《池西美知子さんに聞く25~26年秋冬テキスタイルキーワード㊤》今必要なのは創造性
クリエイティブマインドが覚醒する時――国際見本市のプルミエール・ヴィジョン(PV)トレンド協議会で日本代表委員を務める池西美知子さんは、そう語る。この数年、過剰生産や大量消費を見直す動きが日本でも活発になり、サステイナビリティーへの意識が定着した半面、「創造性を無視しすぎてきた」と危機感を訴える。環境対応が必須となった今、テキスタイルトレンドはどこに向かうのか。25~26年秋冬のキーワードを聞いた。
環境配慮と共生
――来秋冬の重点は。
「リアウェイクニング」(再覚醒)がシーズンを表す言葉です。ここ数年は作り手も消費者もサステイナブルへの意識が高まりました。「環境配慮型だからこの素材はできない」ということが無いくらいまで、技術的にも相当レベルが上がっています。環境への意識は不可欠ですので、どんどん深めなければいけませんが、それを誇張する必要がないほど浸透しました。
今はむしろ何が心配かというとクリエイティブマインドで、エモーションに訴えかけるものをデザイナーも消費者もとても欲しているのではないでしょうか。コロナのパンデミック(世界的流行)で、着飾る喜びや創作活動が抑制され、がまんしてきた人たちの心が解放された今、明るさや個性、美しさを切望するのは自然だなと感じます。
今まではサステイナブルとファッションを分けて考えることが多かったですが、これからキーになるのは共生、共鳴。ダブルバリューという概念が当たり前になってきています。サステイナブルとクリエイティビティー、人間の心が豊かになるようなファッションの魅力や新しさを環境配慮と両立させることが大事です。
毒をひとさじ
――トレンドの傾向は。
来秋冬は三つの大きな方向性に注目しています。「ミスティック&オプティミスティック」(神秘的で楽観的)、「センシュアル&ナチュラル」(官能的だけれど自然体)、「ミニマル&タクタイル」(ミニマルで触覚的)です。
ミスティック&オプティミスティックはダークでおどろおどろしい感じではなく、くすっと笑えるような楽しい雰囲気があるイメージ。サステイナブルを徹底したクリーンな物作りをやってきた中で毒々しさがほしい、そんな気分です。
毒を何で表現できるかと考えた時に浮かんだのが妖怪でした。平安時代から現代まで時代ごとに絵描きが様々な妖怪を描いていますが、どこか人間らしく、愛嬌(あいきょう)もあり共感を持てるんです。極端に言えば、妖怪のプリント柄があっても面白いかもしれません。
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