシアX」のコックピットラウンジ


・専用車両での運行
・車窓を楽しむための展望車や展望スペースの設置
・ゆったりとくつろげるようなグリーン車並みの座席やソファー席の設置

サービスの特徴
「ろくもん」のドリンクサービス
「ろくもん」のドリンクサービス


・アテンダント(客室乗務員)による車内や車窓の案内
・写真撮影の手助けなどのおもてなし
・飲食やグッズの販売
・沿線にちなんだイベント(楽器演奏、民話の語りなど)

列車ダイヤの特徴
「かんぱち」田主丸駅でのおもてなし
「かんぱち」田主丸駅でのおもてなし


・ゆっくりとした走行
・絶景区間での徐行や撮影停車
・イベントや景色を楽しむための長時間停車

こうした非日常的で優雅な体験を提供するのが観光列車だ。多くの列車で自由席の設定はないため、事前に指定券の購入が必要となる。

では、「満足度の高かった観光列車TOP10」を見ていこう。

第10位:ラ・マル・ド・ボア(JR西日本)

岡山駅に入線した「ラ・マル・ド・ボア」
岡山駅に入線した「ラ・マル・ド・ボア」


2017年夏にデビューした比較的新しい列車。岡山を拠点に、尾道経由で三原駅方面に向かう「ラ・マル しまなみ」、宇野駅方面に向かう「ラ・マル せとうち」、赤穂線の日生(ひなせ)駅方面に向かう「ラ・マル 備前長船」、瀬戸大橋を渡って琴平方面に向かう「ラ・マル ことひら」など、複数のルートを設定している。

車両の半分はカウンター席で車窓がとことん楽しめる。随所に設置されたアート作品などの車内インテリアは高級感があり、ゆったりとくつろげる。予約必須だが、食事やスイーツも味わえるし、岡山の名産品の販売もある。サイクルスペースがあるので、列車によっては自転車持ち込みができ、下車してからの行動も広がる。

列車名の「ラ・マル・ド・ボア」はフランス語で「木製の旅行かばん」の意味。かばんをイメージした窓枠を黒であしらったしゃれた列車だ。JRの観光列車は、非電化区間走行が多いのでディーゼルカー主体だが、この列車は珍しく電車で、全て電化区間を走行している。

第9位:ろくもん(しなの鉄道)

JR線に乗り入れ姨捨駅に停車中の「ろくもん」
JR線に乗り入れ姨捨駅に停車中の「ろくもん」


旧信越本線の一部区間を転換した第3セクターしなの鉄道が運行する観光列車。JR九州の多くの観光列車を手掛けた水戸岡鋭治氏がデザインした個性的な車両だ。ふすま張りの料亭風の和風個室や開放的なテーブル席、子どもが楽しめる木のプールなど、魅力満載の車内となっている。

軽井沢駅~長野駅間でのレストラン列車としての運行のほか、軽井沢駅発のワイントレイン、JR篠ノ井線乗り入れで姨捨駅付近の夜景を満喫できるナイトクルーズ列車など、バラエティーに富んだ運行をしている。リピーターでも十分に楽しめるだろう。

軽井沢をはじめ、温泉地やリゾート地が沿線に点在しているため、「ろくもん」を利用した観光や保養旅行もおすすめだ。

2019年1月には「北信濃雪見酒プラン」が登場。長野駅から黒姫駅まで北しなの線に乗り入れ、冬の信州の魅力をアピールしている。車内での生演奏など新たな試みも行い、何度でも乗りたくなる列車となっている。

第8位:リゾートしらかみ 「橅(ぶな)」編成など(JR東日本)

ハイブリッド車両となった「橅(ぶな)」編成
ハイブリッド車両となった「橅(ぶな)」編成


2022年4月に運行25周年を迎え、すっかり人気が定着した老舗的存在の観光列車だ。観光シーズンには1日3往復し、3種類の車両が使用されている。青池編成に続き、2016年7月にはブナ編成が新しいハイブリッド車両に置き換えられ、装いを新たにした。

(ぶな)の愛称をイメージした木製のシンボルツリーを車内に配置し、非日常感を演出している。カウンターや展望室、イベントスペースもあり、車内散策を楽しめる。

津軽三味線の生演奏や津軽弁語り部の実演といった車内イベントのほか、能代駅でのバスケットボールシュート、千畳敷駅での海岸散策など、停車駅でのユニークな体験も用意されている。列車は特急ではなく快速列車のため、乗車券のほか指定券(通年840円)のみで乗車可能。非常にリーズナブルな料金設定で、満足度が高くなっている。

第7位:ふたつ星4047(JR九州)

大村湾に面した千綿駅に停車中の「ふたつ星4047」
大村湾に面した千綿駅に停車中の「ふたつ星4047」


2022年9月、西九州新幹線開業とともに走り始めたD&S列車(JR九州の観光列車の正式名称)。「西九州の海めぐり」がコンセプトで、午前便は武雄温泉駅から有明海に沿った長崎本線経由で長崎へ。

午後便は長崎駅から長崎本線(旧線)経由で諫早に向かい、大村湾に沿って大村線、佐世保線経由で武雄温泉駅に戻る。午前と午後でルートが異なる点が異色だ。

3両編成のうち中間の2号車はフリースペースで、売店で販売する飲食物や土産、グッズなどの購入のほか、沿線名産品の試食・試飲体験といったイベントも行われる。

午前便は肥前浜駅、午後便は千綿駅での10分程度の長時間停車があり、地元の人々によるおもてなしがあるのも楽しみだ。列車名の4047とは使用される車両(ディーゼルカー)のキハ40、キハ47にちなんだもの。

この車両は、2022年3月までD&S列車「はやとの風」に使用されていたものを再改造したものだ。この列車と西九州新幹線を組み合わせた鉄道旅が人気を博している。

第6位:四国まんなか千年ものがたり(JR四国)

琴平駅に到着する「四国まんなか千年ものがたり」
琴平駅に到着する「四国まんなか千年ものがたり」


「伊予灘ものがたり」に続くJR四国の本格的観光列車第2弾。特急用ディーゼルカーを改造した3両編成の車両は、古民家風の落ち着いた雰囲気で、テーブル席やカウンター席が主体となっている。

大歩危小歩危の渓谷、讃岐山脈の峠越えなど、変化に富んだ車窓を眺めながら食事が楽しめる点が魅力だ。各駅での停車時イベントも内容が充実している。それでいて、特急グリーン車料金プラス食事代だけで乗車できるため、良心的な価格設定となっている。

2019年よりランクが下がったのは、ほかの列車の得点がアップしたためで、この列車の魅力が下がったわけではない。JR四国では「ものがたり列車」第3弾として、「志国土佐 時代の夜明けのものがたり」を2020年7月より高知駅~窪川駅間(土讃線)で運行開始した。こちらも注目の列車だ。

第5位:かんぱち・いちろく(JR九州)

恵良駅(JR久大本線)に停車中の「かんぱち」
恵良駅(JR久大本線)に停車中の「かんぱち」


2024年4月にデビューしたばかりのJR九州で一番新しいD&S列車。JR九州のD&S列車といえば、長らく水戸岡鋭治氏がデザインを担当してきたが、この列車は鹿児島のデザイン会社IFOO(イフ―)が担当。

水戸岡デザインのよいところを踏襲しつつも、大きな窓や調度品のシンプルな塗装など独自色を打ち出し、新たな時代の観光列車を強くアピールしている。

列車名は、運転区間のかなりの部分を占める久大本線の開通に寄与した麻生観八氏ならびに衞藤(えとう)一六氏の名前に由来する。博多発が「かんぱち」(月・水・土)、別府発が「いちろく」(火・金・日)で2日かけて1往復している(木曜は運転しない)。

車内での食事のほか、博多発は田主丸駅と恵良駅、別府発は天ヶ瀬駅とうきは駅で10~20分の停車時間があり、地元の人々との交流を楽しむことができる。長年D&S列車運行で培われたノウハウをたっぷりと注ぎ込んだJR九州らしい観光列車といえるだろう。

第4位:スペーシアX

東武日光駅を発車したスペーシアX
東武日光駅を発車したスペーシアX


東武鉄道が満を持して2023年夏にデビューさせた豪華観光特急。先頭車(1号車と6号車)のXをあしらった窓の形状とともに、6種類のユニークなシートが話題を呼んでいる。

一流ホテルのラウンジのようなコックピットラウンジ、運転台後ろに位置し、通路がなく左右の車窓をグループ7人で独占できるコックピットスイート、ヨーロッパの国際列車をほうふつとさせるコンパートメント、半個室風のボックスシート、グランクラス並みのプレミアムシート、そしてスタンダードシート。

スタンダードシートといってもJR在来線のグリーン車並みの快適さだ。

列車ダイヤ上の制約もあり、長時間停車やゆっくりと走る区間などは設定されていないので、乗車時間は浅草~東武日光で2時間に満たない。それゆえ、コース料理などを食べる余裕はない。代わりに、特製のクラフトビール(ナマ)やクラフトコーヒーなどを味わえるように極上のドリンクがカフェカウンターにて用意されている。

関西の「しまかぜ」に匹敵する豪華観光特急が関東にも登場したことを喜びたい。

第3位:JRKYUSHU DISCOVER TRAIN「或る列車」(JR九州)

由布院駅に停車中の「或る列車」
由布院駅に停車中の「或る列車」


20世紀初頭、当時の九州鉄道に登場したものの、ほとんど活躍することがなかった幻の豪華列車「或る列車」。横浜の原鉄道模型博物館に残る模型を参考に水戸岡鋭治氏がデザインし、21世紀の九州によみがえらせた話題の車両だ。

予算に妥協せずに造られたため「ななつ星in九州」並みの豪華さで、JR九州に数あるD&S列車(観光列車)とは一線を画したインテリアが評判を呼んでいる。

乗車時間は約3時間で、2021年11月からコース料理を満喫する列車に生まれ変わり、ルートも博多駅~由布院駅に固定された。時間的にも予算的にも「ななつ星」はやや難しいという人にとって、この列車は欲求をある程度満たせるだろう。

現実とはかけ離れた異次元の夢の世界で過ごせるようにとのコンセプトから、窓は大きくないため、車窓を楽しむというよりは車内でのゴージャスな雰囲気を堪能する列車といえる。

第2位:観光特急しまかぜ(近畿日本鉄道)

名古屋市内、米野駅を通過する「しまかぜ」
名古屋市内、米野駅を通過する「しまかぜ」


さまざまな車両で特急を運転している近鉄が、その歴史と伝統を踏まえて威信をかけて世に送り出した豪華な観光特急電車だ。ハイデッカー車両やビスタカー以来の伝統である2階建て車両も連結し、独自のカラーリングで最優等列車であることをアピールしている。

本革を使用した白いシートは電動リクライニングを装備し、豪華さを売りにしている。そのほか、グループで楽しめるサロン席、和風個室、洋風個室と多彩な座席が用意されている。カフェカーはカウンター席ながら、ピラフやカレー、うなぎなど温かい食事が楽しめる。往年の食堂車をほうふつとさせる貴重な存在だ。

全てにおいて申し分なく、プレミアム感たっぷりでありながら、法外に高価ではない点が魅力的だ。唯一の弱点といえば、車窓の魅力かもしれない。大阪線の山越え区間、鳥羽付近の海の景色など見どころはあるものの、平坦な区間も多いのが実情だ。車窓を楽しむなら、京都発の列車がおすすめである。

そうした弱点はあるものの、2位になったのは、ほかの列車を圧倒するグレードの高い車両ゆえだ。

第1位:えちごトキめきリゾート雪月花(えちごトキめき鉄道)

直江津駅に停車中の「雪月花」
直江津駅に停車中の「雪月花」


第3セクターのえちごトキめき鉄道が2016年4月に運行を開始したリゾート列車だ。改造車両が多い観光列車の中で、完全な新製車両であり、川西康之氏がデザインを手掛けた。その斬新さが評価され、グッドデザイン賞、ローレル賞をはじめ国内外の賞を数多く受賞している。

地元の旬の食材にこだわったコース料理を味わいながら、妙高山をはじめとする山々、田園風景、日本海と変化に富んだ車窓が楽しめる点が最大のポイントだ。一つの列車で山と海の両方の車窓が堪能できる列車はほかにはない。

数カ所で長時間停車があり、二本木駅のスイッチバック体験、直江津駅の駅弁立ち売り、トンネル内にある筒石駅での途中下車体験など多彩なイベントも用意されている。そのほか、駅や車内でのおもてなしも充実しており、あっという間に3時間の旅は終わってしまう。

工夫を凝らした車内も魅力的で、特に2号車の展望ハイデッキ席は、4名以下のプライベート空間として極上の鉄道旅を味わえる。全ての項目で満点を獲得し、堂々の第1位となった。唯一の欠点といえば、予約が極めて取りにくいことだろう。

なお、ランクインした観光列車の項目ごとの点数は以下の通りである。同点の場合は、列車の格(特急や快速)や豪華さが優れたものを上位とした。※全て筆者の主観に基づいた評価

観光列車ブームの今後

観光列車ブームはとどまるところを知らず、今後も新規の列車が予定されている。しかし、最も車窓が魅力的な北海道において、会社の経営不振もあって注目を集めるような列車がなかったのは残念だ。

2020年になって東急電鉄がJR北海道の線路を借り、普段は横浜駅~伊豆急下田駅を走っている「THE ROYAL EXPRESS」の車両を使って北海道周遊を行った。2021年以降も北海道各地での走行を行い、注目を集めている。

さらに、水戸岡鋭治氏のデザインで、2026年春の運行開始を目指して「赤い星」「青い星」の改造工事の準備を進めている。これは非常に楽しみだ。


執筆者:野田 隆(鉄道ガイド)

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