《接客のチカラ》フェスタリアホールディングス 〝断られ上手〟で引き出すニーズ
ジュエリー販売員が接客を競うロールプレイング大会、JC接客コンテスト(日本ジュエリー協会主催)で、フェスタリアホールディングス傘下のサダマツは4連覇を果たした。毎回異なる挑戦者を出しての連覇に層の厚さを感じさせる。前回の優勝者、岩瀬未来さんは9月の三井不動産商業マネジメントによる接客ロールプレイングコンテスト全国大会でも優勝し、注目された。
(中村維)
同社の接客教育は一風変わっている。社内ロープレ大会で驚くのが、その持ち時間の長さだ。挑戦者は基本接客1回45分、ブライダル接客1回20分の計65分を演じる。時間内に盛り込むべきチェックポイントが複数あるためだ。店頭でも売り上げだけでなく、何人に声をかけ、試着をすすめ、コーディネート提案し、手紙を出し、反応があったかといった過程を重視。各項目の成果を日々シートに記録する。記録を数値化することで自らの弱み、強みを把握できる。
接客を工程管理
これらの教育体系作りの源流は、祖業である眼鏡店で接客していた貞松隆弥社長の母、故貞松栄子さんにある。「7人いる店で、売り上げの半分を母が担っていた」(貞松社長)。不思議に思って観察すると、朝一番にシャッターを開け、通行人に「眼鏡のお掃除いかがですか」と、店頭の眼鏡洗浄機を指して声掛けしていた。洗う人がいると、「洗浄中に視力検査でも」と促す。7割近くは検査室に入り、このうち度数変化があれば多くが購買へとつながった。「目的客より、通行客の方が圧倒的に多い。何人に声をかけ、どうなったかをデータ化し、ジュエリーのMDと組み合わせ、工程化した」。工程化により、全員が一定の接客力を身につけられる。
「断られ上手になりなさい」というのも、栄子さんのモットーだった。その場で数字にならなくても、需要を聞き出せれば、後の記念日での購買やリフォームにつながる。ただ、「教えられるのは基礎のみ。あとは個々人が信頼を得られるか否か」と貞松社長。冒頭の岩瀬さんは、その力がひと際高いと評価する。
心に寄り添って
岩瀬さんは、新卒で12年に入社し、現在は「フェスタリア・ビジュソフィア」で統括店長(三井アウトレットパーク札幌北広島店・大丸札幌店)を務める。接客の重点は、目的が不明な立ち寄り客でも「どんなお考えで、どうなりたいのか。表に出ていない心の中にあるものにどれだけ寄り添えるか」と話す。「会社もジュエリーも接客も好き。将来的には教育の業務にも携われれば」とし、ニーズを引き出す同社の接客の力をつないでいく。
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