40周年を迎えたロンドン・ファッションウィーク 若い才能を世界に送り続ける

2024.09.17 14:00
提供:繊研plus

ロンドン・ファッションウィーク(LFW)は今年40周年を迎え、回顧展やパーティーなどの関連イベントが開催されている。「バーバリー」「ヴィヴィアン・ウエストウッド」をはじめとする有力ブランドの参加もあるが、LFWの特徴は若い才能の孵化(ふか)装置であることは一貫して変わらない。音楽やアート、あるいは80年代のパンクや90年代のクールブリタニア、今世紀に入ってからの多様性や環境への配慮など様々なカルチャーや社会現象と密接に関わり合いながら、ファッションカレッジを卒業して自身のブランドを設立したばかりの若手の才能を世界にアピールしてきた。

(ロンドン=若月美奈通信員、写真=Catwalking.com)

初回の84年3月は「ジャスパー・コンラン」ら有力ブランドとともに、「ボディマップ」や合同ショー「アマルガメイテッド・タレント」が若手パワーを見せつけた。この年にセントマーチンを卒業したジョン・ガリアーノは1年後にショーデビューを飾った。

しかし、若い才能を求めて海外からバイヤーやジャーナリストが駆けつけたロンドンブームは長続きしなかった。80年代末の深刻な景気後退とともに参加ブランドは激減し、「キャサリン・ハムネット」や「ジョン・ガリアーノ」はパリへと発表の場を移した。

そのように低迷を余儀なくされた93年3月、新人支援プロジェクト「ニュージェネレーション・デザイナーズ」(のちにニュージェン)が発足し、「アレキサンダー・マックイーン」や「クレメンツ・リベイロ」ら90年代をリードする若手が相次ぎ登場。ダミアン・ハースト率いるアート界やブリットポップの音楽業界とともに、90年代のクールブリタニアムーブメントを盛り上げた。00年代に入ると「JWアンダーソン」「アーデム」「ロクサンダ」など現在のリーダーたちがニュージェンやその後発足した様々な支援システムを経て成長を遂げる。

支援システムに頼らずに時代の寵児(ちょうじ)となった「フセイン・チャラヤン」の存在や、公式スケジュールに組み込まれたセントマーチンMA(修士課程)ショーも重要な歴史の1ページだ。92年のアレキサンダー・マックイーン、97年のアンドリュー・グローブス、06年のクリストファー・ケイン、16年のリチャード・クインなど、多くのデザイナーが卒業コレクションでLFWのランウェーにデビューしている。

「フセイン・チャラヤン」00~01年秋冬コレクション

LFWと日本の関係について現在はあまり語られないが、40年間の歴史、とりわけ前半は日本なくして若手の成功はあり得なかったと言っても過言ではない。発足から92年までLFWはミラノとパリのファッションウィークの間に開催されていたこともあり、80年代には日本人バイヤーやジャーナリストが数多く駆けつけた。90年代には日本でセレクトショップブームが巻き起こり、バイヤーは新しいブランドを求めてロンドンの若手を買い付け、日本国内の総代理店契約も多く結ばれた。当時の新進ブランドの大半が、ビジネスの50%以上が日本市場で、80%以上も少なくなかった。

日本人デザイナーも活躍した。現在はインフレと為替レートの変化により、ロンドンのファッションカレッジの学費は日本国内の5倍という状況で、留学で来英してその後ロンドンを拠点に活躍する日本人デザイナーはいなくなってしまった。しかし「イーリー・キシモト」の岸本若子、「ブラーク」の岡田幸子、「ミキ・フカイ」の深井みきなどセントマーチン卒の日本人がLFWで活躍していたこと、「ミチココシノ」は30年以上にわたりLFWで新作を発表し、80年代中頃のメンバーには、故ダイアナ妃も顧客だった「ユキ」(鳥丸軍雪)がいたことを記しておきたい。

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