アニメ「チ。-地球の運動について―」第8話が放送

<チ。>真理の追究に必要なのは無謀な第一歩、思い出されるのは「不正解は無意味を意味しない」という言葉

2024.11.18 16:00
アニメ「チ。-地球の運動について―」第8話が放送

アニメ「チ。-地球の運動について―」(毎週土曜深夜11:45-0:10、NHK総合/Netflix・ABEMAで配信)の第8話「イカロスにならねば」が11月16日に放送された。本作は魚豊による同名漫画を原作としたアニメ作品。地動説の可能性を信じ、証明することに自らの信念と命を懸けた者たちの物語が描かれていく。今話では天文の難問を解いたヨレンタ(CV. 仁見紗綾)にバデーニ(CV.中村悠一)が接触。「地動説」の共同研究を持ち掛けるバデーニに対し、ヨレンタの心は大きく揺れ動いた。(以降、ネタバレが含まれます)

イカロスの逸話に例えた探究者に必要な一歩

フベルト、ラファウから始まり、宇宙の真理を追究するために危険を冒し、地動説の証明に命を懸ける探究者たち。第2章でラファウの意思を受け継いだのは卓越した頭脳を持つ修道士バデーニだが、彼らに共通しているのは神が作った宇宙を否定することではなく、神が作った宇宙だからこそ完璧な形、美しさを持っているはずだという、その考えである。

一方、宇宙論の大家ピャスト伯(CV.ふくまつ進紗)も神が作った宇宙だからこそ、一点の綻びもない完璧な天動説を完成させようと心血を注いでいた。両者向かう方向こそ違えど、真理を探究する研究者としての信念は同じもの。その上で、ピャスト伯は真理に辿り着くにはあと一歩の無謀さが足りないと感じていた。

その例えに出てきたイカロスとは、現実ではギリシャ神話に登場する青年の名前だ。ピャスト伯が語った通り、蝋で作った翼で太陽に近づきすぎたせいで翼が溶け、墜落死したと伝えられている。現代では無謀な挑戦の象徴として語られることが多いこの逸話だが、イカロスの無謀さは勇気として讃えられる一面にもなっている。

かくいうピャスト伯も名家から勘当され、一族から笑われるようとも真理の探究のために天文学の研究を選んだ人物だ。門下たちにも研究を飛躍させる無謀さを求めるが、その無謀さを持って宇宙の真理に挑もうと決意したのが、女性だからという理由で同僚により研究会から弾かれているヨレンタだった。

真理の探究には抗えない研究者ヨレンタ

前話、抗えない探究心からバデーニが掲示した天文の難問に解答を貼ったヨレンタ。間の悪いことにその現場をバデーニに目撃され、解答者は誰なのかと問い詰められていく。必死にシラを切るヨレンタへのバデーニの詰めっぷりが巧みすぎて、知的でありながらもちょっとした笑いも誘われるようなシーン。そうした会話の中、地動説の研究に恐れをなしたヨレンタだったが、真理を求めるというバデーニの言葉に心は揺れる。さらに決定打として背中を押したのは、ピャスト伯との会話だ。

バデーニが語った地球が動いているという地動説に続き、聖書は真理だが、「それを我々が正しく読めているとは限らない」というピャスト伯の考えは、ヨレンタが今まで思ったこともなかった視点だった。天文のことだけでなく、社会的制約を受ける女性の立場も、聖書の読み解き違いからくるものだとしたら…。

このときピャスト伯が手に持つロウソクが溶けるカットはイカロスの逸話に掛けたもので、ヨレンタが世界を変えるという無謀な挑戦に踏み出す決意を固めた瞬間を示唆する演出。前話、「ここが私が見られる最上の景色なんだ」と諦めで空を見上げたヨレンタの中で、世界が広がった瞬間だったに違いない。

終盤ではヨレンタ、バデーニ、オクジー(CV.小西克幸)が協力を求め、ピャスト伯と面会。ピャスト伯は、自分の人生を賭けた探究が間違いだったとする地動説の主張に怒りで手を震わせる。しかし、それこそが真理かもしれないというバデーニに、返す言葉を失ってしまう。そして、記憶に蘇るのはこの天文研究所のドアを叩いた若かりし日のことだった。

ただ1つの真理に向けて手を取り合ったヨレンタとバデーニ。そこにピャスト伯の手は加わるのだろうか。思い出されるのは、かつてフベルトがラファウに言った「不正解は無意味を意味しない」という言葉だ。

◆文=鈴木康道

関連リンク

関連記事

  1. 新垣結衣が語りに!“伝説の家政婦”タサン志麻さん夫婦に密着「たくさんの人の心にスッとしみこむはず…」<ふたりのディスタンス>
    新垣結衣が語りに!“伝説の家政婦”タサン志麻さん夫婦に密着「たくさんの人の心にスッとしみこむはず…」<ふたりのディスタンス>
    WEBザテレビジョン
  2. 東京03の超絶サクセスストーリー 全国ツアーだけで「1年食えるくらいはもらえる」
    東京03の超絶サクセスストーリー 全国ツアーだけで「1年食えるくらいはもらえる」
    WEBザテレビジョン
  3. <BLACKPINK>「あつまれ どうぶつの森」内に“BLACKPINK島”がオープン!MVのセットやステージを再現
    <BLACKPINK>「あつまれ どうぶつの森」内に“BLACKPINK島”がオープン!MVのセットやステージを再現
    WEBザテレビジョン
  4. 松井玲奈、大粒の涙…新型コロナ感染中の思い吐露「人生の中では一番苦しいぐらいの数日間」
    松井玲奈、大粒の涙…新型コロナ感染中の思い吐露「人生の中では一番苦しいぐらいの数日間」
    WEBザテレビジョン
  5. ジャニーズWEST中間淳太 “探偵”イメージの細身スーツで「小説現代」表紙に!推しミステリから自身の創作活動まで明かす
    ジャニーズWEST中間淳太 “探偵”イメージの細身スーツで「小説現代」表紙に!推しミステリから自身の創作活動まで明かす
    WEBザテレビジョン
  6. 瀬戸朝香、“なかなか良い感じ”7歳長女によるメイクSHOTに反響「優しくて自然な感じすごくいい」「娘さんお上手!」
    瀬戸朝香、“なかなか良い感じ”7歳長女によるメイクSHOTに反響「優しくて自然な感じすごくいい」「娘さんお上手!」
    WEBザテレビジョン

「その他」カテゴリーの最新記事

  1. ドジャース・ベッツが復帰即安打→一塁から激走で生還 右足薬指骨折の影響を感じさせず チームは初回に4得点でひっくり返す
    ドジャース・ベッツが復帰即安打→一塁から激走で生還 右足薬指骨折の影響を感じさせず チームは初回に4得点でひっくり返す
    デイリースポーツ
  2. 【悲報】「ガキ使」浜田復帰→冒頭、田中直樹にドツキ2発「バコッ!」制裁 浜田休演中の態度がw 疑惑の密告記事が朗読される
    【悲報】「ガキ使」浜田復帰→冒頭、田中直樹にドツキ2発「バコッ!」制裁 浜田休演中の態度がw 疑惑の密告記事が朗読される
    デイリースポーツ芸能
  3. 意外?!大スターが「秋山ロケの地図」大ファン 「なんで終わっちゃったの?」偶然聞いた佐久間宣行氏が必死PR
    意外?!大スターが「秋山ロケの地図」大ファン 「なんで終わっちゃったの?」偶然聞いた佐久間宣行氏が必死PR
    デイリースポーツ芸能
  4. 「かける」の意味は?「先生にかけられた」ってどういうこと!?【方言クイズ】
    「かける」の意味は?「先生にかけられた」ってどういうこと!?【方言クイズ】
    Ray
  5. 野呂佳代が最高にハマり役だった作品ランキング!3位「ナイト・ドクター」、2位「ザ・トラベルナース」、1位は…
    野呂佳代が最高にハマり役だった作品ランキング!3位「ナイト・ドクター」、2位「ザ・トラベルナース」、1位は…
    gooランキング
  6. ドジャース・大谷翔平 初回は見逃し三振で天を仰ぐ
    ドジャース・大谷翔平 初回は見逃し三振で天を仰ぐ
    デイリースポーツ
  7. 切迫性尿失禁が認められた元テレ東アナ 子どもと縄跳びでも尿漏れ 熊元プロレスは「座った瞬間」
    切迫性尿失禁が認められた元テレ東アナ 子どもと縄跳びでも尿漏れ 熊元プロレスは「座った瞬間」
    デイリースポーツ芸能
  8. ラストオーダー1分前に迷惑客が来店…店長がとった行動“意外すぎる”行動とは?
    ラストオーダー1分前に迷惑客が来店…店長がとった行動“意外すぎる”行動とは?
    Ray
  9. <ウィッチウォッチ>「ギャグアニメだと思って油断してた」亡き母が娘に綴った手紙と深い家族愛に視聴者涙
    <ウィッチウォッチ>「ギャグアニメだと思って油断してた」亡き母が娘に綴った手紙と深い家族愛に視聴者涙
    WEBザテレビジョン

あなたにおすすめの記事