《それでも、NYに行く理由①》小林佳納さん 挑戦し続ける日本人の姿が原動力
円安で、「海外旅行は高嶺の花」という声さえ聞こえてくる昨今。ニューヨーク(NY)は家賃も外食代もとりわけ高いが、それでも留学やキャリアアップのために、NYに来て頑張っている人たちがいる。あえて厳しい状況にチャレンジする若い人たちに話を聞くうちに「楽な状況に甘んじない」「早いうちに英会話教室や留学で英語を身につけた」「自分を追い込むことでよりやる気をもてる」といった共通項が見えてきた。
(ニューヨーク=杉本佳子通信員)
変わらない環境に違和感
小林佳納さんは23年9月にファッション工科大学(FIT)に入学し、ファッションビジネスを専攻している。来年中に卒業予定で、卒業後はファッション業界でマーケティング職に就くことを希望している。いずれ日本とアメリカの架け橋になる仕事をし、社会に貢献したいと考えている。
物心ついた時からファッションが好きで、高校生の時からパリ・コレクションをiPadで見ていた。初めての留学は、中学3年生の時に短期プログラムで行ったハワイ。高校生の時も、春休みと夏休みにNYとロサンゼルスに3週間ずつ語学留学した。ニューヨークに留学した時、FITの卒業生で「美輝エルメ」の名前でファッション系の発信をしている森田美輝さんのインスタグラムを通じ、FITを知った。
小中高一貫の女子校に通い、99%の生徒がエスカレーター式に大学に行く中、ずっと同じ環境にいることに違和感を感じていた。高校卒業後はボストンのコミュニティーカレッジに通い、その後カリフォルニア州サンタバーバラ校に編入して経済学の学士号を取得。両親は同大学への入学を喜び、普通の大学を出てほしいという希望があったため卒業したが、在学中にファッションブランドでのインターンの機会がほとんどなかった。そこで卒業後、FITで改めてファッションの勉強をする道を選んだ。
多様な文化、無限の機会
FITに入学してからの1年間で日系企業でのインターンなどをしたり、ファッションウィークを見に行ったり、さまざまな体験ができている。「カリフォルニアでは考えられなかったほどの刺激的な環境、多様な文化、無限の機会が存在します。周囲には、同じように戦う日本人が多く、彼らから受けるエネルギーは計り知れません。NYは生き残るために全力で戦わなければならない世界であり、ここで挑戦を続ける日本人たちの姿は本当に素晴らしいと感じ、私の原動力になっています。ファッション業界で成功するには、まずNYで戦うことが不可欠で、この経験を通じて自分自身をより深く理解し、キャリアを一層発展させていけると思います」と語る。
FITの授業では欧米の著名なブランドで働いた経験を持つ教授が多く、その体験を授業のトピックと絡めて話してくれるので、よりリアルな話を聞ける。企業からゲストスピーカーが来たり、SAPなどの企業を訪問したりする機会もある。
小林さんはできる限り節約を心がけていて、外食を控え、揚げ出し豆腐やみそ汁などを作り置きしているそうだ。アメリカでは医療費も高いため、健康管理にも気を遣う。体を壊さないためにしていることは「よく寝てよく食べる」。自分の機嫌は自分でとると考え、散らかっていると気分が落ちる、心の乱れは部屋の乱れと思っていて、日頃から部屋をきれいに片付けるようにしているそうだ。
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