読めば、旅に出ずにはいられない!130カ国以上を旅した書店員に聞く【春旅のお供にしたい本3選】

春の旅はページをめくる瞬間からすでに始まっています。新しい景色に出会いたくなる本、気持ちをそっと軽くしてくれる物語、旅先の情景が目の前に広がるエッセイ……。読み始めたらどこかへ行きたくなる“旅気分のスイッチを押してくれる”3冊を、六本松 蔦屋書店の旅コンシェルジュ、森卓也(もり たくや)さんに選んでいただきました。
( Index )
『旅屋おかえり』 『おでかけアンソロジー ひとり旅』 『d design travel JEJU』 次の目的地はマグマ!? 世界4周した森さんが描く、これからの旅地図
教えてくれた人
六本松 蔦屋書店 旅コンシェルジュ 森卓也さん
世界4周137カ国を訪れた「旅する書店員」であり、月に1度は旅に出るトラベルホリック。旅の選書ではあらゆるジャンルから本をセレクトし、旅先のような出会いと発見を再現している。書店業務のほか、旅のイベント、グッズ開発、メディア出演など、旅に関するさまざまなことを担当。趣味は旅、写真作品、変な土産集め。
『旅屋おかえり』
“出会い”こそ旅の醍醐味である。
『旅屋おかえり』原田マハ/集英社文庫(2014)売れないタレント「おかえり」こと丘エリカ、32歳。ある日、唯一のレギュラー番組「ちょびっ旅」が打ち切りになり崖っぷちに立たされた彼女の元に、女性から手紙が届く。そこに書かれていたのは病床にある娘の代わりに旅へ出て、その様子を報告してほしい、という依頼だった。これまでにない旅の代行業「旅屋」として、まずは春の角館へと出発することに。
初めて来たのにどこか懐かしく感じる土地ってありますよね。そこにはいつも、旅人たちを「おかえり」と言って温かく迎えてくれる人たちがいます。この本の主人公の“おかえり”も、「おかえりなさい」という言葉に何度も励まされる人のひとり。
旅の代行業「旅屋」を始めた彼女は、その初仕事として秋田県角館町へと向かいます。角館の春といえば、“おかえり”も目指した武家屋敷通りのしだれ桜ですよね。古風な町並みに現れる鮮やかな桜の花、旅先だからこそ生まれる現地の人々との温かい交流……。旅を通じて、途切れた縁を繋ぎ合わせながら成長していく彼女の姿は、旅することの素晴らしさを伝えてくれると同時に、旅への憧れをいっそう掻き立ててくれます。
『おでかけアンソロジー ひとり旅』
春風に誘われて、あてもなくひとり旅に出かけよう。
『おでかけアンソロジー ひとり旅 いつもの私を、少し離れて』阿川佐和子 ほか/だいわ文庫(2025)池波正太郎、西加奈子、いとうあさこ、岸田國士、穂村弘、村上春樹……。41人の著者が綴る「ひとり旅」をテーマにした珠玉のエッセイ集。旅先で感じる開放感、誰にも気兼ねしない自由さなど、ひとり旅だからこそ味わえる特別な瞬間を詰め込んだ一冊。
春って落ち着かないですよね。風に誘われてあてもなく旅に出たくなります。そんなときにこの本をおすすめする理由は3つ。
(1)人気作家から文豪まで、41人の作家がひとり旅へのこだわりを語っていること。
(2)41回も旅の話を聞くと旅に出たくなる。そして春は旅をするのに最高の季節であること。
(3)短いエッセイ集なのでキリ良く読み終われて、あてもなく旅に出られること。
この本には、クラクフやマルタ、サマルカンドなど世界中のたくさんの場所が登場します。

(左)サマルカンド、(右)サマルカンド市場撮影:森卓也
私もクラクフへ行ったことがあるのですが、そこの中央市場広場は荘厳な建物に囲まれていて、まるで自分が舞台に立っているような陶酔感を味わうことができました。地中海の島国マルタでは目もくらむような豪華さの聖ヨハネ大聖堂にため息をつき、ウズベキスタンの青の都・サマルカンドでは、数千年もの歴史を持つ巨大バザールを散策してシルクロードの情緒に浸り……。旅で訪れた場所が本に出てくると、当時の感動も鮮やかに思い出されます。この本を旅のバッグに入れて、あなたなりの旅について考えてみませんか。
聖ヨハネ大聖堂撮影:森卓也
『d design travel JEJU』
本を通じて、旅先のリアルとその魅力が見えてくる。
『d design travel JEJU』D&DEPARTMENT PROJECT(2024)2009年創刊。編集者たちが2ヶ月間暮らすように現地を旅して、本当に感動したものだけを「ロングライフデザイン」の視点で本音で紹介する『d design travel』シリーズより、韓国の済州島を特集した一冊。47都道府県の魅力を発信してきたシリーズの初の海外版であり、火山島である済州島特有の歴史や文化を追求している。ただの観光ガイドブックではなく“読み物”としても楽しめる。
旅先ではやはり地元の人のおすすめがいちばん頼りになると思うのです。もちろん初めて行く土地に知り合いはいないので、この本を開きましょう。この旅行本では編集者が2カ月間、その土地で暮らし地元の人がお勧めする場所を案内してもらいます。そして実際に体験したことをそのまま伝えてくれる。いわば血の通った地域案内本です。
2026年の年明けに私は済州島にいました。自然やリゾートを楽しむ島とあって冬は完全なオフシーズンであり、さらに韓国は旧正月文化なので、日本とは違い大晦日から年越しはとても静かでした。さらに雪も降り、美術館巡りや旧市街のビアバーで過ごす落ち着いた年越しとなりました。雄大な自然が魅力の済州島は春から旅のベストシーズンに入ります。ぜひこの本と一緒に済州島を旅してください。
次の目的地はマグマ!? 世界4周した森さんが描く、これからの旅地図
「旅コンシェルジュ」であり、誰よりも軽やかに世界各国を旅してきた森さん。これまでの旅遍歴や旅先のマストアイテム、これからの旅の予定をお聞きしました。
森さんの旅遍歴を教えてください。
30歳を超えてから行った世界一周旅行で、旅と世界の魅力にハマってしまいました。
サウジアラビア
撮影:森卓也
これまで訪れた国は137カ国で、世界4周をしています。今でも月に1度はどこかを旅していますね。イベントやメディアで旅の話をすることも多いので、できるだけ旅は皆さんが興味を持つようなテーマを設定します。現在、未訪問なのは60カ国。行きにくい国ばかりが残って苦労していますよ(笑)。
(左上から時計回りに)スリランカ、バングラデシュ、エチオピア、南アフリカ
撮影:森卓也
旅先に必ず持っていくものはありますか?
僕の旅の必須アイテムは、小さめの薄いブランケットです。枕にかぶせたり、シーツや毛布代わりにしたり。やはり身体に触れるものは慣れ親しんだものの方が落ち着きますよね。異国にあって自分が安心できるテリトリーを作り出す道具という意識です。メモを取るペンとノート、旅の写真作品も趣味のひとつなのでカメラも必ず持っていきます。
直近予定している旅はありますか?
3月に休みがとれたらオセアニアかアフリカに行くつもりです。オセアニアはバヌアツ共和国のヤスール火山へ。世界でもっとも火口に近づける山と聞いてから、いつか行ってみたいと思っていました。スタジアムで野球を見るくらいの距離でマグマを眺めることができるそうなんです。アフリカは中央部の、赤道ギニアやカメルーン、ガボンあたりに出かけたいですね。日本から離れるほど、日本との差は大きくなり楽しい。コンゴ共和国ならサプールにも会ってみたいです!
旅のヒントは、案外ページの端にひっそりと隠れているもの。今回ご紹介した、旅にまつわる3冊が、あなたの旅の選択肢をほんの少し広げてくれますように……!
写真/集英社文庫、だいわ文庫、D&DEPARTMENT PROJECT、森卓也 文/Nozomi
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