花江夏樹&雨宮天が10年前の「東京喰種」のアフレコを振り返る 「リテイクも容赦なかった」「汗だくになって叫びまくった」
人を喰らう正体不明の存在、喰種(グール)が蔓延する東京を舞台に、喰種と人間の狭間で揺れ動く半喰種の主人公・金木研の戦いを描いた『東京喰種トーキョーグール』。2014年からTVアニメ全3期『東京喰種』『東京喰種√A』、2018年には『東京喰種:re』が放送され、今も色褪せない人気を誇っている人気作が、このたび“体験没入型”展示会「東京喰種EX.(イーエックス)」としてリアルワールドに誕生。作品の名シーンを疑似体験できる展示を一足先に体験した、主人公の金木研役の花江夏樹と、ヒロインの霧嶋董香を演じた雨宮天に、その感想や10年前の作品のアフレコのエピソードなどを聞いた。
ホラー演出にビビりまくりの雨宮&そのリアクションを見て冷静になる花江
――先ほどおふたりで展示会を回られたそうですが、いかがでしたか?
花江夏樹(以下、花江):順路がストーリーを順に追っていく構成になっているので、頭のなかに色々なシーンが蘇ってきて、懐かしい気持ちでいっぱいになりました。
雨宮天(以下、雨宮):私も懐かしかったです。セリフもけっこう細かくいろいろと展示されていて、それが目線の高さだけでなく、足元や頭上にもあったりして楽しかったです。
花江:セリフ量すごいよね。印象的なセリフが多い作品なので、「ああ、これも覚えてる!」って思いながら回っていました。あとは「ヤモリの拷問部屋」の展示とか、すごく作り込まれていましたね。自分的にもこのシーンはけっこうなトラウマなので、アフレコ時の辛い記憶がフラッシュバックしました(笑)。
雨宮:めっちゃ分かる!(笑) 董香が月山に対して言ったセリフで「ここにてめえのものなんかひとつもねぇんだよ!」というのがあるんですけど、それも大きくドーンと出ていて、「このセリフの収録大変だったなあ」って思ったり(笑)。
――通常の展示物だけでなく、体験型の仕掛けも多いですよね。
花江:そこはもう雨宮さんが120%の反応を見せてくれて…めっちゃ堪能してましたよね。
雨宮:堪能と言うか、ただただビビりまくってました(笑)。もともと怖いのが苦手でお化け屋敷とかもダメなタイプなので、いちいち悲鳴をあげちゃって。花江さんは平然としているからすごいなって思っていました。
花江:いや、僕も基本的には怖いの苦手なんですけど、隣で雨宮さんがあまりにもいいリアクションを見せるから、おかげで僕はちょっと冷静になれました(笑)。
雨宮:ごめんなさい、私のせいで楽しめなかった?
花江:いやいや、十分に楽しみましたよ。ただ僕以上に雨宮さんが楽しんでいるなって思って(笑)。
雨宮:ごめん。
花江:でもただ驚かせるんじゃなくて、ちゃんと作品の世界観やキャラクターありきだったのはすごいなと思いましたね。「金木 VS ヤモリ」の再現展示なんて、180度の大画面モニターでめっちゃ没入感がありましたし。
雨宮:あれはすごかったですよね。座席も振動して、“体験没入型”ってこういうことかって思いました。
花江:ノイズキャンセリング機能が効いたヘッドホンを付けて映像を観るので、完全に没入できるんですよね。ムカデが耳に入ってくるシーンもちゃんと左耳から聞こえてきて、すごく怖かったです。
雨宮:あれは怖かったー。でも刺激的な展示が多いからこそ、途中にある「あんていく」の展示スペースは心が休まりました。コーヒーの香りが漂っていて、ほっと一息つける場所になっていて。個人的にすごく助けられました。
――印象深い展示ゾーンと言えば、どこでしたか?
雨宮:私は月山の展示ゾーンですね。なんて言ったらいいか分かりませんが、月山って展示でもちゃんと月山なんだなって(笑)。
花江:分かる。ドアの向こうにいましたよね。クンカクンカしてました。
雨宮:存分にやってましたね。
花江:あのシーンは、月山役の宮野真守さんが実際にハンカチを口に当てながら収録していて、それがすごく面白くて、みんな笑いをこらえるのが必死だったんですよね。そんなことも思い出しました。
辛い収録の経験がその後の自分の糧に…「『地獄のお守り』って呼んでいる(雨宮)」
――お二人ともに、展示を回ってアフレコの辛い記憶が蘇ったとおっしゃいました。相当過酷な収録だったんですね。
花江:僕自身がデビューしてまだそんなに経っていないころで、かなり緊張していたというのもありますね。雨宮さんもだよね?
雨宮:そうそう私も!
花江:そうだよね。もちろん収録も過酷ではありました。金木君って一話目から喜怒哀楽が激しくて、シーンごとに変化するので、これはどうやって演じればいいんだろうってすごく悩みました。
――なかでもとくにキツかったシーンはどこですか?
花江:先ほども少し言いましたけど、展示会にもある「金木 VS ヤモリ」ですね。アフレコでは最初から最後まで叫びまくっていました。
雨宮:しかもリテイクも容赦なかったですよね。側から見ていても「どうなっちゃんだろう?」って心配になるくらいでしたから。
花江:僕も金木君みたいに、髪の毛がちょっと白くなったかもしれません(笑)。ヤモリ役の西凜太朗さんとふたりで汗ダクになって叫びまくったんですけど、終わったら西さんが「なんか、肉が食いたいね」って(笑)。
雨宮:たしかにあれだけ叫べばねえ。
――雨宮さんが印象に残っているシーンはどこですか?
雨宮:私は第一話の収録の際、「もっと声を低くしてください」って言われ続けて、それがいちばん辛かったですね。董香ちゃんほど低い声のキャラクターを演じるのは初めてで、当時の自分としては限界の低さに挑戦したんですけど、その限界の声でカッコよくキメ台詞を言わないといけないのが大変でした。さっきの「ここにてめえのものなんかひとつもねぇんだよ!」っていうセリフもそうですけど、家でどれだけ練習しても想い通りに行かなくて。今ではいい思い出ですけど、当時は辛かったですね(笑)。
花江:そうそう、現場は和やかでしたし、収録自体は楽しかったんですけど、やっぱり苦労した思い出のほうが強く残っちゃいますよね。
雨宮:あとは、個人的にここまでガッツリとバトルシーンを演じた経験がなかったので、それも印象深いです。例えばお腹に攻撃をくらった時の叫び声は「グハッ」がいいのか「カハッ」がいいのかとか、家でめっちゃ細かく研究していました。この時の経験は、それから先のお芝居にもすごく活きていると思います。
――お二人とも、かなり鍛えられたんですね。
花江:そうですね。金木君を演じて以降もいろいろと大変な現場はありましたけど、その度に喰種の収録のことを思い出して乗り切ることができたので、心の支えでしたね。
雨宮:私も同じです。私はそれを「地獄のお守り」って呼んでいるんですけど。
花江:そうなんだ。それは初めて聞いた。でもそれで言うと、最近は泣き叫ぶ役が増えて、ちょっと「地獄のお守り」が効かなくなってきているかも(笑)。
――長きにわたって愛されている『東京喰種トーキョーグール』ですが、魅力の根幹はどこにあると思いますか?
花江:いちばんは石田スイ先生が描く独特の世界観だと思います。
雨宮:たしかに、デザインも含めて唯一無二ですよね。
花江:ちょっと怖いし、非日常を描いたストーリーですけど、グールと人間の関係性って僕らの世界にも当てはまる題材なんですよね。だからこそ、みなさんが感情移入してくださっているのかなと思います。
雨宮:作り込まれた設定やグッと来る人間ドラマが素晴らしいなと思います。そのうえで、赫子のカッコ良さだったりバトルの迫力もすごいので、これは絶対にやめられないですよね。そこが長く愛されている理由なのかなと思います。
――では最後に、ファンに向けてメッセージをお願いします。
雨宮:“体験没入型”展示会と言うだけあって、いろいろな仕掛けがあるので、楽しみにしてもらいたいです。できればご来場いただく前に再度アニメや漫画を見返していただけると、よりいっそう展示が楽しめると思います。
雨宮:雨宮さんの言った通りでございます(笑)。アニメーションを作るのにどれだけの人間が関わっているのかが分かる展示会になっていると思うので、ぜひ遊びにきてください。石田スイ先生の描き下ろしイラストも展示されているので、それも必見ですよ!
――ありがとうございました!
なお、“体験没入型”展示会「東京喰種EX.(イーエックス)」は東京では寺田倉庫G1ビルで12月1日(日)まで開催中、12月14日(土)から29日(日)までは大阪のVS.(ヴイエス)で開催される。
迫力ある映像と床面の振動で“触覚”を疑似的に再現する“ハプティクス技術”を掛け合わせ、名シーン「金木 VS ヤモリ」の戦いを全身で体感できるインタラクティブ展示をはじめ、「クインクス施術」の3Dイメージや「ヤモリの拷問部屋」や喫茶店「あんていく」の再現展示など、さまざまな演出と仕掛けが施されており、作品世界に没入することができる。
◆取材・文/岡本大介
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