

映画『金子差入店』主演・丸山隆平さんが見つけた。SUPER EIGHT、家族…人間関係に大事な「2つのこと」
映画『金子差入店』の主演・丸山隆平さんにインタビュー。役作りや撮影エピソードから、8年ぶりとなる主演映画への思いなどを伺いました。※サムネイル画像:(C)2025「金子差入店」製作委員会
映画『金子差入店』は、刑務所や拘置所に収容された人に、依頼主からの差し入れをその人に代わって渡す仕事“差入屋”に従事する主人公・金子真司の物語。
金子真司(丸山隆平)が営む“差入屋”にやってきた女性(根岸季衣)は、殺人を犯して収容された息子(北村匠海)への差し入れを依頼します。しかし、被害者は、金子の息子の幼なじみだったのです……。
SUPER EIGHTのメンバーとして活躍する丸山隆平さんにとって、8年ぶりの映画主演。出演の経緯、入念な役作り、撮影エピソードなどを丸山さんに伺いました。
『金子差入店』主演、丸山隆平さんにインタビュー
――8年ぶりの映画主演ですが、『金子差入店』出演の決め手を教えてください。
丸山隆平さん(以下、丸山):古川豪監督にお会いして、脚本を拝読し、とても心惹かれて「ぜひ、出演させてください」とお伝えしました。8年ぶりの映画主演ですが、あえて期間を置いていたわけではなく、たまたまです。今回、奇跡的にさまざまなタイミングが合致して実現しました。
――脚本のどのようなところに惹かれましたか?
丸山:まず“差入屋”という職業になじみがなかったので「こういう仕事があるんだ」という驚きがありました。
映画にはサスペンス要素もありますが、普遍的な家族の姿も描いています。古川監督の綿密な取材により、“差入屋”の仕事やそこで働く人々の生活がすごくリアルに胸に響いて、心が動かされました。
――久しぶりの映画撮影の現場はいかがでしたか?
丸山:古川監督が11年間温めてきた企画で、かつ、監督にとって初めて手掛ける長編映画ということもあり、撮影現場の空気が研ぎ澄まされていて、緊張感がありました。
しかし同時に、人の温かさに包まれた現場でしたね。俳優たちが演技に集中できるようにスタッフの皆さんが配慮してくださったので、撮影期間はとても充実していましたし、とてもいい現場でありがたかったです。
古川監督との会話で金子役を作っていった
――金子真司の役作りについて教えてください。
丸山:金子は古川監督自身が役に投影されていると感じたので、古川監督とたくさん会話をして、監督の人となりを知ることが重要だと思いました。金子は既婚者で子どもがいるので、家族への思い、父親としての一面などを監督自身から吸収しました。
“差入屋”は社会的に大切な役割を果たしているのですが、犯罪を犯して収容されている人物に依頼人の代わりに差し入れをするという特殊な職業なので、ストレスを抱えることも多い仕事だと思い、髪形、肌の質感、体の状態など、どのような見え方をしたら“差入屋”に見えるかということも意識して、自分の中に役を取り込みました。
SUPER EIGHTの丸山隆平でいるとき、金子は僕の中で眠っていますが、金子を演じているときは、丸山隆平は眠らせて役になりきるという……。金子と僕自身を眠らせたり起こしたりしながら役を作っていきました。

――古川監督自身が金子真司役に重なると感じたそうですが、監督と何度もお会いして監督自身のお話を聞いたのは、丸山さん流の役作りなのでしょうか?
丸山:役作りのために監督に何度も会ったり話したりしたのではなく、打ち合わせなどで顔を合わせたり、食事に行って楽しく会話をしたりする中で、監督のことを知る機会を得たという感じですね。食事の席での会話が、結果的に芝居の役に立ちました。
――丸山さんは、監督やスタッフと撮影以外でも食事などでコミュニケーションを取っていく方なのですね。
丸山:僕は舞台をやるときも演出家の方とはよく食事に行ったりするんです。やはり作品を作り上げる表現者の方のお話は面白いんですよ。その方の考えていることや作品の芯となる部分などを知っておきたいし、監督が出会ってきた人たちの話を聞くことで見えてくる世界もあるので。
会話は堅苦しい感じではなく「昔はちょっとやんちゃしていたんですよ」とか、そんな他愛もない昔話です。そのような話を聞いて、人となりを知ることが結果的に芝居につながっていくという感じですね。
――監督と多くの会話を交わしたことが撮影で生かされていくのですね。
丸山:やはり人となりをよく知ってから撮影に行くと、現場で感触をつかみやすくなるし、監督のおっしゃることに対してパッと理解ができると感じます。積み重ねた会話のニュアンスが監督と自分の共通言語として芝居のヒントになることもありました。
北村匠海さんの芝居はまるでマジック!

――共演の北村匠海さん、寺尾聰さんはミュージシャンとしての一面もあり、丸山さんと共通する部分でもありますよね。共演して通じるものはありましたか?
丸山:芝居をしているときは、その役と会話しているので、俳優自身の素の部分を感じることはないのですが、共演者の皆さん、それぞれに自分の武器を持っている感じがしました。
北村さんは芝居の構築の仕方が素晴らしく、底知れないパワーがある俳優だと思いました。面会室で北村さんと対峙(たいじ)するシーンなど、出来上がった映像を見たら、撮影のとき以上のインパクトがあり、印象が違うんです。
「どういう気持ちで役を作っていったんだろう」と。もうマジックを見せられているみたいでした。

寺尾さんは存在感があり、時代を乗り越え、戦い抜いてきた俳優の特別な存在感と器の大きさを感じました。金子は寺尾さん演じる伯父から“差入屋”を継ぐので、寺尾さんの言葉は金子にとって、とても大切なんです。一緒のシーンではいろいろと気付かされることが多かったですね。
人間関係は距離感と思いやりが大事
――完成した映画はいかがでしたか?
丸山:見応えがありましたね。ドキドキするシーンもあればグッと心に響くシーンもあるし、情報量が多い映画なので、映画館でどっぷり浸って向き合ってほしいと思える厚みのある作品でした。
最近、ニュースで悲しい事件を知ると、なんでこんなことが……と思いつつ、僕たちは何を大事にして生きていったらいいのだろうと考えるんです。しかし、きっと大事にしたいことの先に希望があるのではないかと。この映画は、そんな希望を描いた作品だと思いました。「日本映画を見た!」と深く実感できる作品だと思います。
――丸山さんにとって、この映画を通して大事なものは見つかりましたか?
丸山:家族、友達、グループのメンバー、全てに言えるのは「距離感」と「思いやり」です。相手を大事にするからこそ、踏み込み過ぎないという適度な距離感は大事だと思います。
僕は「ヤマアラシのジレンマ」という言葉が好きなんです。体の冷えたヤマアラシは、身を寄せて暖を取りたいけれど、近寄り過ぎると相手を傷つけてしまうというドイツの哲学者・ショーペンハウアーの言葉です。この言葉を知ったとき「ショーペンハウアー、よう言った!」と思いました(笑)。
家族だから何でも話さないといけないのかというと、違うじゃないですか。金子家の家族、依頼人の家族、それぞれ思いやりのある距離感が取れているのか……ということを改めて考えました。

――いろいろ考えたくなる映画ですよね。
丸山:スカッと分かりやすくて、見終わったあと「イエ~イ!」となる楽しい映画もいいと思いますが、この映画は真逆でとても余韻を感じました。
そして、すごくいい作品に参加させてもらったなあと。まさに「イエ~イ!」と言いたい気持ちです(笑)。
日本映画らしさがたくさんちりばめられた作品だと思いますし、できればこの映画を見た後、一緒に鑑賞した人とお茶しながら語り合っていただけたらうれしいですね。ネガティブな感情のストッパーになるかもしれない。もっと今を大事に生きようと思うかもしれない。皆さんの心に刺さったらうれしいです。
――最後に、この映画を楽しみにしているファンの皆さんへメッセージを。
丸山:僕のことを知ってくれている人は、これまでとは違うテイストの作品なので驚かれるのではないかと。この作品を見てくださった皆さんに感想を聞いて回りたいですね。どんな思いを抱いて映画館を後にするのか。皆さんの心にどんなふうに届くのか、気になります。
サスペンスタッチで描かれていてエンターテインメント性も高い作品なので、僕のファンの方には「気軽に見に来てね! 感想聞かせてね!」と伝えたいです。
丸山隆平さんのプロフィール
1983年生まれ、京都府出身。SUPER EIGHTのメンバー。2004年『浪花いろは節』でCDデビュー。歌手、ベーシスト、俳優として活動。2011年『ワイルド7』で映画初出演。2017年『泥棒役者』で映画初主演を果たした。SUPER EIGHTの新曲『ブチ★I GOT IT』(読み:ブチアガリ)が全世界で配信リリース中。
『金子差入店』2025年5月16日(金)より全国ロードショー
監督・脚本:古川豪
出演:丸山隆平、真木よう子、三浦綺羅、川口真奈、北村匠海、村川絵梨、甲本雅裕、根岸季衣、岸谷五朗、名取裕子、寺尾聰
主題歌:SUPER BEAVER『まなざし』(ソニー・ミュージックレーベルズ)
(C)2025「金子差入店」製作委員会
取材・文:斎藤香
執筆者:斎藤 香(映画ガイド)
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