成長し続ける「ベルリン・ファッションウィーク」(宮沢香奈)

2026.02.26 06:00
提供:繊研plus

ベルリンの今年の冬は、寒波の影響で連日氷点下となり、最高気温が氷点下6℃に達するという信じがたい寒さとなった。ドイツ気象庁(DWD)によると、1月の平均気温は氷点下1.9℃で、過去16年間で最も寒い1月となったという。

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シュプレー川だけでなく、街全体が凍りついた1月30日から2月2日にかけて開催されたのが、「2026-27年秋冬ベルリン・ファッションウィーク(以下、BFW)」だ。ここまで厳しい寒さのBFWは初めてだが、それでも国内外から3万人を超えるゲストが来場し、ドレスアップした来場者で溢れるショー会場にいると、外の寒さを忘れさせてくれるほど華やかな世界が広がっていた。

今シーズンは、ランウェイやプレゼンテーションなどを通じて、52ブランドが参加した。ミッテ地区のコンテンポラリーアートギャラリー「KW Institute for Contemporary Art」を会場にショーを行った「WILLIAM FAN(ウィリアム・ファン)」は、“RING THE BELL”をテーマに32ルックを披露。洋服を掛けたハンガーラックや、その下にバッグを配置するなど、ブランドの店舗空間を想起させるインスタレーションを中央に設置し、その周囲をモデルが回遊する演出が印象的だった。

WILLIAM FAN
WILLIAM FAN

オーバーサイズジャケットを主役にしたレイヤードスタイルに加え、立体的な織模様が美しいブロケードとベルベットを組み合わせたクラシカルなルックが際立つ。タイムレスなデザインとエレガンスをバランスよく融合させ、ダウンジャケットやファージャケットといった実用的なアイテムも織り交ぜた見応えあるコレクションとなった。

同じく、会場の中央に水が流れる噴水のようなユニークなインスタレーションを配置し、その周りをモデルが回遊する演出を披露したのが「SF1OG(エスエフワンオージー)」だ。ベルリンのブルータリズム建築を象徴するカジノ跡地のアートスペース「SAVVY Contemporary」を会場に、3D映像や立体写真を円形装置で見せるカイザーパノラマを再現。

SF1OG(Photo: Tom Funk)
SF1OG(Photo: Tom Funk)

ヴィクトリア朝時代の女性の喪服に着想を得たハイネックのジャケットやウエストを絞った構築的なテーラリングを展開。ブラックを基調としながらも繊細なレースやベルベット、光沢のあるサテン素材を織り交ぜ、抑制と装飾性を表現。表面に擦れや毛羽立ち、色落ちを施した“ディザスター”な加工は不完全な美学を提示している。ファーストコレクションからベルリン・ファッション・ウィークで発表を続け、現在では最も注目されるブランドの一つとなっている。

ランウェイショーではなく、ショートフィルムという形式でコレクションを発表したのが、「BALLETSHOFER(バレッツショーファー)」だ。歴史ある映画館「Colosseum」を会場にプレミア上映が行われた。『The perfect candidate』と題された本作は、現代建築を舞台に、シチュエーションごとに一人の登場人物へフォーカスを当てる構成。ルックの代わりの衣装で全身を見せつつ、俳優たちの表情や身体の動きなどで、最新コレクションの世界観を視覚的に描き出した。

Photo: Jeremy Moeller

上映後には同会場でアフターパーティーが開催され、深夜になっても多くの来場者で盛り上がりを見せた。今シーズンは各会場にドリンクバーの設置がなく、ショーの合間に休憩ができるラウンジなどもなかったが、2日目の夜はブランドのアフターパーティーが至るところで開催されており、関係者たちの交流の場となった。私自身もBFWを主催するFashion Council Germanyのスタッフと杯を交わしながら語り合うことができたのは、貴重なひとときとなった。

Photo: Ben Mönks

近年、国際的な影響力を強めているBFWだが、2月2日に発電所跡地の「Kraftwerk Berlin」を会場に開催された“INTERVENTION”のクリエーションは突出していた。コミュニケーション&クリエイティブエージェンシー「Reference Studios」がキュレーションを手掛ける“INTERVENTION”は、革新性と独自性を備えたブランドのみに与えられた特別なランウェイショーである。

グランドフロアと上階の2フロアを贅沢に使用し、旧東ドイツの面影を残すインダストリアルな建築美と共鳴するミニマルな演出の中、BUZIGAHILL、Kenneth Ize、DAGGER、JOHN LAWRENCE SULLIVAN、GmbHがショーを披露。中でも、今回初めてベルリンでコレクションを発表したJOHN LAWRENCE SULLIVANへの注目度は高く、パリやロンドンで培ってきた経験と長年の実績を印象づけた。

JOHN LAWRENCE SULLIVAN(Photo: Finnegan-Koichi-Godenschweger)

また、これまで以上に日本からのゲストが多く、取材数も増えたことが嬉しく、BFWの成長を最も実感した瞬間でもあった。BFWは昨年、主要ブランドを率いて東京でグループエキシビションを開催しており、確かな手応えを得たという。今年も楽天ファッションウィークに合わせて開催を予定しているとのことで、サステナビリティやクラフツマンシップが自然に組み込まれているドイツファッションの最前線が、日本にも広く知れ渡ることを願っている。

パリや東京、ウガンダなどドイツ国外のブランドも参加し、ゲストを含め国際色豊かなBFWだが、パリやロンドン、ミラノのファッションウィークと異なりビッグメゾンの参加はない。しかし、ドイツ拠点のデザイナーを中心にこれだけ多くのブランドが集い、関連イベントも含め充実したプログラムが実現している。かつてのスポンサーであったメルセデス・ベンツや、誰もが知るグローバルブランドの参加がなくとも、十分にインディペンデントで質の高いファッションウィークとして世界に発信できていることを実感した。今後さらなる成長と認知拡大を期待したい。

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長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。

セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。

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