<響け! ユーフォニアム3>9年間の集大成 すべてを包み込むフィナーレに、SNSでは拍手喝采の嵐
吹奏楽に青春を捧げ、全国大会での金賞を目指す高校生たちの姿を描いた「響け!ユーフォニアム」(毎週日曜昼5:00-5:25ほか、NHK Eテレ/NHKプラス・Lemino・ABEMA・ディズニープラス・FOD・Huluほかで配信)、シリーズの「最終楽章」となるTVシリーズ第3期。新部長に就任した黄前久美子(CV:黒沢ともよ)は3年生に進級し、部員たちとともに高校最後の大会へと臨んでいく。最終回は、全国大会へと挑む吹奏楽部みんなの姿を描いた「つながるメロディ」。(以下、ネタバレを含みます)
「響け!ユーフォニアム」を一緒に演奏する久美子、真由、奏
大会三日前、いつもの練習場所でひとり「響け!ユーフォニアム」を吹く久美子の前に、黒江真由(CV:戸松遥)がやってくる。「その曲、やっぱり素敵だね」と言う真由に、久美子は「卒業した先輩が教えてくれた曲なんだ」と答え、さらに「いっしょに吹く?」と真由を誘う。さらにそれを聞いていた久石奏(CV:雨宮天)も加わると、久美子は「これからはみんなに吹いてほしい」と、後輩たちに楽曲を託すのだった。大会二日前、早朝の大吉山で“特別なこと”として「愛を見つけた場所」を吹く久美子と高坂麗奈(CV:安済知佳)。麗奈はいつか父親に負けない奏者になったら、その時は滝昇(CV:櫻井孝宏)に告白すると宣言するのだった。
前回、再オーディションの直前にお互いの本音をぶつけあった久美子と真由。ふたりのあいだにあったわだかまりはとけたようで、とくに真由のスッキリとした表情が印象的。久美子のほうも、これまで頑なだった気持ちがひらき、本心で会話しているように見え、真由に対して懐疑心を露わにしていた奏でさえ、この時は飾らない表情を向けているように感じる。シリーズを通じて描かれてきた黒江真由にまつわるあれやこれやは、ここにきて解決したと言えるのだろう。また久美子との約束と信念に従い真由の演奏を選んだ麗奈もまた、大吉山での久美子との涙を交えた語り合いを経て、ふたりの関係は変わらず良好のままだ。
久美子たちにとって高校最後の演奏、いざ全国大会へ!
全国大会当日。演奏に向けて準備を進めつつ、部員同士はコミニュケーションを取りながらそれぞれを応援し合う。久美子もまた、麗奈にハグをしながら「大丈夫、麗奈は誰にも負けないよ」と声をかけるのだった。リハーサル室に集まった全部員の前で、最後のスピーチをする久美子と麗奈。こうして士気が最高潮となった北宇治高校吹奏楽部は、いよいよ本番へと臨む。久美子たちにとって高校最後のコンクールが始まるのだった。
久美子と麗奈のスピーチシーンでは、91名の吹奏楽部全員のフルネームと担当楽器、表情が次々と画面に映し出された。これまでの登場の程度に関わらず、たしかにこの世界に存在し、久美子たちと同じ時間を過ごしていたのだということを改めて実感させられる。この世界には無限のドラマが眠っているのだと思わせてくれる演出は、京都アニメーションというスタジオがもつスペシャリティーであり、多くの京アニ作品に共通するイズムでもあり、本作もそれが明瞭に感じ取れる。
3年間の思い出のすべてが詰まった圧巻の演奏シーン
課題曲「スケルツァンド」の演奏を終え、いよいよ自由曲「一年の詩〜吹奏楽のための」が始まる。春夏秋冬の4パートで構成されるこの曲は春からスタートし、入学式や新歓、サンフェス、あがた祭り、合宿などが次々とフラッシュバック。その後はトランペットとユーフォニアムのソリが印象的な秋パートへと移っていく。麗奈と真由が奏でる抜群のソリに合わせて、オーディションを巡る騒動やさまざまなトラブルが追憶されると、やがて季節は冬へ。卒業していった先輩たちとの別れにしんみりしたあと、季節は再び春へと巡って、次代を担う1年生と2年生を映しフィナーレへ。演奏直後、「出し切った」と言わんばかりに満足気な表情を浮かべる部員たちだった。
自由曲の約6分間に及ぶ演奏シーンは、久美子たちの3年間の思い出が次々とフラッシュバックする仕掛けで、最終楽章だからこそできる演出だ。久美子たちにとっては高校3年間の思い出だが、視聴者にとっては9年間にも及ぶ軌跡であり、それらが一気に脳裏へと蘇ってくる感覚は、ほかの作品ではなかなか味わえないカタルシスを体験させてくれる。とくに秋パートでソリを吹く真由と、それを隣で聴いている久美子の構図はまさに第一期十三回「さよならコンクール」での麗奈と中世古香織(CV:茅原実里)を見ているようで、こちらも胸が締め付けられる思いだ。オーディション時は部長として前を向いた久美子ではあるが、この瞬間だけはやはり心の奥底に様々な思いをにじませた複雑な表情をしており、これがたまらなくリアルで素晴らしい。ともかくも、音楽、アニメーション、ドラマのすべてが詰まった珠玉の6分間で、SNSでも「最高の舞台で最高の演奏!!」「涙で画面が見えません」など、感動の声があがっていた。
最高のフィナーレに、SNSでも感動と感謝の声が溢れる
全国大会という大舞台で、すべてを出し切った北宇治高校吹奏楽部。結果発表を前に、部長としてステージに立っている久美子は、結果がどうであれ「もう何も悔いはない」と心の中でつぶやく。そして結果は見事にゴールド金賞 を手にすることとなった。部員みんなが歓喜に沸き立つなか、麗奈もまた嬉し涙を流す。中学生時代、ダメ金を取って何も感じていなかった久美子の隣で、「悔しくって、死にそう」と泣き腫らす麗奈を意識したことから幕が開けたこの物語は、それから3年後、今度は「嬉しくて、死にそう」と泣く麗奈で幕を降ろした。
改めて、なんという作品だったのだろうか。「青春アニメの最高峰」や「吹奏楽アニメの金字塔」といった表現では追いつかないことだけは分かる。先輩たちから久美子たちへ受け継がれ、そしてまた後輩たちへと繋がっていく壮大な物語は、まさに「つながるメロディ」というタイトルに見事に集約されている。最高のエンディングを迎えた今回のエピソードには、SNSでも「最高の最終回でした」「ユーフォに出会えてよかった。 心からありがとう」など、惜しみない賞賛の声が数多く寄せられていた。これからも折に触れて何度でも噛み締めたい、そんな作品になったように思う。
■文/岡本大介
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