

《第16回ファッションECサミット》販売員との連動、人材育成が成長の鍵

繊研新聞社は6月に第16回「ファッションECサミット」を久々のリアル会場で開いた。ECの優秀・注目のサイトと支援ツールを選ぶ第8回「ファッションECアワード」の表彰式と受賞企業による記念講演を開いた。
エクセレント賞(優秀なECサイト)を受賞した「アンドエスティ」(アンドエスティ)、「パルクローゼット」(パル)、「ベイクルーズストア」(ベイクルーズ)の3社がトークセッションしたほか、フォーカス賞(注目のECサイト)に選ばれた「メゾンスペシャル」(プレイ・プロダクト・スタジオ)、「YZストア」(ユトリ)の2社が対談。サポート賞(効果が高い、または今検討しているEC支援ツール)のリカスタマー、ビジュモも講演。注目のサービス3社によるプレゼンテーションも開かれた。一部抜粋して紹介する。
エクセレント賞
アダストリア ウェブ事業部長 兼 アンドエスティストア オペレーション部長 稗田亮氏パル 取締役専務執行役員プロモーション推進部部長 堀田覚氏ベイクルーズ DX統括執行役員 舛田桂氏ECの重要性が日増しに高まる中、各社は自社ECの機能拡充や使い勝手の向上に取り組んでいる。販売員による情報発信を、いかにECへ送客につなげるかも依然として大きなテーマだ。事業拡大のための人材採用・育成に課題を感じている企業も多い。「自社EC戦略の現在と未来」をテーマに、アダストリアのEC運営子会社アンドエスティ、パル、ベイクルーズの担当者が語った。

アダストリアはファッションを軸としたプラットフォーマー化を目指して24年、自社ECを他社も出店できるオープンモール化した。出店を誘致するだけでなく、商品企画の支援や販売員によるコーディネート投稿機能「スタッフボード」の外販なども行い、他社との協業を増やす。
スタッフボードで人気の販売員の来店イベントやプロデュース商品の販売などを強化しており、スタッフのモチベーションの向上につながっているという。
人材への投資は惜しまない考えだ。デジタルやECの運営に特化した研修の企画にも取り組んでいる。専門性は当然重要だが「ファッションや雑貨が好きという気持ちが大事」と見ている。
今後は自社ポイントが使える場所を増やしたり、買い物の際に他社のポイントもためられるようにするなど、サービスの拡充を進める。
パル堀田氏 人の熱意をどう生かすかが大事パルのEC売上高は約533億円で、売り上げEC化率は40%と高い。うち、自社EC売上高は224億円。それを支えるのが約1900人の販売員によるSNSでの発信だ。総フォロワー数は2000万人を超える。
「人の熱意が何より大事。テクノロジーがそれをどう生かすかだ」と堀田氏。デジタル関連の部門の仕事はECで集めた情報を分析・整理することだと強調。それを商品企画部門や販売員に共有して「熱意」でアウトプットする形が理想だという。
人材採用はポテンシャルを重視する。「システム開発などコアな部分以外は、ファッションが好きでなければ務まらない」。採用後もそれぞれがやりたい業務を率先して任せて伸ばす方針だという。
将来的に自社EC売上高を500億円に拡大する目標だ。知名度の向上のため、「各自社ブランドと足並みを揃えた販促や情報発信が必要だ」と見ている。
ベイクルーズ舛田氏 使い勝手の良さとビジュアルを両立「自社ECではクリエイティブな部分と客の使い勝手の両立を重視している」と話すのは舛田氏。モデルの写真などブランドの世界を伝えるビジュアルを大きく見せつつ、検索性やレコメンド機能などの拡充を進めている。「この二つはトレードオフの関係でもある。バランスの取り方が大事」とも。EC売り上げの規模が大きくなるにつれて「これからはさらにデジタルの知識が深い人材が必要」と考えているが「ファッションビジネスへの知見を持った人材も並行して増やしていくべき」という意見は他2人と同様だ。
今後もビジュアル面と使い勝手の均整が取れたEC作りを継続する。また、ブランドによってEC専売商品の企画も増やす考えだ。
フォーカス賞
プレイ・プロダクト・スタジオ EC事業部マネージャー 福田省吾氏ユトリ プロデューサー 濱田栞氏
SNS運用で他企業の注目を集めるユトリと「メゾンスペシャル」(プレイ・プロダクト・スタジオ)が登壇した。SNSを起点にしたデジタルとリアル双方の送客、海外客獲得のための施策を聞いた。
ユトリはアパレルを中心に約40ブランドを運営し、特にZ世代に支持を集める。「SNS投稿は月に約200本の動画を発信し、空港コーデや海で映える服、推し活など、具体的な着用シーンが浮かぶように提案している」と濱田栞プロデューサー。平成ギャルや日本のアニメなどのコンテンツは海外客からの反響も大きいという。
国内の実店舗は約40。「SNSを見て、目がけて来店するケースが多い」。店舗ごとのSNSアカウントは、10~20代の社員が自発的に盛り上げている。特に東京・原宿店は来店客の4割が訪日外国人だ。店内に桜の装飾や90年代のストリート雑誌の切り抜きを飾るなど、日本らしさを体験できる空間を演出している。
今後は「ティックトックショップ」などの新しいチャネルも活用し、「ファンを巻き込んだ発信を強化したい」と話した。
メゾンスペシャルはエッジの利いたデザインが特徴だ。マス向けのブランドではないため、早くから海外進出に乗り出してきた。現在、韓国の小売店に卸売りを行っており、将来的に常設店出店も検討している。
ブランドの世界を伝えるビジュアル制作にも力を入れており、EC商品画像と別にSNS用のビジュアルも毎月撮影している。25年春夏はAI(人工知能)で静止画に動きを加える新たな表現に挑戦した。これを店頭ディスプレーにも活用するなど、一連の取り組みは若手社員が中心に行っており「撮影の効率化と表現の幅を広げることができた」と福田省吾EC事業部マネージャー。
ECで購入を検討する顧客には、社員がチャットで個別に対応している。「とがったブランドに見えやすい分、お客様とのコミュニケーションは、血の通ったやり取りを重視している」と話した。
サポート賞
リカスタマー辻野氏 再購入までがEC体験
「購入後体験」の重要性を説いた。購入後体験とは購入から商品が届くまで、届いてからの試着・交換・返品・利活用、アフターケアや回収までを示す。人口減による新規獲得の難しさ、デジタル広告の競争激化に伴うCPA(顧客獲得単価)の高騰で、いかに既存顧客のLTV(顧客生涯価値)を最大化するかが問われている。環境問題への関心や、AI(人工知能)台頭によるデータ保有の重要性が高まっていることも背景だ。
海外ではナイキやリーバイスなど事例が先行しているが、「国内は少なく今がチャンス」と強調する。たとえば配送追跡は、配送キャリアのサイトで確認するのが主流。「セッションが分断しており、商品をレコメンドする機会を逸している」。返品手続きも煩雑で、ECで購入をためらう一因になっていると指摘。同社はこれらを解消できるサービスを提供、「お試し」「下取り」など新しい購入体験にも対応する。
「認知から商品購入までの流れだけでなく、購入の前・後の双方から〝買う理由〟につながる道筋を作ることが大切。商品が購入された瞬間からどうアクションしていくか、再購入までがEC体験」と語った。
ビジュモ井上氏 クリエイティブを最適に
ビジュアルマーケティングプラットフォーム「ビジュモ」を紹介した。スタッフや消費者のSNSへの投稿を集約し、クリエイティブコンテンツを最適な形で消費者に届けるツールだ。
ビジュモでコンテンツを一元管理するため、セクション間で共有がしやすく、社内でのコンテンツの有効活用を促進する。ワンタグで簡単にサイトを実装できるため、経験の無いスタッフでも使える。コンテンツをクリエイティブ軸で分析することもできる。
ビジュモでは、SNSのようにサイトを表現する機能を充実している。インスタグラムのリール動画やストーリーズのようなフォーマットを揃える。サッカーショップ「カモ」では投稿のレコメンド機能を導入した後、動画の視聴数が4倍に増えた。
「ユナイテッドアローズ」ではビジュモを使い、商品詳細ページに、画像に加え動画も掲載している。同様の活用事例が増えてきているという。
新たにスワイプ型でランディングページや特集ページを作れるようにしたほか、AIの機械学習により、商品詳細ページを最適化して表示する新機能も紹介した。
注目サービスのプレゼンテーション
セールスフォース・ジャパン AIエージェント活用
同ソリューション統括本部B2Cソリューション本部Lead Account SE 山田和菜氏
アパレル業界の働き方改革をテーマに、セールスフォースが提供しているAI(人工知能)エージェント「エージェントフォース」を紹介した。アパレル業界では、人材不足やコスト削減などの課題解決に向けてAI活用が求められていると強調。AIエージェントの活用例として、消費者向け、店舗スタッフ、カスタマーサポート、マーケティング、MD・生産の各分野でどう役立つのかについて話した。デモンストレーションでは、店舗スタッフを例に、商品や顧客情報の確認、在庫確認、備品発注などの場面でのエージェントフォースの活用方法を解説した。
インサイトX 見たいものだけ無限に
「シェルフ型AIレコメンドが切り拓く、EC売り上げアップの新戦略」をテーマに、導入企業であるパルの堀田覚取締役専務執行役員プロモーション推進部部長との対談を通じ、自社サービスを紹介した。商品やスタイリング、特集記事などあらゆるコンテンツに切り口を与えてグループ化した無数のパーソナライズコンテンツ「シェルフ」を自動構築し、ユーザーに最適な情報を届けられる。現代で主流のSNSのように、見たいものだけを〝無限〟に見せるような購買体験を提供する。堀田氏は「ユーザーの行動に寄り添ってコンテンツを見せていくことが当たり前の時代。商品だけでなく、様々な切り口を編集できるという点が興味深く、導入した」と話した。
スタック 販売特化の基幹システム
25年2月に自社モール「ミックスドットトウキョウ」をショッピファイにリプレイスしたTSI。その際に利用したスタックのSaaS型小売り向け基幹システム「SQ」について、TSIEC事業統括部副統括部長兼オペレーション部長・岸武洋氏と解説した。岸氏によると、TSIの課題は基幹システムが重かった点。そのフロントエンドとバックエンドをSQで分離し、サービス変更にかかるコストと時間を削減した。また、約20サイトと連携し約700店の全注文と顧客情報を集約できるため、いろいろなサービスにつなぎやすいというメリットも。それでいて、シンプルなオペレーションが決め手になったと語った。
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