アフターコロナのNYリテール事情① 空前の抹茶ブームのわけ
世界で最も魅力的な国として注目を集める日本。円安の影響もあって、旅行の目的地として今誰もが行ってみたい国として、ここニューヨーク(NY)でも人気を集めています。
特に、24時間簡単においしいものが手に入るコンビニやユニークなものが所狭しと並ぶディスカウントストア、ミシュランのお墨付きレストランから個性的な居酒屋が並ぶゴールデン街や恵比寿横丁などの食文化、カラフルで独特な原宿のカワイイカルチャーなどのファッション文化のある東京は、どこか近未来的な未知の街として人々を魅了してきました。しかし、ここ数年でアメリカ人が日本に求めるものが急速に変化しています。
コロナ下でより健康志向
これまで築地や回転ずしで手頃なすしを食すのにとどまっていた人が多かったのに対し、例えば、釜でたいたご飯に削りたての極上かつお節をかけて食べる朝ご飯に長蛇の列ができています。喫茶店で丁寧にいれたハンドドリップコーヒーよりも、名茶を扱う茶房で茶について学びながらティーペアリングを経験したり、極上のコーヒー豆を使った特別なコーヒーに迷わず高い金額を支払うのです。
新型コロナウイルスにより多くの人の命がおびやかされたNYでは、より一層健康志向が高まっています。そんな中で今、空前の抹茶ブームが訪れています。
抹茶は、7年くらい前からSNSを通して健康感度の高いセレブリティーが後押しし始めたことでスーパーフードとして注目が集まりつつありましたが、基本的に感度の高い人が自宅で楽しむ範疇(はんちゅう)でした。しかし、15年頃から甘みを加えない純粋な抹茶とミルクで作られたよりヘルシーな抹茶ラテが飲める抹茶専門カフェがNYに複数誕生したことがきっかけで、急速に気軽に抹茶を飲む人が増加しました。
ファッションとの相性
また、健康的な意味合いだけでなく、うぐいす色をした抹茶ラテはファッションブランドなどとも配色的に相性が良く、ラグジュアリーブランドのイベントなどでも多用されるようになりました。最近NYでは、コーヒーをしのぐ勢いで若者の間で広まり、街行く若い女性が持つ抹茶ラテを見ない日はありません。
こうしたより健康的な食文化を求めるアメリカの若い世代は、コーヒーにとどまらず、サンドイッチの代わりにおにぎり、ラーメンの代わりにそばやうどん、チキンスープの代わりにだしを選ぶなど、日本で体験した食カルチャーをきっかけに口コミでどんどん広がり、食生活に大きな変化を加えることに躊躇(ちゅうちょ)がありません。アメリカ人が求める食の変化について、これからもますます目が離せません。
(リテールリサーチャー 江原理恵)
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