「ブラザーブリッジ」のJIN、自社工場で型にはまらない物作り 父のボクシングブーツをヒントに

2025.06.23 11:30
提供:繊研plus

「ブラザーブリッジ」など日本製の革靴を製造・販売するJIN(ジン)は今年3月、東京の入谷駅近くに直営の路面店を開いた。ディレクターでジン代表の鈴木英明さんは、浅草の紳士靴メーカーの出身。独自の視点を持って、現代的な革靴を作る自社工場も都内に立ち上げた。

(須田渉美)

革靴好きだけでなく

鈴木さんは、東京都立城東職業能力開発センター台東分校で製靴を学び、12年に21歳でクラフトバンクに入社。生産に携わった後、OEM(相手先ブランドによる生産)の営業を担った。さらに、グループ会社の自社ブランドのブラザーブリッジの企画を買って出て、空いた時間にブランドの運営に取り組むようになった。最初に作ったのは、20年代ごろのアスレチックシューズをベースにしたブーツ「ヘンリー」だ。伝統のグッドイヤーウエルト製法で「重厚過ぎないライトなブーツを作りたい」と試行錯誤した。父親がボクシングをやっていた時に履いていたブーツにヒントもあった。「ワークブーツでもない、ドレスシューズでもない、アスレチックなスタイルをやろう」と方向性が固まった。

アスレチックブーツの「ヘンリー」(手前)は重厚過ぎず、しなやかさを感じる木型や履き心地に
昔のボクシングブーツに着想を得たオックスフォードシューズ(右)などスマートなラインナップ

「革靴が好きな人だけをターゲットにしたくない」思いもあった。伝統製法に忠実に作ると、最初の足入れが固く、革靴に慣れていないユーザーは遠ざかってしまう。堅牢で柔らかな履き心地を目指そうと、兵庫県姫路産地のタンナーの協力を得て、タンニンなめしの牛革をオリジナルの配合でしなやかなに仕上げてもらい、中底にはスポーツ用途の芯材を入れて、屈曲性を高めた。

新作は16年ごろから販売を始めた。会社のOEMの営業も担いながら、扱ってもらいたいショップのバイヤーに直接、見てもらって少しずつ売り先を見つけた。17年からは土日などの休日を使って、副業的に小売りもするようになった。徐々に顧客が付いて、ブーツ以外のラインナップも増え、最終的には1カ月で数百万円規模の売り上げになった。さらに「内装にもこだわった常設の店を持ちたい」と思い描くようになり、自己資金で運営しようと24年4月に独立した。

国内でアッパー縫製

コロナ禍をきっかけに、浅草かいわいの靴の工場が閉鎖する中で、機械を譲り受けて自社工場を始めた。人脈の豊富さを生かし、母校の台東分校出身の若手に声を掛け、25~30代後半の5人の作り手を集めた。とりわけ鈴木さんが必要としたのは、アッパーの縫製だ。大手の靴メーカーでは、手間がかかるアッパーの縫製工程をアジアの生産拠点に出すことは多々ある。しかし「靴の顔を決める工程であり、納得のいく品のある雰囲気に仕上げたい。靴が好きで、物作りを分かっている人に作ってもらうことが大事なのでは」と考えた。そういった姿勢は小売価格6万~9万円台の付加価値を持って支持され、成長の大きな強みになった。

「大人の上質な普段靴」を目指して始めたブラザーブリッジだが、最近、アメリカンワークの新ブランド「シュアブーツ」も始めた。エンジニアブーツやチャッカーブーツといったカジュアルスタイルを、現代の消費者が履きやすいようにデザインをそぎ落とし、足首周りなどの快適性を高めたものだ。3月に開設した店の屋号は「THE ZINE FOOTWEAR CLUB」とした。「雑誌の『ZIN』のように、自主編集する意識を大切にしたい。型にはまらず、柔軟性を持って作りたい靴を作っていきたい」という。

最近、スタートしたアメリカンワークの「シュアブーツ」

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