《プラグマガジン編集長のLOCAL TRIBE》岡山で“糸の宝石”を磨く「overlace」
レースは、特にヨーロッパの産業や文化の歴史、服飾史に密接な関わりを持っています。昔の王侯貴族の肖像画に描かれている襟元の豪奢(ごうしゃ)なレースは、富と権力の象徴でもありました。一言でレースと言っても、作り方の技法や模様の表現など、多様な種類があり、その奥深い魅力からアンティークレースを収集する愛好家も少なくありません。今回は、現代人にも愛され続け、「糸の宝石」とも称されるレースをキーマテリアルに、若者へ向けてコレクションを発表しているブランド「overlace」(オーバーレース)を紹介します。
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新しい表現求める
ブランドを運営するのは、74年に創業した株式会社さえら(岡山市)。レディース下着の企画・製造・販売をはじめ、全国に直営店を展開。現在は洋服・ナイトウェア・インテリア商品を主に手がけ、50代から60代の富裕層が顧客の中心となっています。
同社の商品の多くには高級なインポートのレースが使われており、長年扱ってきたレースに対する知見、自社が抱える職人の卓越した縫製技術は他に類を見ません。こうしたバックボーンを生かしながら、企業としての若返りと若手人材の活性を図って若者向けに立ち上げられたのがオーバーレースです。
ブランド名は、レースの概念を超える(over)と、レースを重ねる(over)という思いから考案されました。一般的には、あくまで装飾のパーツと見なされがちなレースを主役にデザインするという、まれなスタンスは、同ブランドならでは。18年春夏から毎シーズン発表するコレクションは、それぞれのテーマに沿ったルックの世界と共に、従来のイメージとは異なるレースの表情を感じさせます。新しいレースの表現を求めることで、技術を更に向上させることにもつながりました。巧緻(こうち)を極めたコレクションアイテムは、幅広い年齢層から支持を集めています。
25年春夏コレクションには、岡山レース(岡山県赤磐市)と開発した同ブランド初となるオリジナル企画のレースを使ったアイテムもリリース予定。岡山発のレースに習熟した老舗アパレル企業の新ブランドは、着実にその歩みを進めています。
ランウェーに意欲
デザイナーを務めるのは、三沢裕子氏。服飾科のある岡山の県立高校を卒業後、地元のファッション専門学校に進学。学生時代に購入したさえらのハンカチがレースに興味を持つきっかけとなり、同社へ入社しました。オーバーレース立ち上げに伴い、デザイナーに抜擢(ばってき)。ブランドとして6年目を迎えた今、これからの目標を聞きました。
「これまでに手がけた14シーズンを通して、ブランドとしての素地が出来上がりつつあると感じています。今後は、国内外のファッションウィークでランウェーショー形式の表現にも挑戦していきたい。ブランドの認知を広げることが、当社のヘリテージであるレースの魅力を知って頂くことにもつながると考えています」(三沢デザイナー)。
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