シブヤ109ラボ所長のZ世代のほめ方 距離感を自覚し使い分け
少子高齢化が進み、人材確保が難しくなっている今、若手社員の成長支援やコミュニケーションは、職種・業界・役職を問わない共通の課題ともいえるでしょう。私たちも様々なテーマで若者の理解を深めるサポートを行っていますが、昨年度に大変多くご相談いただいたテーマは、「若手社員との向き合い方について」でした。今回は、SHIBUYA109lab.と金沢大学金間研究室で「若者のほめ方」に焦点を置いて実施した共同研究について、ご紹介します。
〝ほめ〟に重み
当研究において最も重要なポイントは、「若者は拒否回避欲求が高い」こと、そして「若者が受け取る〝ほめ〟には重みがある」ということです。
「拒否回避欲求」とは、他者から「嫌われたくない」や「○○だと思われたくない」といった否定的な評価を回避しようとする欲求です。世代を問わず誰もが持っていますが、今の若者は賞賛獲得欲求(褒められたい)や自己開示欲求(自分のことを伝えたい)よりもこの欲求が強く、否定されそうな行動は最初からしないという選択を取る傾向にあります。
もう一つの「ほめの重み」については〝重み=プレッシャー〟とも言い換えられます。若者を褒めると、「そんなことないです」と謙遜したり、「同期の○○さんが手伝ってくれたので…」と自分だけで受け止めず、誰かに「ほめ」を分散させる行動をする光景がよく見られます。
「ほめ」にプレッシャーを感じやすいことから、受け取る「ほめ」の重みを意図的に分散させているのです。これは彼らが自分に自信がなく、自己肯定感が低いことが背景にあります。
個に向き合う
また、「ほめ」に含まれる、今後の活躍に対する「期待」という重みを一人で受け取ることは、「今後期待に応えられず失敗してしまったらどうしよう」という拒否回避欲求を刺激されてしまうため、彼らにとってはなるべく避けたいシチュエーションになってしまうこともあるのです。
このように、本来ポジティブなものであるはずの「ほめ」も、シチュエーションや方法によっては受け手である若者には異なる意図で受け止められてしまう可能性もあり、せっかくのフィードバックがうまく機能しなくなってしまう恐れがあります。
今後はこのような彼らの性質を加味しつつ、自身と若手社員の仕事上・精神的な距離感を自覚し、「ほめ」の使い分けをしていくことが重要になります。
一方で、「ほめ」はコミュニケーションの一つであり、多様な価値観が共存する現代社会では「個に向き合うこと」が前提となります。令和の職場コミュニケーションでは、「ほめ」に対する価値観と若手社員に向き合う姿勢に更なるアップデートが必要だと感じています。
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